第6話 日常

                   日常

日常とは輝かしいものである。

それが存在していて当たり前。朝に目覚めて、食事をして、学校や職場に行ってやることをやって、時々友人や恋人と会ったり、時間があれば趣味に時間を費やしたり、家族と共に家で休んだり・・・・・・

日常とは幸福である。

あって当然。なくてはならないもの。

日常とは平穏である。

刺激的じゃないかもしれないけど、心も体も安定させるためには必要不可欠である。

ただでさえ追われることが多い人生なのだ。もっと人間は自分自身を労わってあげるべきであると思う。

そして、日常とはいつ崩れ去るものかわからないものでもある。

だけど、その日が訪れることに怯えてはいけない。

折角生まれてきたのだ、日常を謳歌した方が人生を楽しめるに違いない。


――2025年  8月

時が流れる速度というものは、歳を重ねるほどに速くなるという。

なんて現象だったかなんて思いながら、俺は本部の旧気質の椅子に座りながら天井を仰いでいる。

今年で二十歳になり成人した俺だけれど、まさかこの年になってあんなSFチックな世界に巻き込まれることになるとは思いもしなかったなあ。

俺が八咫烏に加入してから一か月が過ぎようとしていたが、今のところ何も起こることなく、平穏な日々が続いていた。


ネットのニュースを見ても俺が倒したようなUFOの発見情報もなく、そしてほかの国の情報さえも入ってこなかった。

俺もだいぶここでの生活に慣れてきていた。

8月の初旬ぐらいには、組織が本部近くの寮の部屋を俺に貸してくれた。

それがまあ、うん広い。


「いや~、いいものだな、こういうのも」

俺も晴れて一人暮らし!なんか少し大人へ背伸びした感じがあってワクワクした。

これでようやく小うるさいチヨから解放された!

夜更かしし放題!

だが、平日は組織内で訓練があるから遊びには行けないのだ。

訓練とは言えども、いつも家でやっていたトレーニングに似たようなものだったから今のところは大丈夫である。


他の部屋も遊びに行ってもいいということで、俺はよく他の部屋、特に飛月の部屋に行っては気に入っていたゲームを押し付けやらせている。

なんせ、あいつゲームしたことないっていうんだ。

厳しい家庭環境だったのかもしれないが、今はその反動もあってかかなりやりこんでいる。

何日かに一回は龍治さんも飛月の部屋に来て三人でよく遊んでいる。

うん、めっちゃ楽しい!

友達と旅行とかしたらこんな感覚なのだろうか。

でも、何かが足りないんだよな・・・・・・

何か心の中がぽっかりと穴が開いてしまったような感覚に襲われ始めている。

8月の中旬ごろになってくると、何か寂しさのようなものを感じてしまうようになった。

そんな時、朝早くにインターフォンが鳴った。


おっとこれは!

今絶賛読書中の大人向けの本で見た、隣に女子大学生が引っ越してきてそこからいろいろ進展していくパターンか?

なんて妄想してみたが、ここは寮なのでそんなことはなくまあ飛月か龍治さんだろうなと思いながらドアを開けると・・・・・・


「えへへ・・・・・・来ちゃいました!」

俺の妄想した女子大学が!!!!!!

ではなく、少し照れながら下を向いたチヨだった。

ずいぶんといっぱい荷物を持っている。

なんだチヨか・・・・・・

ん!?チヨ!?


「な、なんで!?こんなところに!?」

心配かけたくないから一人でも大丈夫と言って家に残っていたのに。

もちろん、俺は心配なんかしてないから一日2回ぐらいしか電話かけなかったし、週末に少し家に帰って勉強を教えがてら様子を見に行くぐらいだったけどね!

いや、そんなことはそうでもいい!


