第36話 クレーリアの巫女についてとマパヤをみよう
[クレーリアの巫女]
千年に一度のポータルスポット乱立の際世界の調整の為、クレーリア様より異世界から導かれてこの地に立つ女性。任意で魔導エクレシア辞典の導きに従い、ポータルスポットを消滅もしくは有効化させる力を持つ。
「ほああ……ほんとうにかいてましゅね……」
まさかこんなところで私の存在意義が出てくるとは……今まで調べた事もなかったけど。
バージさんに言われて、床に魔導エクレシア辞典置いてクレーリアの巫女を調べる私。成る程世界の調整かぁって思っていたら上から声がしてきたの。
「成る程なぁ。まぁ、女性じゃなくて幼児だけどな」
魔導エクレシア辞典を覗きこんできたダンさんが余計なツッコミをして来たわ。あれ?ダンさんいつの間に?
「あら、可愛い女の子って言わなきゃ駄目よ。ダン」
「それに巫女であっても、ユイちゃんはユイちゃんよ」
振り向くとエレンさんとカエラさんも立っていたの。しかもカエラさん嬉しい言葉を言ってくれたわ。だって、今さら巫女って言われたってねぇ……
「ユイはもうそれだけで良いじゃないか!魔導具という素晴らしい物を取り出せるんだ!」
うん、ルインさんは通常運転ね。でもその後ろでいる王都からきた冒険者の3人は口を開けて驚いているけど……ついでに、未だ恭しい態度をとっている族長さんやヤナ族のみんなもいい加減普通に戻ってくれないかしらねぇ。
「いやぁ、こういう態度になるのも仕方がないでしょう。何せ言い伝えの存在がいるのですからねぇ。でもですね……」
ニコニコグラレスさんが魔導エクレシア辞典を見ていた私をヒョイッと抱えてヤナ族に向かって言ってくれたの。
「ユイさんはそんな態度をとって貰いたい訳ではないんです。それに普通に暮らしながら生きていきたい普通の子なんです。もし、感謝を抱いているなら是非普通に接してあげて下さい」
「そうですわね。ユイちゃんは良い子ですわ。でも特別待遇は嫌がるんですのよ?」
グラレスさんに抱かれている私の頭を撫でながら、シャルさんも私の気持ちを代弁してくれたの。それでようやく跪くのをやめてくれたヤナ族族長。シーラさんの支えがないとまだ立つのもきつそうなのよね。無理しなくて良いのに。
「まあ、ユイを囲もうなんて余計な事を考えるようだったら、俺らが相手になるからな」
そしてここでも私の為に威圧をしてくれるバージさん。勿論、赤獅子メンバーも一緒になってやってくれるものだから怖い怖い!すると、ヤナ族族長がいきなり笑い出したの。
「あっはっはっは!いや、笑ってしまって済まない。こんなに絆の強いチームから何かしようなんて考えた事もない!むしろユイ様とおっしゃるか。いや、言葉も普通が良いのだったな。ユイと呼ばせて貰っても良いか?」
「もちろんでしゅよ!」
「改めてユイをはじめ助けに来てくれた方々に部族代表として感謝する。今は感謝の宴も何も出来ないのが申し訳ないが、いずれこの恩は返そう。本当にありがとう」
族長さんが言い終わると私達に向けて頭を下げてくれたわ。勿論この場にいるヤナ族全員が同じ行動をしたの。
「あにょ!できりゅことしただけでしゅから!むしりょおねがいもありましゅし!」
慣れない事にあわあわし出した私の言葉に族長達が顔をあげたの。だって本来はこの為に来たのよね。
「お願いとは?我らでできる事だろうか?」
「はいでしゅ!まぱやのけをわけてくだしゃい!」
「毛?毛だけで良いのか?むしろ我らの特産カシュミールだって用意ができるのだが……?」
族長さん困惑してるわねぇ。でも今回の発端は手作りなのよね。で、アイラさんに届けたいんだもの。
「族長。カシュミールの取引は私の方がお願いしたいですな」
「ええ、私達はその件でお伺いしたのですもの」
カシュミールという言葉が出て来たら反応が早いグラレスさんとシャルさん。既に出来ているカシュミールもあるとの事でその件はシーラさんがグラレスさん達に案内するみたいね。
「ならばユイ。まずは我らが宝のマパヤを見てみるか?」
「みたいでしゅ!」
