第44話・水支配魔法


 俺とリーナは相川と一丸に合流した。

 合流した場所は町の城壁の近くだった。


 今回では初めての一丸との出会いである。


「よお、ユウヤにリーナ、紹介するぜ。コイツは一丸、水魔法の使い手だ。ついさっき意気投合したんだが良い奴だぞ」


「一丸です。よろしくお願いします」

 俺とリーナの二人がいたからか、握手ではなく軽く会釈をする形となった。

 

 特にデジャブとかは感じなかった。

 多分向こうも同じだろ。


 あれ?これ下手したら、相川をPKする未来変わるんじゃ・・・。

 俺の方か握手するか?


「ケイ?」

 リーナがいきなりそう呟いた。


 ケイ?誰だ、いや流れから一丸の事か?リーナは何かデジャヴを感じたということか。

 1周目の世界で一丸とリーナは仲が良かった?もしくは何か因縁があったとか。


「リーナさん・・・、う。頭が頭が痛い」


「お、おい大丈夫か。一丸」

 いきなり頭痛を訴える一丸を心配する相川。

 頭痛ってアレだよな?

 俺の場合だが知ってはいけないこの世界の情報を知ろうとしたら来るアレだよな。


 1周目の世界でリーナと一丸の間に一体何が・・・。


「えっと、もう大丈夫です。すみませんご迷惑をお掛けしてしまい」


「大丈夫ならいいが、何かあったら無理せずに言えよ」


「ありがとうございます。そうさせて頂きます」


「えっと、取り敢えず?狩りに行くか?」

 町の中だとプレイヤー同士で攻撃が出来ない、つまりPKが出来ないので外に出る提案をする。

 俺としては相川をPKしようとする一丸を捕まえて情報を吐かせたいからな。


「そうだな。行くか」


 4人で町を出て狩りを始める。


 最初は互いの連携を見るという意味も込めて、安全な城壁付近の草原でゴブリンを狩ろうとするがプレイヤーが多すぎてろくに狩れない。


 しょうがないので森の付近にまで足を延ばし、森の中からあぶれた魔物や新しくリポップした魔物を狩っていく。


 俺は星三武器というチートがあるんで、どんな魔物も一撃。

 リーナは聖騎士という上位職業で普通に強く、一丸もかなり高レベルの水魔法を使い、次々と魔物を屠っていく。

 相川はその俊敏を活かして全ての敵からヘイトを集めつつも攻撃を躱す最高の回避タンクを担ってくれる。

 

 特に何事もなく順調に狩りは進んでいく。

 順調過ぎて怖いくらいに進んでいく。


 そんでもって一丸が普通に強くてビビる。

 まだこのゲーム始まって1日も立っていない筈なのに何でこんなに威力の高い水魔法を連続して使えるんだ?

 俺が言えた義理じゃないけど、チートと変わらんだろ。


「すみません。MPが残り1割になってしまいました」

 一丸がそう申し出てくる。

 

「そうか、じゃあしょうがない、一旦ここらで戻るか?」

 相川がそう提案をする。


 ん?あれ?このままじゃあ特に何事もなくただ狩りをしただけじゃね?

 相川殺されてないし、一丸も特に怪しい動き見せてないし?

 あれれ?おかしくね?やっぱり未来変わってしまってるな。さて、どうしようか?このまま帰るか?

 それとも俺が一丸に握手等の接触してデジャブを引き起こしてみるか。

 そうすれば何か動きもありそうだな。


 ・・・・・・


 まあ、どうせ【死に戻り】があるし、最悪何かあっても大丈夫だな。

 よし、そうするか。 


「俺は一人でもう少し狩りをするつもりだ。という訳で先に戻っててくれ。

 あ、そうだ、一丸良かったら俺とフレンド登録してくれないか」


 俺はかなり自然な感じで握手を求める。


「あ。はい。僕で良ければ」

 一丸は自然と俺の握手に応じてくれる。


 その時だった。

 デジャブが否、1周目の世界の記憶が走った。

 

 それは一丸がリーナ、いやリナに告白をしている記憶、そして振られて俺がそれを慰め、一緒に二人で酒を飲んだ記憶。

 懐かしく、優しい淡い記憶だった。


「今のは裏切る前の・・・」


「あ。あ。あ。アアアアアアア。僕は僕は僕は・・・・・・アアアアアアア」

 発狂する一丸。

 何か知らない方が良い記憶を思い出したかのようだった。

 そのままうずくまる。


「お、おい。大丈夫か一丸。ユウヤ、一丸に何をした」

 相川が一丸を心配して駆け寄る。

 でも、駄目だ。相川が今の一丸に近づくのは不味い。


「相川、今すぐそこから逃げろ」


 一丸の眼には覚悟があった。

 世界の全てを敵に回してでも愛する人を守るという強い覚悟を感じた。


「僕は、例え誰に何といわれようとも、守りたい人がいるんだ~~~~~~。水支配魔法・水破天羅球」

 

 相川に向けて放たれるわ、30㎝程の水の球。

 ただ、その球からは禍々しい程の膨大な魔力を感じた。

 攻撃力以外のステは低いまんまの俺や俊敏極振りの相川はもちろんのことリーナでさえ、殺しそうな威力を感じた。

 

「相川に何をする。盾術・身代わり」

 リーナが代わりに攻撃を受けようとする。


「リーナ、やめろ。その一撃はいくらリーナでも」

 俺は慌てて叫ぶ、だが攻撃はリーナに当たることなく、突如掻き消えた。


「何故、何故何故何故何故何故何故何故だ~~~。リナ、何故邪魔をする。僕は、僕は僕は、僕は・・・君を・・・アアアアアアア」

 発狂したまんま一丸は森の中に入り、消えてしまった。


「一丸、一体どういうことだ?」

 相川はそう呟いた。


「取り敢えず町に戻るぞ。相川」


「リーナ・・・そうだな。ああ、そうしよう」


「俺も一緒に町に戻るよ」


 俺達3人は町に戻るのだった。

 

 


――――――――――――――――――


 一丸って名前で察せれる人はいるかもですね。

 キャラ設定と過去編を決めた後に名前をどうしようかと思ったのですが、せっかくだから、読者が分かりやすいようにヒントを追加しようということでこんな名前になりました。

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