「なぜここに来られたんだ!?一応厳重なセキュリティがあったはず・・・・・・」

「なんでセキュリティを無理やり突破したみたいな言い方をするんですか」

「なんだ、無理やり来たんじゃないのか。つまらん」

「久々に会ってそうそうその態度ですかこの人は!」

少し頬を膨らましながらチヨが言う。


「だって久々といっても今日金曜日だから五日ぶりじゃん」

「まあそうですけど・・・・・・ほ、ほら勉強!私一応受験生になれたじゃないですか!アルトさんに教えていただかないとわからないところもありますし、わからないところはすぐに聞けた方がいいってアルトさんも言ってたじゃないですか!?」

「いつも電話で教えてたじゃん」

「いえ!対面の方がいいんです!なので、ここで私も暮らすことになりました!」

「本音は?」

「アルトさんがいない生活が寂しいと五代さんに相談したら、龍治さんにかけ合わせてくれたらしくて・・・・・・」

もう、クッソ可愛いなこの子は!


「だけど、この部屋じゃなくても他の部屋があるだろ?そこじゃダメなのか?」

「ダメ・・・・・・ではないと思うんですが、龍治さんにアルトさんと同じ部屋の方がアルトさんのためになると言われて」

あんの金髪頭!

俺の一人暮らしを邪魔しやがったなあ!?


「話だと、時々『チヨいねーな』といって寂しそうにボーッとしてるアルトさんを見かけたとかなんとか」

って原因俺かよ!

寂しさの原因をわからないふりして、口に出してたってこと!?

ヤバい奴じゃん俺!?


「へー・・・・・・アルトさん。私がいなくて寂しかったんですか?」

チヨが下からにやりと俺の顔を見てくる。

「は!?そんなわけねえじゃん!むしろ居心地が良くてせいせいしたね」

俺は何故かチヨから顔を背けて自分の思ったこと?を伝える。


「そーですか・・・・・・」

チヨが少し悲し気な表情をする。

「私は、アルトさんに会えて嬉しかったのに・・・・・・」

「お、おう・・・・・・」

や、やめろチヨ。その表情と声音はおれの心臓に悪い。


「お取込みの中悪いが」

後ろから声がかかり俺とチヨは驚いてビクッと反応してしまう。


「いや、すまない。チヨ荷物は此処でいいのか?」

後ろを見ると五代がいた。


「あ、すみませんでした。五代さん。運んできてもらっちゃって」

「いや構わないよ。可愛いチヨのためだ」

「いやですよ、可愛いだなんて・・・・・・」

「いや、本当に妹のようだ。私にも君みたいな家族がいればよかったのに」

・・・・・・めっちゃ二人ともニコニコなんですけど!

めっちゃホワホワした雰囲気が出てる!

なんかもう俺のことお構いなしな感じじゃないですか?


「ふ、二人とも、いつからそんなに仲良くなったの?」

「以前に私が軽く動悸を起こした時あったじゃないですか?その時に五代さんがずっと優しい言葉をかけて寄り添ってくれたんですよ」

チヨが嬉しそうな口調で五代を褒めると、よしてくれと五代が照れている。

あ、あれ?チヨが完全に恋する乙女同士の顔になってんじゃん!?

俺ってばお邪魔!?

てかここおれの部屋の前なんだけど!?

そう思っていると、五代が咳ばらいをしてにもつを持ち直す。


「じゃ、じゃあこの部屋に荷物を入れるぞ。立花、そこを開けてくれ」

「あ、ああ。わざわざありがとな」

完璧に置いてけぼりになった感じがあり上の空のおれいになってしまった。

そして、それが俺の重大なミスだった。

部屋から五代の悲鳴が聞こえてくる。

あ、やべ。

さっきまで読んでた大人向けの漫画、テーブルのうえに置いたままだった・・・・・・

後ほど、チヨと五代の二人に部屋を捜索され、すべての本を処分された挙句、数時間にわたり正座でお説教された俺だったとさ。

折角市川のやつと都内にまで行って買ってきた秘蔵物だったのに・・・・・・

その日、俺の一人暮らしという楽園は崩れ去っていったとさ。


         



