初めてのライブ 2

「相変わらず敬語が抜けないねえ」


「そりゃ……」


 貴女のことを考えると頭がいっぱいになるんですよ。


 口調にまで意識が回らないんですよ。


 マジでなんでだろうなあ!


 とは言えないので黙る。


「……」


「まぁ、今日は大目に見てあげるっ。初ステだし」


 何故か繋いだ手をブンブン振られる。


 意味不明。


 嬉しいけど。


「緊張してると思うけどさ、大丈夫だよ。歌、滅茶苦茶上手くなったじゃん!」


「うーん」


 そうかな。


 不安。


 でも、ユミさんがそう言うなら、なんていうかな。


 大丈夫って気がしてきた。


「元々素質があったんだよ」


 褒めてもらえて素直に嬉しい。


「あの、因みにダンスは」


「……頑張っていこうね!」


 まだまだダメってことだな!


 へこむわっ。


「麗華ちゃんのアイドル人生は始まったばっかりなんだから。これからだよ。それに、ファンに成長を見せるのもアイドルのお仕事だよっ」


「はい」


 急降下していたテンションが右肩上がり。


 我ながらチョロイ人間だと思う。


「それじゃ、行こっか。3人は先に待ってるよ」


「えっ、それ先に言ってくださいよ!」


 待たせてんじゃん。


 早く行かなきゃ。


 駆けだそうとしたけど、一歩踏み出したところで動けなくなった。


 ユミさんが立ち止まっているから。


「どうしたんですか?」


「麗華ちゃん、アイドルになってくれてありがとう」


「ユミさん」


 首を横に傾けてあざといポーズ。


 いつ戻り可愛い。


 だけど、何故だか少し鼻が赤くなっている。


 そうだよな。


 不安なのは私だけじゃないよな。


 新しい一歩を踏み出すのは、他のメンバーも同じなんだ。


 これまでみんな、私を何度も励ましてくれた。


 疲れていても練習に付き合ってくれた。


 その恩を、これから返していこう。


「私が絶対HANA-AKARIを有名にしてみせますから。期待しててください」


 気休めにしかならないかもしれないけど。


「うん、期待してる」


 互いに手をぎゅっと握って、やっと私たちは歩き出した。


 さてさて。


 緊張も不安も止まらない。


 それでも、出番はもうすぐ。


 やると決めたからには最後までやり切るんだ。


「うっし」


 小さく呟いて気合を入れる。


 見てろ、生き様。


 魅せろ生き様。


 絶対にアイドル界のテッペンとってやるからな!



おわり

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