第14話 クエスト生活〜薬草採取編その1〜

 1節 お話の最初は夕方から



「んじゃあどこ行って集める?」(朝凪


「そうですね……魔法の森に行くにも遠いですしさっきの山はスライムがいますし……というより」(時雨


「というより?」(朝凪


「まずもう夕方ですよ?」(時雨


「それはそう」(朝凪


「どうします?どこかの宿を探します?それとも車中泊します?」(時雨


「んー……普通に考えたら宿だけど、車中泊したいやついる?」(朝凪


「俺は別にいいぞ」(矢矧


「私もスペースあるし別にいいよ」(睦月


「アタシもー」(如月


「私もです」(時雨


「じゃあそうするか」(朝凪



 ということで、時間的にはだいぶ早いが車に戻っていい感じに寝れるように調整する。



 少し狭いが、貨物室に3人、後部座席の座席に横になって1人、一枚あった小さい布団を敷いて後部座席の足元に1人で5人だ。



 布団といってもそこまで柔らかいものではないただの布だが、まあないよりかはマシだろう。



「最初はグー!」


『じゃん!けん!ぽん!』



 ということで、貨物室に矢矧、時雨、如月、後部座席に睦月、床に僕という組み合わせになった。



どうしてこういうのでいっつも弱いのか。



 思いの外寝心地は悪くなかったのでいいのだが。



 睦月が寝転んできて上から落ちてきたら、いくら軽いと言えど大惨事なのでいい感じにシートベルトをしてもらって寝てもらう。



「みんなおやすみー」


『おやすみ(なさい)』



 2節 薬草採取へ


「おはよ〜」


「んーおはよー」


「おはようございます」


「おはー」


「おはよう」



 時間は午前5時。夕方に寝たのが効いて全員超早起きだ。



 なので早速クエストを進める準備をする。



 寝具をさっさと片付けて、武器をルーフキャリアから貨物室へ移し、エンジンをあらかじめ低出力で動かして暖機だんき運転をさせておく。



春先の朝はまだまだ寒い。



 とりあえず朝食は後回し。なんせ店も開いてなければ食材もないからだ。



 あったところで駐車場で調理したらほぼ確実に怒られる。



「準備終わったぞー」(矢矧


「こっちも終わったー」(如月


「へーいじゃあ行き先を決めるか」(朝凪


「そういやそうだったな……」(矢矧


「どうする?そこらへんの草の中に混じってるとかある?」(睦月


「あってもそれはなかなか見つけるのは大変でしょうね」(時雨


「だよねー」(睦月


「昨日行った山はスライムがいますし……」(時雨


「前装甲猪倒しに行った森もそれらしい変わった草とかはなかったしなあ」(朝凪


「じゃあちょっと遠いが魔法の森行くか?」(矢矧


「そうするかあ」(朝凪




「じゃあみんな乗り込んでー」


「へーい」「あいよ」「オッケー」「わかりました」



 低回転にしておいたエンジンの出力を上げる。すぐにガラガラ音が大きくなり、回転数計の数字も上がっていく。安定したら、クラッチを繋ぐ。



 すぐに車は動き出し、駐車場から出た。



 3節 列車との速度勝負(?)


 ビレノートを出たら、線路から5メートル離れた程度の、未舗装のそこだけ草がないというだけの土の道を走る。


 当然ガッタガタで、時々大きめの石を踏んで軽く跳ねる。


 すでに1キロくらい離れたビレノートから、聞き覚えのある大きな汽笛が聞こえる。始発列車が出発したようだ。


「あ!みんな窓開けて後ろ見てみて!でっかい機関車が来てる!」

「これ前見たやつと同じっぽいな」

「だね。相変わらずでっかいなあ」


 4分くらいすると、やかましい音を出しながら走る機関車がすごい速度で追い抜いていった。時速100キロ以上出てるんじゃないだろうか。


 ちょうど客車の最後尾が見えるあたりで、道は線路の隣から外れ草原へ向かう。すると、今度は遠くに行く列車が大きく道のある方へ曲がり始めた。


 7両くらい繋がった客車がずらっと並ぶ。


 車は緩い上り坂になった道をどんどん登っていく。時速は80キロくらい。


 そして、前に見える道は右へ緩やかに曲がっている。そしてその先は・・・線路。


 細く見える線路から右側へ視界をずらすと、そこには朝日に照らされオレンジ色を反射する、黒い機関車。


「あ、これまずい」

「何がだ?」

「列車が来てる・・・!」

「え?うわぁぁほんとだなんかこっち来てる!」

「どーするん!?」

「えぇぇぇえっと・・・出力解放!最大出力!走れぇぇぇぇえ!」


 グォアアァァァアン!!


 昨日とは違ったやかましい音を上げながらどんどん速度が上がっていく。その時速120キロ。時間制限付きの力技だ。ガタガタな道を、猛烈な勢いで進んでいく。一方機関車側は、鉄道車両から見るとそこそこきつい勾配を登っている。


 そのせいか速度が少し落ちている。これならいける。


 もう踏切まで300メートルくらいしかない。ギアレバーを1番上の5速まで上げる。するとさらにスピードは上がり、時速130キロ。


「いっけぇぇええ!」


 踏切を通過したその1秒後に機関車が走り抜けた。


 すぐさま出力オーバークロックを切りギアを3速に戻す。するとどんどん速度が落ちていき、また時速60キロから70キロの間くらいまで落ちた。


 左を見ると逆光の列車が見え、右に曲がっていくのが見えた。ものすごい音量の汽笛を鳴らし、車と同じ進行方向になった後、数分するとさらに加速していき魔法の森の方へ走って消えていった。



 4節 やべぇ姉妹と朝ご飯


「着いたー!」

「久しぶりでもないのに少し懐かしいですね」

「だな」


 あれからさらに1時間ほど走り、前来たところとは違う魔法の森へ着いた。


 草原と森との間には川が流れている。時間は朝の7時。朝食にはいい時間だ。


「朝ごはんどーする?お腹空いてきた」

「んー・・・川あるし、魚釣る?」

「んなこと言ったって釣竿とかないぞ?」

「手掴みすればいいじゃん」

「前も言ってたけど普通手掴みはせんのよ」

「じゃあうちら2人で獲ってくるから料理の準備しといてねー」

「何者なんだか」

「本当にな・・・」


 10分くらいすると、5匹ぴったり魚を獲って持ってきたので僕ら3人はめちゃくちゃ驚いた。


 すぐに捌いて調理してくれたので、僕らはすぐに朝ごはんを食べることができた。サバっぽい食感で美味しかった。


 流石に主食とか副菜は食材不足で作れないのでそれだけだが、十分腹の足しになった。しばらくはご飯に悩むことになりそうだ。

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