第三十三話 モヤモヤは止まらない

《草間町:桃太郎》




 地が揺れるほどの大きな爆音。


「つや……辰夜! 大丈夫か!!」


 栗太郎の顔が目の前にあった。


「う~ん、すごい音……」


 ティナさんもふらふらしていた。


「っくそ! 今のなんだ!!」


 弁慶さんは怒鳴った。

 いつの間にか鬼化していた。


「今の爆発音も東門の方じゃったのう」

「あぁ。ってことはますますやべぇかもしれねえ。東門の門兵だけじゃ相手できなかったってことになる」

「そのようじゃな」

「これは思ったよりやばい状況だぜ。今年の東門の警護は『牙翔一尖流』の師範と『尊國六弓師』の奴だったはずだ」

「ふむ。それらが居てなお鳴らさねばならなかったというわけじゃな」

「そういうことだ」


 心臓が高鳴る……。

 さっき栗太郎が言いかけた言葉の先が、

 僕の心でつぶやかれている。


「十中八九間違いないじゃろうな」

「あぁ。……


 一番聞きたくなかった言葉だ。


 僕にはまだ自覚がない。

 だけど、鬼の頭首なんだ。


 つまり、僕の同族が事件を起こしているということ。


 父さんが居たらこんなことになっていない。

 僕が、僕が何とかしなきゃいけない。

 そんな気がしていた。



 それだけじゃない。



 こんな時期に鬼が来ることがあるのかな。


 弁慶さんの言う通り、

 鬼が朔夜さんくらい戦うのが好きだとしても、

 別に今じゃなくてもいい。


 わざわざこの時期に来るとするならば。


 本当に頭が悪い鬼かもしれない。

 みんながいるのが分かってなお来るとても強い鬼かもしれない。


 もしくは、


 あの『般若』って人たちかもしれない。

 僕を探しに来たのかもしれない。


 僕のせいでこの街が……。


「おい辰夜!」

「っはい!!」

「何ぼーっとしてんだ? お前も聞いてなかったのか?」

「えっ?」

「一旦牛若の屋敷に戻んぞ。あそこは隠し通路もあるし安全だ」

「わ、わかりました!!」



 僕の胸のモヤモヤは止まらない。




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《草間町:朔夜》




「すっごいうるさかったな……」


 鐘の音が鳴った。

 前、牛若とカメムシが言ってたような気がする。


 鐘はピンチな時になる。


 なんかそんな感じだった気がする。


「ほぅほぅ。つまりは事件というわけだな?」


 あと少しで闘技大会が始まる。


 でもピンチって面白そう。


 万が一、闘技大会が始まったとしても

 英雄をしてきたから遅刻した! で行けるだろう。


「待ってろ事件! 朔夜が助けにいってやるー!」


 私はワクワクを抑えきれず音のなった方へ向かった。



 数分走った頃、

 ギャーギャーうるさいので振り向くと

 進んでる方向と逆から多くの人が走ってきた。


「あれ?」


 最初に爆音なったのこっちじゃなかったっけ?

 少し速度を落として何があったかを聞いてみる。


「どうしたんだ?」

「どうしたんだってアンタも逃げてるんじゃないのかい?」

「何か出たのか?」

「小鬼だよ! でも刃が全然通らない小鬼だ!!」


 それって時貞が言ってた『剛鬼』って奴か?


「どこに出たんだ!?」

「東門の方からどんどん入ってきてるよ!!」

「東門ってこっちじゃないのか!」

「ふざけてる場合じゃないだろう! そうだったらこっちに逃げてきてないさ!」


 確かにぃ。


 礼を伝えて私は逆走をする。

 つまりは人が逃げてきてる方の逆に行けばいいのだ。

 なんて頭がいいんだ私は!


