第17話 焼肉
大輝と一緒に待ち合わせのお店へ向かった。
俺は落ち着かずそわそわしてしまう。
なぁ、直樹?
今日は俺も一緒だし、そんなに緊張すんな。
こっちまで緊張しちゃうだろーが。
すまん…
いくら年下とはいえほぼ初対面だから落ち着かなくて。
人見知りの直樹なら無理もないか。
緊張しちゃうよな?
俺なんて頭の中は焼肉のことでいっぱいだ。
楽しみすぎる。
1日でこんな贅沢いいんだろうか?ってくらい
美味いものづくし。
焼肉と言ったら白米と冷麺♪
俺は両方食うぞー!
大輝はまだ食べてもいないのに楽しそうだ。
コイツと飯に行くと普段より美味しく感じるのは
楽しそうに食べるからかもな…
そんなことを思っているうちに店の前に着いてしまった。
お!
ちょうど10分前、完璧だ。
大輝は満足そうに言う。
すぐに入れるように、俺中に入って様子見てくるわ。
直樹はそこで待ってて。
そういうと大輝は店の中に入っていった。
一人になった途端、頭が真っ白になってしまった。
ダメだ、緊張しちまう。
どうしよう、どうしよう。
用もないのに何度もスマホを見てしまう。
すると横から人の気配を感じた。
「直樹さん?」
「あっ、はい!直樹です。」
「フフッ。すごく良い返事ですね(笑)」
顔が熱くなるのが自分でわかった。
俺は多分今顔から耳まで赤くなっている。
「ご友人は?」
「あー!大輝です。あいつはすぐ席に座れるように中で待ってるんで。店に入りましょう!」
「はい。」
光くんはニコニコして俺の後ろをついてくる。
中に入ると大輝が待っていた。
「おー。光君ですね。先ほどはどうも。席用意してもらったんで行きましょう。贅沢に個室ですよ。」
そういうと、俺と光君は大輝の後ろをついていく。
思ってたより単価高そうな店だな…。
客層も年齢高めなのか、店内は落ち着いた雰囲気だ。
席につくとすぐに店員が入ってきた。
「いらっしゃいませ。お荷物は箱をご利用ください。箱の中に布が入っておりますのでお荷物の上にかけてください。」
「先にお飲み物をお伺いします。」
大輝が率先して動く。
「生中2つお願いします。あっ光君は何がいい?
お酒は無理して付き合わなくて大丈夫。好きなもの言って。」
「ありがとうございます。じゃあ僕はウーロン茶を。」
「かしこまりました。」
個室に3人きりになる。
俺は何を喋ればいいのかわからず水の入ったコップを撫でる。
大輝が口を開いた。
「光君は年いくつ?」
「僕は21です。」
「若っ!!!」
思わず俺も大輝も声を揃えて言ってしまった。
「お二人は同級生ですか?」
「おぅ。俺と直樹は同級生で45歳。完全なる中年親父。」
「そんなことないです。おじさんぽく見えませんよ?親父ってことはお子さんいらっしゃるんですね。」
「俺も直樹も子どもが一人。な!直樹。」
「はいっ。」
「はいっ!っておいっ(笑)どんだけ緊張してんだよ。」
「ごめん。だってさ、職場にすらこんな若い子いないから何を話していいか分かんねぇ。」
「直樹さん、素直な方ですね。大輝さんも気さくな方で安心しました。正直よく知らない方と会うって、しかも相手は二人で僕は一人。冷静に考えたらちょっと危険ですよね(笑)」
「確かに!」
またしても大輝と同じタイミングでツッコんだ。
「お二人はとても仲良しなんですね。素敵です。」
喋っている間に飲み物がきた。
「まずは乾杯だな。珍しい出会い方にカンパイ!」
「カンパイっ」
三人グラスを合わせて笑った。
ビールを飲みながら、人違いのあの日、光君が待ち合わせていた本物のハチワレという人物が何者なのか気になっていたことを急に思い出した。
意を決して聞くことにした。
「あの…光君、どうしても聞きたいことがあって。人違いの日、ハチワレさんですか?って話しかけられて。ハチワレさんて一体何者なんでしょうか?あれからずっと気になってて。」
「そうですよね!それは気になりますよね。
簡単に説明しますと猫友です。
僕もその方も猫を飼っていて、お互いインスタきっかけで。
その方はハチワレの猫を飼ってらして。
あまりに猫トークで話が合うので実際会いましょうってなって。
人違いしたあの日が初めてお会いする日だったんです。
その方が言う特徴のイメージが直樹さんで。
会社員、スーツ、眼鏡、細見。
それで話しかけたんです。」
「なるほど…。俺ハチワレって言葉が何なのかすらわからなくて。猫ですか。そのハチワレさんは実際お会いして俺に似てました?」
「それが全然。やっぱり文字と実物はギャップが出ますね。僕の思う細見ではなかったです(笑)」
「ハハハハッ」
俺も大輝も笑った。
「それにしても光君すごいね。今日の俺等といい、ハチワレさんといい面識のない奴と会うの慣れてるの?」
大輝が聞いた。
「いえ!ハチワレさんともSNSで1年以上の交流があってからの初顔合わせでした。
直樹さん達は例外ですね。
僕も自分の行動力に僕自身がちょっとビックリしてます。
直樹さんとは人違いで一度お会いしたときの優しい笑顔が印象的で。感じの良い人だなって。
大輝さんは少年のような明るい雰囲気もあって直感で大丈夫そうって思えたので連絡先交換しました。」
「なるほど。俺が言える立場じゃないかもしれんが、中には本当に悪い奴らもいるから気をつけないとダメだぞ。」
大輝は真剣な顔で光君に言った。
「ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。」
喋っている間にコースで頼んだお肉が運ばれてきた。
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