――9月1日午前11時


「何をボーッっとしてるんだよ、アルト?」

飛月が俺に話しかけてくる。


「なんだ、お前さんも休憩か?さすがに長時間訓練してるってのもきついもんな」

そう、俺達はただいま緊急の事態に備えて様々な特訓を受けている。

災害時の民間人の避難経路の確認や、対人戦の特訓、俺の場合は龍治さんから特別なトレーニングも受けているが・・・・・・


「それにしてもアルト、お前って本当に鍛えているのか?動きが単調過ぎやしないか?」

うん、確かにそうかもしれないけれど。


「飛月の先読みの技術が異常すぎるんだよ!ちったあてめーの実力ぐらいわかりやがれ!」

常識外れなんだよお前は!

いや本当に、こいつの先読みの能力がすごすぎるんだよな。

さっきの訓練の時だって・・・・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「行くぞオラアアアアアアアアア!!!!!!」

俺は気合を入れて飛月につっこむ。

一応、中学生の時まではそれなりに俺もヤンチャをせざるを得ない状況が多かったので、こういうタイマンには慣れていた。

勿論、当時は相手に怪我をさせてしまうと繋一さんがひどく悲しんでしまうので怪我をさせないようにこちらは防御中心の立ち回りだった。

相手の攻撃を受け流す型は、何故か繋一さんが知っていたから困ったときに使えるように教えてもらっていた。それと昔見たアニメや特撮の動きを模倣して作った出鱈目な動きで特訓の時は対応している。

そんな動きでは大振りすぎるのもあってか、飛月には全く当たらない。


だけど、最初の頃のように一方的ではなくなってきている気がする。

飛月が俺の大振りの右の拳をしゃがんでよける。


だが、これは俺の誘いだ。

俺はすかさず、飛月の腹部にめがけて左足でけりを入れようとする。

あ、一応安全面には配慮されていて、特訓中は腹部に胴をしているので俺も心置きなく戦える。

これは決まった!

そう思ったが、飛月は左足で重心を取り低い体勢で一回転をしながら俺の左側へ移動した。

やっべ間に合わない!

右足で着地した飛月は俺の左わき腹に何故か右足で蹴りを跳びながら入れてくる。

この少年、飛月慎二は先読みだけじゃなくて、身体能力もただ者ではないようだ。

俺は蹴りを入れた左足の着地が間に合わず、見事に吹っ飛ばされてしまったとさ・・・・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「身体能力にもド肝を抜かれたけれど、本当になんであんなにも俺の行動が読めるんだ?それが、黒の力だったりするのか?」

「前にも言ったけど、俺にもわからないよ。あの動きについては、たまたまできたに違いない。ちなみに左足でおまえに正面腹部やわき腹を蹴っていたらお前は・・・・・・」

ん?

飛月が急に会話を止めるからどうした?と聞いてみるが、なんでもないと返事が返って来るだけだった。


「しっかし、すごいよなお前さんは。まだチヨと同い年ってのに、こんなに大人に囲まれながら生活してて」

「いや、俺は慣れているんだよ。むしろここでの生活の方が昔の生活よりもとても居心地がいいんだ」

大人と一緒にいることに慣れているのか、すごいな。


「そうか~。俺なんてお前さんの歳の時は勉強こそかなり頑張ってたけど、なにぶん、大人ってのが気に食わなくてな。てめーの言い分ばっか押しつけてきてや、てめー勝手に都合よく解釈を変えてくるから。まあ、俺のまわりにいたクソ教師どものせいなのか、俺の時期的な問題だったのかはもう記憶が定かじゃないけどな」


今となってはよくやったもんだと自分で自画自賛したくなるような中学生活だったな。

怒られ、疑われて、嫌われて。


「それでよく中学校に通い続けられたな。何か秘訣みたいのはあったのか?」

飛月は俺にいつもより声を大きくしながら聞いてくる。

どうやら、この手の話題がお好みのようだ。


「そうだな。やっぱり友達の存在ってのはでかいよな。出会いはなんとなく当時見てたアニメが同じで気が合って、そこからどんどん拡大していった感じかな。本当にあいつらと友達になってからは楽しかったよ。4限の授業が終わった瞬間に購買へ走って行ったり、帰りにゲーセン寄ったりして・・・・・・」

