Alleluia MOEluia BLuia! フェスティフル

PAULA0125

あなたさえいれば

 二君に仕えることが出来ないのなら、どちらに肩入れするべきか。

 公正な立場を取れば、どちらも失うならば、どちらかだけでも選び取らなければ。


「あなたを遣わします。私は、を取ります。内側から、突き崩すためです。」

「御意に。」


 ただただ、何をどう応えれば良かったのか、それだけを考える。どちらを選んでもどちらかが虐殺されるのなら、僅かな良心に訴えるしかない。

 全てが良しとされた、神の創造した世界は、一体いつから、地獄絵図を内包するようになってしまったのか…。



「こんばんは。聖槍は見つかったかい?」

 ありもしない幻想に取り憑かれた彼を突き動かすのは、きっとレイシズムでも何でもない。子供だった自分を苦しめた、世界大戦の影響だろう。

 行き過ぎた制裁が、恐怖と後悔を抱かせるとは限らない。中には彼のように、「激しい憎悪」に囚われる者もいる。

 彼は正しくそうだった。神から与えられた才能カリスマを、全て駆使しても、纏まらない国への不信感は募る。

 残酷な独裁者か、それとも革新的な英雄か、そんなものは所詮人が決めることである。まして信仰そのものじぶんが、どうしてそんなものを決められよう。

「お前、いや、貴方は………。たしか…。」

「おっきくなったなぁ。絵はまだ好きか?」

 酷く苦しそうだ、とは思った。ただ、彼の心の中身までは、見えていなかった。否や、見ようとしなかった。非常時に混乱している人間の心を見るのは、自分ではまだ日が浅い。

「神に似て神に非ず、人に似て人に非ず、さりとてひとでなしでもない…。」

「おや、そんなことまで覚えてんのか。まああいや、とりあえずコーヒーでも飲ませてくれよ。」

 そう言って勝手に座ると、彼は何かおぞましい企みを考えながら、コーヒーとクラッカーを用意した。それも見ないふりをした。過去の記憶が、この先自分に何が起こるのかを予言してくるが、それでも今は、ここにいるべき時だ。信仰じぶんはただ、人間ひとに寄り添うことしか出来ないのだから。



お題『ヤンデレ』

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