ギャンブラーが多すぎる

 ウェストレイクはもっと読まれてもいい。と思っていたら、こんなのが出ていました。新潮文庫から海外名作発掘として出ていました。ちなみに前回の『スクイズ・プレイ』も同じプロジェクトのもの。ポール・オースターは新潮文庫のイメージだから違和感はなかったのですが、まさかあの(PTAが眉をひそめそうな)ウェストレイクが新潮文庫とは。



 ???シンキングタイム???


 ピンときました。このタイトルは『料理長が多すぎる』がわかればわかる。前シリーズで取り上げなかったっけ。ほら、ノックスじゃなかった、誰だっけ、作者、そう、ネロ・ウルフ! いや、そっちは探偵の名前か。アーチー・グッドウィンは助手だし、褐色砂岩のアパート、蘭、グルメ、毒蛇……駄目だ、出てこない(後日、会社で「そうかレックス・スタウトだ」とふいに思い出した。いや、仕事中は仕事のことだけ考えろ)。

 すぎるといえば、「九マイルは遠すぎる」は前シリーズでやったな。大はずれ回。

 待てよ、このタイトル、もしかして『料理長が多すぎる』のオマージュというかパロディというか、下敷きにしているのではなかろうか。訳者や出版社が『料理長が多すぎる』にあやかったタイトルをつけているのだとすれば、どんなに頭を悩ませたとて無駄な足掻き。

 ほら、たまにあるでしょ。原題と全然違うタイトルが日本語版につけられること。映画とかでもそうだけど。

 そうか、ウェストレイクのことだから、『料理長が多すぎる』をパロディにしたことも考えられるのか。いや、さすがにそれは考えすぎか……

 仕方ない。原題どうこうは気にせず、訳すしかない。

 まず「ギャンブラー」。うん、カタカナのままでも意味が通るほどお馴染み。スペルはgyanbblerか。「多すぎる」はtoo manyか。



 というわけで

【Too Many Gyanbblers】

 で、どうでしょう?



 正解は

【Somebody Owes Me Money】

 でした。


 ほーらね、言ったでしょ?

 原題と訳題が違うパターンだよ、これ。負け惜しみでないことを証明するため、グーグル翻訳を試してみます。

 まず「ギャンブラーが多すぎる」と日本語で打ち込んでポチッとな。出ました。“too many gamblers”だ。ほら、スペル以外は完璧じゃないか。やるな自分、ダテに英訳企画やってないぞ。

 さ、この調子で英語を日本語にするべ。【Somebody Owes Me Money】は「誰かが私にお金を賭けている」でしょ? はい、翻訳ソフトさん、どうぞ。あ、違った。「だから誰かが私にお金を借りている」だって?



 ★★★作品情報★★★


 ギャンブラーが多すぎる(ドナルド・E・ウェストレイク著/木村二郎訳/新潮文庫)


 泥棒ドートマンダーに悪党パーカー。ウェストレイクは面白い。お行儀のよくない感じとそれでいて洒落た感覚が両方あって素敵。

 KADOKAWAと関係の深いカクヨムで持ち上げるのもどうかと思いますけど、新潮文庫、いい仕事しているではないか。ありがとう。あんまり海外ものに強いイメージなかったけど(すまん、創元と早川が強すぎんダヨ)。

 ここで海外名作発掘企画のラインナップを紹介するのはさすがに避けます。知りたい人は公式サイトでも見てください。



 !!!単語!!!


 gambler ギャンブラー 賭博師 博打うち

 gamble ギャンブルをする 賭け事

 owe を借りている のおかげをこうむる 借金がある

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