 さまよったせいで既に乗り遅れている。

 迷ったんじゃない。さまよったんだ。

 『さ』があるかないかでウンと『差』がある。


「今の面白いな。今度、桃に言ってみよう」




 私は鬼化をして一気に加速をした。


 


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《義経の屋敷近く》




「すっごい音だねぇ……。やっぱ本場のミコトグニの花火は迫力がすごいや」

「……今のは花火の音でしょうか」


 ロミオとスノウは卵を冷やしていたが、

 もうじき始まる闘技大会の為に会場に向かっていた。

 

 二人もまた、鐘の音と爆音を聞いている。


「どういうことだい?」

「最初の鐘の音がなり、町の皆さんは困惑していました。初めは闘技大会が始まる合図だと思いましたが、それを見て違うのかと思いました」

「まぁ言われてみれば……。今はみんな青ざめた顔をしているね」


 そう言ってロミオは周りを見渡す。


 泣き出した子供を抱えて走る者。

 険しい顔をして音が鳴った方へ走る者。

 混乱して周りを見ている者。


 多種多様あるが、

 ロミオは共通して緊迫したものを感じていた


「あくまで予想ですが最初の鐘は『非常事態』を知らせるモノ。そして爆音はその事件で発生したものと考えます」

「なるほど。辻褄は合うね。どうする?」

「そうですね……」


 スノウは顎に手を当てて考える。


「私たちの仕事と本件は関係ありません。無駄な働きをして何かあれば責任問題になりますので」

「……そうだね」


 ロミオは少し不服そうな顔をする。


「ですから、本件は私の独断で行います。今日から私の趣味は『人助け』です」


 口元に人差し指を添えてスノウは微笑む。


「それでこそスノウだよ!!」

「まぁ、アリスならこれで何かあっても怒らないでしょうがね」

「だね。文句を言ってくるとしたらシンデレラ様だろうね」

「まぁそれもこれも簡単なことです……解決すれば問題ありません」


 ロミオはにこっと笑ってスノウに応えた。


「何が起きて、誰が相手なのかは存じ上げません。が、救助活動も視野に入れるならば固まって動くのは得策じゃありませんね」

「心配しないで。僕だって司祭ビショップの一人なんだから!」

「信じてますよ。ロミオさん」





 そう言って二人は別々の方へと進んでいった。





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《草間町》




「ったく。なんなのよ!」


 大きな声を上げるペル。


 ペルは周りでうろたえる人を捕まえて尋ねた。


「さっきの鐘といい、今の爆音といい、闘技大会がでかい祭りなのはわかるけどちょっと度が過ぎない!?」

「い、異国の人! 逃げなさい今すぐ!」

「はぁ? なんで逃げるのよ」

「鐘の音は重大な事件が発生したときに街中に知らせるためのものだ。そしてその後の爆発音。おそらく何かが東門で起きている」

「何かって何よ?」

「わからないさ。だけどね、何かがあってもいいように必ず闘技大会の時は大会の優勝経験者が二名以上警護につく。その人たちが居ても鐘は鳴った。つまりはそれ以上にやばい何かが起きてるってことなんだよ」

「ふぅん、面白そうじゃない。」


 少し悪い顔で唇を下で湿らせるペル。


「東門ってどっち?」

「あっちの方さ。だからこっちに逃げた方が良い!」

「わかった。ありがと!」

「君! そっちじゃないって!!」


 街の者の静止する声を振りほどくかのように

 ペルは速度を上げる。


 丁字路についたペルは左へと曲がる。

 曲がってすぐのところに人だかりがあった。


「ちょっと、邪魔よ! 通して!」

「異国の子じゃないの。この国の子じゃないから知らないと思うけど鐘が鳴ったってことは非常事態なのよ。今は東門に近づいちゃだめよ!」

「知ってるわ。その上で私は東門に行ってるの。ちゃちゃっと解決してきてあげるから感謝しなさい?」

「だめよ。貴方も強いかもしれないけれど噂じゃ貴方、お客さんなんでしょ?」

「人を助けるのに客もへったくれもないわ。通して」

「ちょっと待ちなさい!」


 人ごみを押しのけてペルは先を急いだ。

 するとまた丁字路がある。


「この街はT字路ばかりじゃない。まったく……」


 そういってペルは


「ふふっ。待ってなさい! あっという間に解決して朔夜にアッと言わせるんだから!」




 ペルは嬉しそうに笑いながら、

 東門とは反対の方角へと走っていったのであった。




──────────────────────



読んでいただけてありがとうございます(˘•̥⧿•̥˘ )



ついに各動向が見えましたね!

大体が別行動をしている模様で。


ここからがメインキャラのバトルパート!

拙い文でどれだけ伝えられるか甚だ不安ですが

是非楽しんでいってください!


てなわけで!

また次話にてお会いいたしましょう!!



ありがとうございました!!!





 




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