第35話 『無欲のスベり知らず』/スベり高等学校

【スベり高等学校の汚名返上! ~軌跡と奇跡】

 お笑い甲子園三連覇の強豪が低迷期を迎え、二年前ついに予選敗退。

元お笑い芸人の名将が退任。

その時の一年生、谷間の世代の彼らが栄冠を手に入れた!


「あいつら、やりよった」

 号外を受け取った男性が、ほくそ笑んだ。


 祝勝会で、前顧問を見返したと大盛り上がり。

「去る時にサルスベリを寄贈されたからな」

「猿でも滑る……スベり倒した教え子への嫌味」

「違う」

 真相を知る、後任の顧問が口を挟んだ。


 サルスベリの花言葉は「雄弁/饒舌/あなたを信じる」らしい。

本番で頭が真っ白になってしまった生徒でしに対するエールだった。

 また、「百日紅」の別名にちなんで、花開いたら息の長い芸人になってほしいという願いも込められているんだとか。


 真相を知って、感動の涙を流す生徒達。

だが、当の優勝コンビは涼しい顔……。

「単なる思い出作りだよ」

「そう、青春の一ページ」

「芸人なんて、人生の博打は打てない」

「安定の公務員志望だもんな」

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