第十三話 朔夜vsペル

《天来港から少し離れた平野:桃太郎》





 同時に駆けだした二人の剣閃は

 幾度も音を立てて切り結ぶ。


 互いに相手の出方を見るような攻防で察した。


 どちらも剣術としての技量は等しく、

 似たようなタイプであることを。


 受けるよりも回避することを基本とし、

 大技よりも手数を重ねるタイプである。


 だが、あくまでそれは通常における剣技だけの話。

 朔夜さんには『妙夜月閃流みょうやげっせんりゅう』の技がある。


「そら、ペースを上げるぞ。弐の型 切更斬きさらぎ!」


 一太刀、二太刀、三つ四つ五つ。


 朔夜さんの剣閃は振るうほどに

 鋭く速度を増してゆく。


 応対するペルさんも徐々に増してゆく速さに、

 避けるだけではかわしきれない。


 剣でのいなしを使い防戦一方となっていた。

 ……それでも、重なる攻撃は防御を崩しえない。


 ペルさんは仕切り直すがごとく、

 大きく飛んで後退し引こうとした。

 それを読んだ朔夜さんはつぶやく。


一刀八振いっとうはちふり八具仙はちぐせん』。その神髄を見せてやる。……不測之太刀はからずのたち


 ペルさんの回避は、

 はたから見てもうまくいったはずだった。


 朔夜さんの間合いを紙一重で避け、

 最低限の動きで引く。


 だが、ペルさんの腹部には一筋の剣閃が見舞われ

 たらりと血が流れた。


 切れ目が入った服の隙間に手を入れ、

 流れる血をぬぐうペルさん。


 見たところ重症ではないようだ。


「おかしいわね。見誤ったつもりはないんだけれど」

「さぁな。だが結果は結果だ」

「……その剣に仕掛けがあるのね?」


 ペルさんはくすりと笑い朔夜さんに仕掛ける。

 それは何の変哲もなく、ただ剣を振るうだけ。

 苦も無く朔夜さんは避ける。


 だが、朔夜さんの右肩付近には切り傷が走った。


「アンタと同じことをしたのよ」


 そう言ったペルさんは、

 自身の前に剣を立てて見せる。

 水で作られた刀身が伸びたり縮んだりする様を。


 そうだ。


 朔夜さんの八具仙も

 刀身の長さを自由に変えることが出来る。


 測ることが出来ぬゆえ、不測之太刀はからずのたち


「真似するなよな」

「別にアンタの専売特許ってわけじゃないのよ」


 そう言ってペルさんは間合いの外から剣を振るう。


 振った剣閃はそのまま水の刃を生み出し、

 朔夜さんめがけて飛んでいく。


「はぁ。嫌だな本当に……。飛刃之太刀ひじんのたち!」


 対する朔夜さんも剣を振るい飛ぶ刃を生み出す。


 宙で入り乱れる刃たちは、

 互いが互いを相殺し消えてゆく。


「真似しないでくれるかしら」

「ほんとにキモイ。お前と一緒ヤダ!!」


 だけど、言葉とは裏腹に二人は笑っていた。

 まるで、新しい何かをみつけて

 ワクワクするかのように。


「さて、小手調べはこの辺にしてそろそろ始めようか」

「こっちの台詞よ朔夜!! 噴射する水撃ハイドロジェット!!」


 ペルさんは右手に剣を構えたまま左手を前に出す。


 その左手から勢いよく出る水は、

 朔夜さんめがけて放たれる。


 飛んで、くぐって、あるいは立ち止まって。

 放たれ続ける水は地面をえぐり、岩を粉砕するが

 朔夜さんの身体をとらえることは出来ていない。


「ちょこまかとネズミの様ね。滑稽だわ」

「ならネズミも仕留めれないお前はマジで国に帰った方が良いぞ」

「減らず口もここまでよ。漂い爆ぜる泡バブルボム!」


 剣を腰に戻し、空いた右手で

 いくつもの泡を生み出す。


 それは前じっちゃんが買ってきてくれた

 シャボン玉とは違って大きな泡。

 人の大きさほどの大きな泡だ。

 それがいくつも漂い始める。


「こんなものに足止めされると思ってるのか」


 そう言って、噴射する水撃ハイドロジェットを躱しつつ

 朔夜さんは進路を阻む泡を八具仙はちぐせんでたたき割る。


 途端、大きな泡は爆発し

 離れた僕たちにも届くほどの爆風を生み出す。


「終わりね」


 爆発の中心に噴射する水撃ハイドロジェットを撃ちこみ 

 完全に追撃を決めペルさんはやがて手を止める。


「多分死んじゃいないわ」


 そう言ってペルさんは戦いを解こうとした。

 だが、ティナさんがペルさんに伝える。