・・・・・・友達

村田夫妻の下でともに働いていたあいつらのことだが、本当に感謝している。

しばらくの間、一緒に働くことができなくなると8月のうちに言っておいたのだが、その時は相変わらずの悪態をつかれた。

・・・・・・居心地がいいのか悪いのか結局わからないままだったが、とても楽しい日々を送ることができた。


先ほど言った学校やゲームセンターも5年前の、恐らく獣による厄災の影響ですべて壊れてしまった。

だからすべて思い出。だけど思い出を共に作ったやつらは生きている。これからだってたくさんいろんなことをして思い出を作っていける。

だから、落ち込んだりはしない!

村田夫妻にも、事情を隠しながら話したが、なんとなく事の重大さを察したかのように俺は思えてならなかった。

しっかり隠して伝えたはずなんだけどな・・・・・・


「友達・・・・・・友達か・・・・・・」

飛月がつぶやいている。


「そういえば、お前さんはどうだったんだよ飛月。今となっては多分学校にいけてないだろうけれど、どんな事してたんだ?」


「・・・・・・」

あ、まずい。この空気は踏み込んじゃいけないやつだ。

飛月を取り巻く雰囲気が一転したようだ。


「それは、また話す機会があれば。じゃあ、俺は冷えないうちに着替えてくるから」

その場を速く去りたいのか若干早口になりながら休憩室の自動ドアから出ていく。

あ・・・・・・・やべ。

地雷、踏んだかも。

俺も休憩室の自販機に売っていた冷たいお茶を飲み終わり、休憩室を後にした。


13時

「じゃあ、みんな!手を合わせて!」


「「いただきます!!!!!!」」

今日の昼ご飯はチヨと孤児院の子どもたちのところで食べようという約束をしていたのでその時間通りに向かいチヨと合流し、食べ始めていた。

いつも通り子どもたちは元気よく挨拶をする。

チヨも今日から学校が始まったものの、初日のため授業はなく、早めに終わって学校から徒歩30分ぐらいかけてわざわざ来てくれた。

説明しておくと、今の寮から学校までが徒歩で片道30分。

自宅からだったら10分ほどだ。


学校側は通学に30分以上かかる生徒のみに通学路を申告すれば自転車での通学を許可している。

本当は時間がかかるから自転車にしてほしいが、通学路が万が一露呈し、俺たちの存在がおおやけになると面倒という理由から、チヨには申し訳ないが徒歩で学校に行ってもらっているのだ。

