第6話 塩人(しおんちゅ)

 公設市場の一角で、塩を売っている者がいる。

彼が何処からやってきて、何処へ帰っていくのか誰も知らない……。

いつしか市場の人々は「塩人(しおんちゅ)」と呼び始めた。


 観光客は、まるで「星の砂」のように扱う。

「キラキラしてるぅ」

「映える!」

 小瓶に詰められたただの塩を有り難がって購入していく。

斜向かいの土産屋は「商売あがったり」と嘆いていた。


「味見しみそーれー」

 基本的に人のいい本土出身の土産屋の主人は、ペロッと舐めてみた。

「しょっぱさの中に甘みも感じて……不思議だ」

途端に魅了された。


 好奇心旺盛な彼は、秘密を知りたくなった。

小さな舟は、無人島だと思われていた島の船着き場に到着した。

海では尾行もバレバレで……塩人は振り向いた。


 ヒィ……恩返しに来た鶴を襖から覗いた心地で身構えた。

「わんがなめーぬ塩人んでぃ知っちょーるぬが?」

なぜ塩人って名前なのを知っているかって……


 本名だったの!?

君が作る天然塩の結晶のように、キラキラだね。




#毎週ショートショートnote

2023年6/18~24のお題「塩人(しおんちゅ)」

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