「ペルちゃん、まだ終わっていないわよ!!」


 その時、爆発で作られていた土埃が急にはれた。


 次の瞬間には剣と剣がぶつかり合う

 大きな音が聞こえた。


 朔夜さんは一瞬にして

 ペルさんの元へと切りかかったようだ。

 鬼化をしている。瞬脚を使ったんだろう。


「へぇ。アンタ、今まで手を抜いてたのね」

「お前がどれほどの者かを見るために最初から本気だと不都合だからな」

「言ってくれるわね!!」


 ペルさんの足元に水がどんどん湧き出てくる。


「アンタ達、この馬鹿を喰らいつくしなさい! 這い寄る水蛇アクアサーペント!」


 足元に湧き出た水は、数匹の大きな蛇へと形を成し

 それらは朔夜さんを襲う。


 瞬脚をその場を離れる朔夜さん。

 だが、蛇たちは朔夜さんを包囲した。

 蛇が大きすぎて瞬脚を使うには狭すぎるみたいだ。


 襲い来る蛇に向けて構える朔夜さんに、

 ペルさんは叫ぶ。


「無駄よ! その子たちは! アンタがどれだけ切りつけようと飲まれて溺れるだけよ」

「ただの水。教えてくれてありがとな」


 そう言って、朔夜さんは剣を構えてつぶやく。


 水の蛇たちは四方から

 朔夜さんに襲い掛かり飲み込まんとする。


封象之太刀ふうしょうのたち……。肆の型『渦斬うずき』!」


 朔夜さんを中心につむじ風のような剣閃が広がる。

 蛇の頭部は切り刻まれ、それは胴体にもおよぶ。


 霧散する蛇は雨となり、

 朔夜さんの周りに降り注いだ。


「……それもアンタのその剣の力ってわけね。爆風を喰らっておいて衣服すら乱れてないのも納得いったわ」

封象之太刀ふうしょうのたちは個体を切ることはできないが、それ以外なら切ることが出来る。お前のしょっぱい爆風も察しの通り両断したまでだ」

「オーケイ、わかったわ。認めてあげる。アンタは強いわ」


 そうしてペルさんは自身の周りに

 いくつもの水柱を発生させる。


「アンタを舐めてた私が悪いわ! 最大限の力をもって叩き潰してあげる!!」

「あぁ、私もお前を認めよう」


 二人の何かが膨れ上がる。

 これがお互い最後の技になりそうな雰囲気だ。


「流動たる水たちよ。わが命にて飛翔せよ。その咆哮を地平に響かせ、その威風、水平を超えすべての者に戦慄を与えよ!」

妙夜月閃流みょうやげっせんりゅう 奥義……朧月おぼろづき


 僕たちはみな、言葉を飲み込み見守る。


 数々の大きな水柱は空に落ちてゆく。

 それらは螺旋を描き一つとなり大きな竜を模した。


激昂する水竜アクア・ドラグーン!!」


 大空の支配者のように羽ばたく水竜は

 けたたましい咆哮を上げ、空を舞い、

 やがて朔夜さんの元へ一直線に落ちてゆく。


 それは、離れてみていた僕たちだから

 と言える速さ。


 朔夜さんから見ると何があったか

 わからない速度だと思う。


 この世の音とは思えないほどの轟音を放ち、

 残ったのは大きなクレーター。


 朔夜さんの姿形は残っているはずもない。


「そんな……」


 僕は言葉を発して、

 自分が言葉を発したことに気付いた。


 朔夜さんならどうにかできると思っていた。


 でも、そこに朔夜さんの姿はない。

 消えてしまった。生きているはずがない。


「手加減は出来なかったわ。光栄に思いなさい」


 ペルさんがこっちにあるいてくる。


「ふむ……。勝負あったの」

「まったく、ペルちゃんったら……」


 栗太郎とティナさんがつぶやく。



 その途端、ペルさんは血しぶきをあげて倒れた。




──────────────────────



読んでいただけてありがとうございます(˘•̥⧿•̥˘ )



一刀八振『八具仙はちぐせん』!!

いかにも中学生のころ誰もが考えたような武器です!

個人的にめちゃくちゃ好き!!!!


朔夜さんは基本的に

八具仙×妙夜月閃十二型 で戦います。

まぁ、奥義やらなんやらあるのですがね。。。


私の文章力と語彙力じゃ

稚拙なバトルパートになっちゃいますが

ワクワク読んでくれると幸いです!


てなわけで!

また次話にてお会いいたしましょう!


ありがとうございました!!



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