前まではチヨも進学する気はなく、家の家事はいろいろとしてくれたが、最近はチヨも勉強の疲れが出てきているので、俺が早起きして弁当を作るようにしている。


ちなみに、チヨが受験生になれたのは八咫烏のおかげだった。

スタッフとしての稼ぎがまたいいのだ、ここは。

チヨには俺と違って夢があるから、是非頑張ってほしいものだ。

まあでも、やっぱり俺が作ると栄養素が傾くといいますか、肉物が多くなってしまうわけなので、意識的にチヨには緑色の野菜を入れるようにしている。


勿論、村田夫妻お手製の野菜たちだ。

夫妻の野菜は子どもたちにもとても人気だ。

特に夏のトマトはとても甘く子どもたちのお気に入りらしい。


「今日も来てくれてありがとね、アルト君」

そう言っておれのところに来てくれたのは蓮沼さんだった。


「いえいえ!俺も子どもたちにも会えて嬉しいですよ」

俺はもうニッコニコ。何せ蓮沼さんめっちゃ美人ですから。

勿論、子どもたちと遊ぶことを目的としているが、二番目の目的は蓮沼さんだ。


「うんうん、アルト君が来てくれると子どもたち、とても楽しそうだから」

「ええ、俺も蓮沼さんに会えて嬉しいですよ~」

俺はもう蓮沼さんで頭がいっぱいだ。

刹那、鋭い視線が俺の右隣から差し付けてくる。

やめて、怖いよチヨちゃん・・・・・・

こ、ここは話題を変えてと。


「な、成人は子どもたちと馴染めていますか?」

「うーん、やっぱり歳がみんなと離れているから、馴染みにくいのかもしれない。あの子、引き取ろうとする人が来ても頑なにここを離れようとしないから」

成人はもう結構長い事この孤児院に居座り続けている。理由としては10歳になったものの不愛想と頑固が原因であろう。成人にとって相性がいい引き取り手が見つからないのかもしれない。

俺とはかなり長い付き合いなので、よく話したりしている。

今も一人で部屋の奥で黙々と昼ご飯を食べている。


「後で話してあげてもらっていいかな?あの子、アルト君と話している時が一番和やかな表情をするの」

「もちろんですよ。俺もあいつと話したいなって思っていましたし」

そういうと、蓮沼さんは笑顔でありがとうと言ってくれた。

うーん、最高!

そしてまたしても視線を感じ冷や汗をかくことになる。


「あ、そういえば!」

蓮沼さんが思い出したかのようなパーッとした表情をする。


「アルト君!私の主人と同じところで働き始めたんだよね?あの人ってばいろいろとハチャメチャするけど、優しい人なの。だけど根はとても繊細な人だから支えてあげてね」

「はい、もちろんで・・・・・・」

・・・・・・え?主人?


「えっと?今なんて?」

いやいや聴き間違いだろう!

俺は主人なんて言葉きいてな・・・・・・


「へ?うちの主人と同じ職場で働き始めたって聞いたけど?」

聞き間違いじゃなかったッッッッッッッ!!!!!!!!


「え、えーと・・・・・・ご結婚なさってたんですね。ちなみにご主人は・・・・・・」

「あれ、聞いてなかったんだ。大道龍治だよ。因みにまだ籍は入れてないけどもう結婚前提なの~」

そう、幸せそうな顔をしていう蓮沼さんだったが、俺は驚愕とショックで言葉を失っていた。

そんな中、右隣からはどこか嬉しそうな雰囲気が、奥からは嘲笑に似たものを感じた。


「そ、そうだったんですか・・・・・・おめでとうございます・・・・・・」

・・・・・・

昼食後俺は、龍治さんのところに向かった。

俺の初恋の相手を奪った相手に俺は一言言ってやりたかったのだ!


「今から、旦那って呼んでもいいですか!?」

「・・・・・・いや、急にどうした?」




――18時

9月にも入り夏真っ盛りの頃と比べて日が沈むのが早くなってきた。日が昇っている時間が減り少し寂しく感じる時期がやってきた。

俺はチヨに勉強を教えていたが、きりが良くなったので夜ごはんの支度をしている。

米を研ぎ、炊飯器にお釜を入れて炊き始めた。

今日は生姜焼きでも作ろうかと玉ねぎを冷蔵庫から取り出そうとした・・・・・・


瞬間だった。


――部屋からサイレンが鳴り響く。

全身を緊張で硬直させてしまいそうな耳障りな音。

だが、以前のような国民保護警報の音ではない。


「寮内にいる皆、聞こえているか!?」

その声は旦那の声だった。


「特にアルトと五代!緊急事態だ!至急本部に来てくれ!」

俺はその声を聞いてすかさずエプロンを脱ぎ、家を出ようする。

玄関で靴を履いているとチヨが不安そうな顔をして部屋から出てきた。


「アルトさん・・・・・・」

今にも泣きそうな表情をしている。

始めて聞いたサイレンだ。

びっくりしても仕方ないだろう。


「大丈夫。帰ってきたら作るから、一緒に食べような」

そう言って俺は寮の部屋をあとにし、走って本部に向かった。

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