44.デートのようなもの

深海とのやり取りから三日後――


「へへ……パーティファボ200万……」


ミカゲは増加したパーティファボ情報を見ながら、思わずにやける。

レベル3によるA級撃破は少なくはない影響を与えていた。

それ以前と比較し、パーティファボはなんと倍増していた。


「待たせたな」


「……!」


ミカゲは声の方を向く。


「っっっ~~!」


そして絶句する。



昨日――


「ミカゲよ、明日、休日オフだよな?」


「あ、はい」


ミカゲは揺から電話があり、話していた。


「何か予定はあるか?」


「え、まぁ、明日は完全オフにしようと思ってたので何もないです」


「なるほど……完全オフか……じゃあ、悪いな……」


(……? 何かのお誘いかな……揺さんには世話になってるしな……)


「なにか入用でしょうか? 私であれば協力しますが」


「本当か!? であれば、すまんが、ちょっと付き合ってくれないか?」


電話越しの声が明るくなる。


「……? 何にでしょう?」


「スライム展」


「スラ……イム展?」


「あぁ……今、ちょうど池袋でやってるんだ」


「そうなんですね……」


(揺さん、そういうの行くんだな……しかし、イメージ的には一人でも行けちゃうタイプに思えるが……)


「普段なら一人で行くのだが、実はな……これがあって……」


ミカゲの前に画像がポップする。


それは"カップル限定! モチスライムのフィギュアプレゼント!"と書かれたチラシであった。


(なるほど……)


「いいですよ」


「おー、恩に着る!」


「いえいえ」


「あ、一応、そこそこの有名人になってきているから軽く変装して来いよ」


「え゛!? そ、そうですね。わかりました」



そうして今日を迎え、今に至る。


「待たせたな」


「……!」


ミカゲは声の方を向く。


「っっっ~~!」


ミカゲは思わず、絶句する。


「……」


そこには、白の七分袖くらいのヒラヒラしたカットソーに黒のシックなロングスカート。

髪にウェーブをかけた女性がいた。


「あの…………ひょっとして揺さんですか?」


「他に誰がいるんだよ」


「……そうですよね、白衣脱ぐことあるんだなって……」


「君……やっぱりちょっと私のこと馬鹿にしてないか?」


揺は眉を逆八の字にしている。


「いえいえ、そんなことは……でもいつもとちょっと雰囲気違うなって……」


「変装しろって言っただろ?」


「えーと……そうですね」


(それは変装というか……)


いつもと違う揺の雰囲気にミカゲは少しどぎまぎしてしまう。


「なんだ? そんなに変か……?」


「……変というか、その……いつもより綺麗で……いや、いつものはいつものでいいのですが……」


「え゛!? そ、そうか……? ほ、褒め言葉として受け取っておこう……」


綺麗は褒め言葉以外の何ものでもないのだが……


ちなみにミカゲは帽子と伊達メガネをしていた。


その後、二人は目的のスライム展へと向かった。


道中はなぜか少し会話があまりなかったが、展示会場に行くと、揺はわりと元に戻り、様々なスライムを興味深げに眺めていた。


そして……


「あ、あれですね」

「お、本当だ」


目線の先には"カップル限定! モチスライムのフィギュアプレゼント"の旗がある。

どうやらそこが配布会場のようだ。


「すみません! モチスライムのフィギュアください!」


揺はそう言う。


「はい、承知しました。一応、カップルの証明をお願いしておりまして……」


「か、カップルの証明!?」


「はい、まぁ、簡単なもので、お二人で手を繋いでいただくだけなんですけど……」


「て、手を……!?」


揺はちょっと焦っている。


「ほい」


「っ……!!」


「これでいいですか?」


「はい、ありがとうございました。それでは、こちらモチスライムのフィギュアになります」


「……」


「お客様……?」


「あ、すみません、ありがとうございます……」


揺は少しぽけーっとしていたが、無事、目的としていたモチスライムのフィギュアを受け取る。



帰途――


「今日はありがとうな」


「いえいえ、こちらこそ。スライムについて色々と学びもありましたし」


「そう言ってくれると助かる」


と……小さな公園の前に差し掛かる。


「うりゃぁああ、くらえ! 和音わおん! 太陽並の高熱!!」


「っ……!」


ミカゲは思わず足を止める。


「なにおー! 重熾じゅうし! ブラックホール並の重さぁああ!!」


数名の小学生くらいの子供達がちゃんばらをしている。


「……」


「ふふ、君が攻略者でいられるのも長くはないかもな?」


「え゛!?」


「冗談だ」


「やめてくださいよ……まだまだ譲る気はありませんよ、貴方の隣りは……」


「え……」


と……


「おらぁああああ! 新刀、透幻 とうげんも忘れるなよー!」


ミカゲは小学生達に突撃していく。


「うわぁああああ、なんか変なおっさん来たぁああああ!」


「って、この人……」


「「「「…………あびゃぁああ゛ああああ゛ああ!!」」」」


「本物だぁああああ!!」


「ミカゲーーー! サインくれぇええええ!」


ミカゲは子供達にサイン攻めにあうのであった。



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【あとがき】

 本作の書籍版、いよいよ明日(5/2)発売です。


『未知と宝物ざっくざくの迷宮大配信!~ハズレスキルすらない凡人、見る人から見れば普通に非凡でした~』


 有り難いことに下記の記事で何名かご購入報告もしてくれています。

 迷われている方も是非、よろしくお願いします!

 もちろんサイレント購入も歓迎です!

 https://kakuyomu.jp/users/kojinayuru/news/16818093075820568869

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