悪夢狂双曲ーナイトメア・コンチェルトー

花山院 青藍

第1章 宵

第1話 運命

この世は理不尽なもので溢れている。

代表的な例は『才能』だ。

自分で言うのもなんだが俺は非常に優れた人間である。

成績は学年1位が当たり前。サッカー部のエースとして活躍。

芸術的な才能ももちろんある。美術ではコンテストで何度か

優勝したことがあるし、ピアノ業界でも名が知れている程度には

コンクールで賞をいただいている。

そんな俺は存在価値の塊だろう。


もちろん、そうでない人もいる。何をやっても人並みばかり。

そんな人たちは生きていて何になるのか?

他の人よりも優れている点が1つもなければ、それは

存在してもしなくても変わらない意味のないものだ。

こう考えることは自然であって、別に俺が

極悪非道な人間であるというわけではない。

この世とは『そういうもの』なのだ。


周りとの関係も遠すぎず近づきすぎず。

絶妙な距離を見極めることによって

さらに自分の価値を高めることができる。

自分にとっての利益だけを考えて行動している俺にとって

無駄な友情や恋情などは非合理的なもので

邪魔でしかなかった。


毎日同じような日々が繰り返される。

それを人は『つまらない』と総括するが

俺にとってはそれが1番嬉しいことであった。

今日も昨日と同じように時が進む。つまり同じ手でいける。

俺の頭の中には何パターンもの選択肢と結果が書かれている。

当てはまる型を見つければそれを使えばいいだけ。

なんて楽な作業なのだろうか。


「おっはよ〜!!」


教室に元気な挨拶が響いた。

聞いたことのない声。出会ったことのない人物。

校則を違反するかどうかギリギリを攻めた髪色の彼は

ひときわ目立っていた。

遠くから見ても誰かすぐにわかるタイプの人間だ。

教室がざわつく。まあここは俺の出番だな。


「はじめまして。俺はこのクラスの委員長の月城 蓮。

 もしかして転校生?」


「うん!そうだよ〜!これからよろしく!!」


やけにテンション高いなコイツ……。

その後、担任から説明があった。

彼の名前は北条 蒼唯。様々な事情があり転校を余儀なくされたらしい。


「なんか俺この学校の雰囲気好きだな〜!!

 それにさ、こんな風に初日に仲良くなっちゃうとか運命かもね!」


運命か……。そんなものあるわけないのに。

そんなことを思いながら、彼と学校を回っていた。

委員長の仕事だ。


このときは当たり前だがこんなことは予想できなかった。

これからも日常が続くと思っていた。

これが、俺の人生を大きく変える始まりだったなんて。





第2話「豹変」へ続く










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