族長の提案に食い気味に乗る私。だってモフモフに会えるのよね!と喜んでいる私を嬉しそうにみるバージさんと赤獅子メンバーと冒険者の3人で見に行く事になったの。でも族長さんはコジュさんに止められて集会所で待機。カミンさんと実はあの場に居たカミンさんの旦那さんのキグさんに案内して貰う事に。
「マパヤは今日久しぶりに放牧しているはずです。村の外れまで移動しましょう」
キグさんの案内でゾロゾロ移動していると、バージさんに抱かれた私に王都から来た3人が近づいてきたの。
「なあ、クレーリア様の巫女さん。俺らからも感謝を言わせてくれないか?」
「ユイでしゅ!なまえでよんでくだしゃい」
「ははっ!済まなかった、ユイ。俺はBランクパーティ『グランテス』のリーダー、デジュって言うんだ。今回は本当に助かった。ユイ達は俺達にとっても命の恩人だ。ありがとうな」
デジュさんは優しい笑顔を向けて私に感謝してくれたのよ。この人がリーダーならこのパーティは信頼できるって感じたわね。すると、その横に居た2人も私に近づいてきたわ。
「俺からも言わせてくれ。俺はBランクパーティ『フェアリル』のリーダーでシグって言うんだ。ウチのメンバーも危ないところを助けて貰ったんだ。本当に助かった!ありがとう!」
「俺はBランクパーティ『ドゥガル』のリーダーでエドと言う。今回は死を覚悟していた。だが君達のおかげで助かったんだ。本当にありがとう。俺らで助けになる事なら今後も力になるから言ってくれ」
「こちらこしょありがとうでしゅ!」
シグさんもエドさんも感謝と共に私の頭を撫でてくれたの。ちょっと怖い感じの2人だったけど、誠実な人達なのね。まぁ1番怖い表情の人はバージさんだけど、最近は柔らかくなって来たしね。そのバージさんったら「俺の妹だ。気安く触るな」ってサッサと2人の手を掴んで離してたのよ。いやいや、これぐらい普通でしょうに。でもまぁ、2人共笑ってたから大丈夫かしらね。
「さて、今マパヤを呼びます。ちょっと待っていて下さいね」
そんなこんなで村の外れに着いた私達。村の外れの結界が途切れた先は、岩肌が多いなだらかな斜面になっていたの。ところどころに緑の草が生えていてマパヤ達が分散して草を食べていたわ。あ、魔物に襲われていた時は結界の中の広い待機場所にマパヤを集めていたんですって。
ピーーーーピピーーー……
キグさんの指笛が響くと集まり出すマパヤ達。
凄いわ!ちゃんと音を聞き分けるのね!
キグさんの周りに集まって来たマパヤは白の長い毛を持つ山羊だったわ。数が凄いの!何頭いるのかしら?って思ったわ。それに毛がモフモフって感じじゃなくてサラサラに近い感じだったの。一頭一頭すっごい手入れ行き届いているのよ。キグさんによると、
「マパヤは村の財産です。ヤナ族の男達が率先して世話をしますが、手の空いた女達や子供達も手入れをしていますから」
ってとっても誇らしげに言っていたのが印象的だったわね。
そして人に対して慣れているから触っても良いんですって!バージさんに降ろして貰って、私もトコトコと近づいて行っても逃げないのよ。触ってみて手触りに感動したわ!ツヤツヤのスベスベなの!この毛を使うなんて凄いわ!って思っていたらね、目の前にステータスボードがいきなり出て来たのよ。
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まさか工場製品までくるとはねぇ……しかもなんでこっちの事情を知っているのかしら?毎回不思議ね。気にしたらキリが無いけど。
でもこれでデラックス魔導テントのあの部屋が一つ埋まるのね!うわぁ、楽しみね!素材さえあればなんでも糸にできるなんて夢が膨らむわ!早速設置しなくちゃ!
「ユーイ?こら、今度は何やってんだ?ちゃんと説明しろ」
「う?なんでしゅか?」
こっそりステータスボードを操作していたら、バージさんに抱き上げられた私。流石バージさん、私の行動読んでるわ。みんながマパヤに注目している間にササッとやろうと思っていたのに。
隠し事は出来ないものね……
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