第22話 最強の殺し屋クロは、連休を過ごす

 今日はとても暑い。いわゆる猛暑という日だ、そんな日にレイは自室にいつものメンバーと過ごしていた。


 「そうだな。まさか運営側の問題で次の試合が延期になるなんてね!」

 「でもよかったですね。休憩できて」

 「ミシェラもゆっくり休んでね」

 「で、そうだレイは連休なにするんだ?」


 ルイスは手に持っていたうちわで自身の顔をあおぎながらそう言った。


 「そうだな……俺は用事があるからみんなが計画してくれている事には行けないな……」

 『え~~』


 皆が口を揃えてレイに文句を言った。そして連休初日になりレイは学園島を離れ、少し離れた大きな街の端にある酒場に足を運んだ。


 酒場に入るとガラの悪い客やいい感じに酔っている客、そしてフードを被った客いろいろな客が居た。そして酒場特有の匂いや、ガヤガヤ声が耳にいきわたる。


 「おうレイか? そこ座っていいぜ」


 レイがカウンターに足を運ぶと陽気な声でレイに話かけるこいつは同業者って言っても情報屋のミハエルだ。


 「で、最近どうだ学園の方は?」

 「は!!!???」


 レイは思わず大声を出した。そしてその声に反応してレイに注目の目を向ける。


 「なんでお前が学園に通っている事を知っているんだ!」

 「いやね~ほら、あいつよあいつ」


 そう言うとミハエルは酒場の右奥に設置されている階段下に指を指した。


 「ったく。あいつかよ……」


 まぁ~あいつだよなリリー。


 「それはもういい。でどうだミハエル情報あるのか?」

 「ネタはつかんだぜ」

 「さすがだな」


 ミハエルはピースをしながらレイにニッコリと笑う。そしてネタについて話し始める。


 「でもな~。今回は少しめんどいぞ。ネタは簡単に手に入れたがその漏出先がギルドなんだ」

 「それはめんどいな……」


 ミハエルの口から出た【ギルド】と言う言葉は、この世界では殺し屋組織が世界で公認されていると言ったがそれを良しとしない団体もいるんだ。それが【表ギルド】だ。そして俺達がその反対の【闇ギルド】ってわけだ。


 「確かに殺し屋業界の伝説の情報屋を潰せば殺し屋に仕事はこなくなると言った感じか……」

 「レイの言う通りだな」

 「だが表ギルドも馬鹿だな……。ルイスもそれなりに強いからな……」

 「そうだね。レイもルイスの事強いと思うのか」

 「そりゃもうね」


 そして仕事の話をしているレイとミハエルの背後で何か問題が起きたようだ。後ろから急にバリンとグラスが割れる音がしてそのあとにガシャンと椅子が倒れる音がした。


 「おいおい何なんだ」


 そういうガヤがあたりから飛ぶ。


 「お前さっきから何なんだ!」

 「おっさんうるせぇーぞ!」

 「お前が最初に手を出したんだろ!」


 状況が分からないがなんとなくの理由でレイは立ち上がる。そうだここは殺し屋も通うバーだ。仕事で疲れてきている者がいるのにこんなところで喧嘩はいけないな。


 ドタ!!という音がしたころには大柄な男二人は床に体が倒れていた。


 「お前らうるさい。客はこんな喧嘩を見たくてここに居るわけではない」


 そしてレイは鋭い眼光を突きつける。


 「失せろ」


 大柄な男は尻尾を巻いてその場からダッシュで逃げる。そして歓声が上がる。


 「さすがだな坊ちゃん!!」

 「すげぇ~ぞ!!」


 レイがやったことは対して普通の事だが周りには普通ではなかった。そして部屋の奥に居るリリーもニッコリと笑いその場から立ち去る。そんなこんなありながらレイは自身の帰るべき場所に戻るが……。


 今回は連休だ。ここから本部まではかなり遠いので、支給された連休用の別荘に帰ることにした。


 『おかえりなさいませレイ様』

 「誰だ君たち?」


 レイは大きな扉を開けるとそこには知らないメイド服をきた者が数十人そしてメイドを仕切るセバスが一人いた。レイの質問にセバスが一歩前に出て胸に手を当て答える。


 「我々は殺し屋業界から来ましたメイドたちとセバスと申します。六色光からは絶対にレイ様を不自由させるなと口を固く言われています」

 「そうか、でもなんか様呼びはなれないな~」

 「お気遣いなく」

 「いや俺が気を使うんだよ!!」


 そうツッコミをあげて俺は風呂に入り、お待ちかねの夕食タイムといく。夕ご飯はそりゃあ絶品だった。メイドたちが作るご飯はおいしかった。


 「くったくった!」

 「おいしかったら何よりです! 毎日作りますね!」

 「頼むよ」


 そして俺は自室に戻りベットの上に寝転がり考え事をした。


 「でもな~何かおかしいよな……。大会がいきなり問題が起きたという口実で一時休止するとかな……」


 そう考えているとドアからコンコンというノック音が聞こえてドアが開く。ドアの先に立っていたのはメイドの一人だった。


 「何か悩み事ですかレイ様?」

 「あぁ。すまない。確かお前はミユだったか?」

 「ええ! 名前を覚えてもらえてうれしいです!!」


 メイドのミユが急にポロポロと涙を流した。


 「え。どうした急に?」

 「いや、私は昔から六色光が好きで……。憧れで……そんな方に名前を認識されて泣かないはずが無いです!!」


 それはそうと何か怪しい、あの大会の裏に何者かが噛んでいることも調べないといけないな……。

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