第42話 『コバンザメ』/お題「小判食え」

 上司から嫌われるより、好かれた方が仕事しやすいに決まっている。

八方美人上等。職場では「爽やか好青年」で通っている。

ただ一人の評価を除いては……。


 給湯室で、女性社員から俺の噂話が出た時に、40代の独身女性ベテラン社員の「お局」が言ったんだ。

「コバンザメ」って。

偶然耳にして、ショックを隠せなかった……。


 お局に実力を見せつけてやる。完璧な資料を作って提出した。

「企画書チェックしてください!」

「あいよ。でも、ちゃんと休憩してる?」

「え?」

「小判食え」

 彼女の手には、今川焼が。え、えーっと……。


「ほれ、小判焼」

「それは、今川焼では?」

「回転焼やろ」

「大判焼でしょ」

「絶対、御座候」

 様々な出身地から上京した社員が集う職場は、大いに盛り上がった。


 お局の第二のあだ名は「小判食え妖怪」だそうだ。

大好物を渡されたら、気に入った証拠。

彼女にかかれば、ハッシュドポテトも「じゃがいもの小判焼」になるらしい。

おもしれー女。よし、すり寄ろう。

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