第1話 最強の殺し屋クロは、恵まれていた

 それは雨の強い日だった、確か風も強かった。俺は望んでもない事なんだが貧困層出身だった。


 いわゆるスラム街出身だ。


 そんな俺は毎日毎日生きるのに精一杯で水が飲めない日や食べ物が口にできない日などは多々あった。そんな俺でも死にたくない一心で食べ物や飲み物を毎日集めていた。


 水はそこらへんに捨てられている飲み物やそれでもなかったときは落ちている入れ物をバケツにして時々空から降る恵みをかき集めそれを飲んで渇きを潤していた。


 食べ物は同じくゴミ箱をあさり、草を食い、ネズミを食い、散々なメニューだった。そんな俺はいつしか盗みを働くようになった。


 宿屋に金もないのに入り飯を食いそれから逃げる。それが俺の日課。でもそれはいつまででも成功するとは限らなかった。もちろん失敗もした。


 その際は固い木の棒などで複数からタコ殴りにされた。


 「すみませんすみません」

 「うるせぇ!クソガキ」

 「私も殴らせろ!!」

 「……うぅ……」


 俺は叩かれながらも毎日生きるために飲み食いしていった。はっきり言ってこの国は闇に満ちている。俺が歩いているときに聞いた話によると……。


 奥の方に行くにつれてかなり環境が変わるらしい。大きな建物がずらりとそんな世界がこの国にもあったことはあの頃の俺でも関心した。


 そしてあれから数か月がたち。また生きるために同じ宿屋で盗みを働いた。それを見つけた店主は前と同じように俺を叩きまくった。


 「このネズミ以下の分際で俺の飯を食いあがって!!」

 「……すみません……」

 「今日という今日はもう許さん!」


 俺は大雨のなか何時間も殴られた。やっと解放された俺は足元が揺らつく中一人で夜闇をさまよっていた。


 この日はいつもより寒かったせいか俺は疲れて路地裏でたった子供一人でそこに寝ようとしていた。


 その路地は俺に悪運がついていたのか知らないが、毎回盗みを働いた店の近くだった。その店主は俺を見るなり棒で殴ってくる。そこで俺の頭の中で何かが切れた音がした。


 「……お前ら、俺の気持ちが分かるのか!」

 「あ?。お前さ何様のつもり?」

 「……お前らは金や飲み物、食べ物、暮らす家があるかもしれねぇーが。俺にはそれがねーんだよ!!」

 「ちまちまとうるせぇ事を言うなガキが!」


 店主が俺に棒を振るう時だった。俺はそこの記憶だけ少し曖昧だが確かに俺の体から放たれたのさ。


 「うーわーー」


 その現象に周りの人たちも俺たちのやり取りに目を移した。


 俺が出したそれは、魔術と言うもので、限られた血筋にしか扱えないものだった。それを知っていたある一人の男性がその店主に俺の事がどんだけ変な奴かを耳元で話している。そしてその一人の男性が俺に埃をはらうような目で言ってきた。


 「確かに魔術は限られた血筋にしか扱えないのだが、その中にも例外がある。それは悪魔だ。お前は悪魔なんだよ!!」


 俺は日ごろ使わない力を使ったせいか意識は朦朧としていて今にも倒れそうな中店主たちは俺を悪魔の子孫とかわけの分からないことを言いながら俺を殴ってくる。


 そして俺はそろそろ限界が近づき壁にもたれかかった。その日も雨は強くこの中で寝たらもう一生ここには戻ってこれないことが分かっていた時であった。


 「キミの名前なんと言うの?」

 

 優しくあたたかな男性の声だった。おれはボロボロの服とボロボロの顔をその男性に向けて言葉を放った。


 「……お前もどうせ俺の気持ちを理解してくれない……」

 「私は君の仲間だよ」


 その言葉は当時の俺の心に深く刺さった。初めて俺を仲間と言ってくれた人はその頃、神とも思えたぐらいだ。


 「そうだ、おじさんが提案をしよう!!」

 「……?」

 「キミは私の弟子になる。そして食べ物、飲み物、住む場所。衣食住を全て与えよう」

 「え?」

 「そうだ。私の弟子になればそれらを不自由なく与えることを約束しよう!!」


 それは見事に今俺の欲しかった提案だった。それにかなりいい条件だった。俺はもうしゃべる気力もない中おじいさんの胸に体がのしかかっていた。


 「さてお名前は?」

 「……レ……イ」

 「おぉ。レイと言う名前なのか!。良い名前だね。それではレイは今から私の家族だ!」

 

 そこから先は覚えていない。


 それからどれぐらい寝たのだろうか。俺はなぜかふかふかのベットの上に寝かされていた。周りを見ても豪華そうな絵画。豪華そうな照明。かなり豪華な家だった。


 俺が周りの光景に驚愕していると、ドアの奥からコンコンと言う音が聞こえた。その音は二回ほどなりドアがガシャリと開いた。


 そこにはメイドの恰好をした女性の姿が二人ほどいた。そのメイドたちは俺が目を覚ましていることに気づき大声である人物の名前をよんだ。


 「リヒー様!!。レイ様がお目覚めになりました!!」

 「レイ様可愛いです!」


 俺は二人のメイドにおびえて布団の中に潜ってしまった。今の俺じゃありえない行動だった。


 奥からもう一つ走ってこちらに向かってくるような足音が聞こえた。


 「レイ!レイ!。大丈夫か?。よく眠れたか?」


 俺はその人の顔に見覚えがあり、パッと思い出した。


 「おじさんありがとう……」

 「良いんだよ。レイはもう私の家族だ」


 一息ついた俺はその部屋からリヒーさんの案内する部屋まで行ったその時だった。玄関がドン!。と開き何人もの人が入ってきた……。

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