第26話 最強の殺し屋クロは、訓練兵と戯れる

 「ではレイ様こちらへ」


 メイドがレイについてくるように指示を出す。レイはその指示に従うように三人のメイドの後を追う。


 「では今回のお召し物と」

 「獲物と」

 「お飲み物でございます」


 一人のメイドはレイにいつもの黒いローブを渡してきて、二人目のメイドは短剣と9mm口径のハンドガンを渡してきて、最後のメイドはジュースと水をレイに渡してきた。


 「ありがとう」

 『では頑張ってきてください!」

 「それと下まで付き添いましょうか?」


 メイドは目をキラキラさせてレイにそういうがレイは遠慮をした。そうこの六色光で働くメイドたちも殺し屋だ。憧れの存在の前では欲望が抑えきれないらしい。だからレイは今回は遠慮した。


 そして再びレイは六色光地下特殊訓練場に足を運ぶ。そこには明らかに百以上いる訓練兵が一ミリもずれずに整列をしてぴたりと動きを止めていた。


 「六色光クロ様がご到着した。お前ら拍手だ!」


 パッパッパッパッパ……


 「皆さんこんにちは、六色光に所属しているクロです。今回手合わせをすると言うことで本気で殺しに来ていいです!」

 「では訓練兵の中で強い者を私が選出する」

 『ッハ!!』


 その間にクロは最終調整をする。


 時は来た、六色光大本部地下特殊訓練場のエリア4にて特殊な模擬戦が行われる時間になった。レイは地下特有の暗闇の影から黒いローブと手には黒い手袋そして肩から腕にかけて銀色のチェーンを着た仕事用の服装になった。それは訓練兵からすると明らかに別格の存在だった。


 「今回レイ様が持っている9mm口径ハンドガンの弾は実弾だ!」

 「皆安心して、リキッドが持っている特製薬があればすぐに傷はふさがる」


 訓練兵一同はそれでもざわつくがセブンの声でそのざわつきがすぐに消える。そして一人目の訓練兵が前に出た。


 「クロさんあの者は近距離戦闘を得意とします」

 「分かった」


 一通りの説明を受けて戦闘態勢に入る。


 「こんにちはクロ様、私はあなたが目標で頑張ってます!」

 「ありがとう。この訓練兵に入るのも難しいと聞く相当努力したんだな」

 「ありがたいお言葉です! では行きます!」


 突如訓練兵の周りがに砂ぼこりが舞う。そしてそれがすぐ晴れるとそこには訓練兵が居なかった。


 「動きが速いと……だが」


 キィーン!!金属音が地下に響き渡った。なんと周りにいる者が目視できないほど早い訓練兵のナイフでの一突きをレイは軽々と短刀で受け止めた。


 「凄すぎる……」

 「だがこれで終わりではありません!」


 訓練兵はそこから体をひねり次の攻撃を掛けるが……。バン!ひとつの銃声で試合が終わった。すぐさまリキッドが薬を持ってきて飲ませる。


 「ゴホゴホ……強すぎますクロ様」

 「なかなかの腕だったよ」

 「ありがとうございます!」


 そして二人目だ。この訓練兵は魔術を得意とするらしい。正直俺は魔術を使いたくない。みんな練習するのだが魔術は裏社会にとって一番の武器となる個人情報の塊だ。魔術の痕跡をたどれば必ず犯人が分かる。そんなものを使いたくないのだが……。


 「少しは魔術使うか~。《ファイアーストーム》」


 レイの前方に渦巻く火の竜巻は徐々に巨大になっていき訓練兵に衝突する。それも刹那の如く見えないスピードだ。周りは何をしたか全く分からない。そして皆無詠唱で魔術を使った事を驚いている。


 「クロ様魔術は使わないと言っていたのにこの威力は流石六色光です!」


 訓練兵の一人がそう言うと周りからは歓声の声が上がる。


 最後の訓練兵になった。


 「クロ様今回の相手は我ら訓練兵の最高傑作と言われている者です。そして六色光のミレイユの直弟子であります」

  「あのミレイユが弟子を取るとはね。殺し屋の後の引継ぎも終わらせているというわけか……」


 レイとその訓練兵は前にでた。


 「きみミレイユの直弟子だって?」

 「そうです。俺は直弟子です」

 「名前聞いていいか?」

 「リヒトです」

 (訓練兵で名前持ちか……こいつかなり実力あるらしい)


 レイはそんな事も思いつつ試合が開始した。開始の合図と同時にナイフがレイの目の前に現れた。レイはそのナイフをかわしたら次はレイの隣までリヒトが来ていた。


 「おーと」

 「ここだ!!!」


 リヒトは体を崩したレイに鉄拳をくらわすと思ったが。それが罠だった。


 「引っかかったね」


 その言葉を吐き捨てるとリヒトの腹に発勁を食らわす。そのあと後方に吹き飛ばされたリヒトの体ギリギリに9mm口径の弾丸が四発撃たれる。リヒトは右に避けるしかなかった。それがレイの狙いだ。


 「終了だ」

 「うぅ……」


 リヒトの腹にもう一度発勁をあてた後に首元に手刀を入れ気絶された。


 「やはり最高傑作のリヒトでも歯が立たないとはクロ様は流石ですね」

 「このリヒトもなかなかのものだった」

 「この後クロ様は何をするのですか? もしかして少しの間、大本部に滞在するとか?」

 「いやすまないが学園島に戻らないといけないんだ」

 「それは残念です」

 「では六色光のメンバーにこの伝言だけ伝えてもらっていい?」

 「快く承ります」


 そしてレイは大本部を出てラスト学園島に戻るのであった。

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