大人

林檎のような口紅を引いて

金木犀の香りの香水を漂わせ

流し目で不思議な雰囲気を醸し出す

ちょっぴり苦いコーヒーを啜って

背筋を伸ばすだけで

私は美しく居られる

人目なんて気にしてられない

昔誰かが言ってたっけ

「美しきものは、永遠なる喜びである」

美しいは大人になる

そういうことだと私は思っているのだ

一夜で華が散った時

それは純潔を捨てることであり

大人ぶる唯の子供である


何事も順序が大切である

美しくなるまでは純粋でいなければならない

それしか男は好まない

穢れたものはこの世にいらぬ

唯一人己一人を愛する者がいてこそ

初めて華として散ることができるのだ


大人とは狡賢い生き物であり

反面子供よりも己に純粋である

風景を見て素直に美しいと思えるだろうか

他人を思いやることができるだろうか

子供なんてのは感性がまだ未成熟であり

風景を見て美しいなんて思わない

いや例外にはいるのだろうが

熟れていない果実なんて美味くなかろう

熟れて熟成して完全な状態こそ

最も美しく食べれる頃合なのだ


大人とは難しいものよ

周りを常に警戒しなければならない

それなら私はもう少しだけ

子供のままでもよいのではないかと

ひっそり思い

胸の内に閉じ込めるのであった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る