落ちこぼれの俺、実はフォロワー数人1000万超えの世界唯一のダンジョン歌手

Edy

落ちこぼれ、性癖にぶっ刺さる

 20☓☓年のある日、突如として世界中に“ダンジョン”なるものが出現した。“異変”と呼ばれた出来事中からは“モンスター”と呼ばれる化物が大量に現れ人類は虐殺の道をたどることになる。世界は一瞬にして変わり、人口は半分にまで減少した。


 しかし、人類もただ殺されるだけではなかった。それと同時に“ギフト”と呼ばれる超能力を得た。


 …………ただし一部の人間のみ。


 それでも母数が多かった為に彼らは地球を護るために立ち上がった。


 モンスターと人類の存亡をかけた戦争は聖戦と呼ばれ、最終的に人類は勝利した。そして平和を取り戻す。


 



 と、言うのは何十年も前の話で平和は速攻で壊れました。なぜでしょう? 簡単な話です。

 

 “未知”の力が目の前のダンジョンにあります。使いたがるでしょう。国同士で衝突します。国内でもデモやテロが起こります。ましてやギフトを手に入れた人達が全員善人とは限りません。力の限り暴れ回る者もいました。


 結果的にこの星の人口は1億人強にまで減りました。


 一部の国は崩壊し国境もめちゃくちゃ。ルールも破綻し世紀末へと変わっていきました。人類は滅亡の一歩を踏み出します。





 けれどね、人間の本能なのか、世紀末に近い感じになると多くの人が人口を増やそうと躍起になるんだよ。踏み出した一歩を後ろ歩きするように、幸いダンジョンのおかげで資源は豊富沢山あったから、新たなルール、国、国境が時間をかけて不安定に作り上げられていくんだ。数世代もかけてね。


 ダンジョンが現れる前から色んな物が変わったよ。


 地上には多種多様な生物が住み始めた。獣人、魔物、妖精、unknown。


 魔力はもはや生活の一部。


 一人一つは武器を持つ。


 …………ほんと……変わったよ 


 










「すまない……昔の事を思い出してね……あの頃も楽しい思い出が沢山あった。辛いことも」



 武道館。昔はそう呼ばれていた場所で一人の男がそう話す。舞台の上で涙を流す。


 

 彼は不老不死のギフトを貰った異変前の唯一の生き証人。誰よりも真実を知っている彼の言葉には皆耳を傾けた。



 それを聞いているのは俺たちだ。何世代にも紡がれたこの世界は平気で人を殺す化け物たちがわんさかいる。特にダンジョンに。


 それでもダンジョンに足を踏み入れる。未知の世界。未知の力。未知の冒険。聖戦? 世紀末? それは聞いた過去。俺達は今の夢を見ている。昔の漫画で例えるなら、


 世はまさに大冒険時代!


 今日も俺はダンジョンに足を踏み入れる。




 ダンジョンは不思議だ。地下に潜っているというのに上を見上げたら空が見える。草原も、果物も生えている。地上ではそんな事ありえないのに。


 眼の前にある傾いた古びた石塔。ボロボロで今にも崩れそうなのに一向に倒れる気配もない。明らかに爆発した跡があるが焦げているだけで見た目よりもとてもとても頑丈だな。転がっている石をいくつか拾っておこう。



 中に入るとそこは風化して文字が潰れた石板、どう開けるかもわからない巨大な扉。無理矢理こじ開けようとして罠に引っかかったであろう矢の刺さった白骨化した死体。奥には道があるが見ただけでわかる罠だらけ。大量の死体が転がっている。新し目の死体には動いている探知機があった。



「魔力探知機が故障したって事は刺さっている矢は魔力封じか」


 一通り何かあるか確認した後、イヤホンを耳に挟んでズボン左についている機械のボタンを押す。ニヤッと笑いクラウチングスタートのポーズを取る。







《て! テレーテーテレレレー!》





「この場所で、よ〜い」


 

 どん! 


 

「スタートダッシュは稲妻だ!♪」


 走って穴を飛び越え



「障害避けて飛び越えぶっ壊せ♪」



 横の小さな穴から飛んでくる矢はイナバウワーで交わす。


 「俺は止められやしない♪」


 直後に地面が開いて落ちる。


「何故なら俺は伝説の♪」


 ホルダーから銃を取り出して天井に撃つ。光るワイヤーみたいなものがくっついて引き上げる。


「スーパー・スターなのさ〜♪」


 そのまま体を縦に回転して地面に着地する。


「決まった」


 

 転がってくる巨大な鉄球は魔法銃で撃って別の罠を発動させ巨大ギロチンが止める。


「見ろよ俺の勇姿を♪」


 吹き出す炎の穴に石を詰めて止める。


「見ろよ俺の活躍を♪」



 一番奥にある死体たちをどかして鍵を取る。



「再び言おう俺は♪」


そして振り返る


「スーパー・スターなのさ〜♪」


 さっきの入口は封鎖されて大量の穴から隙間なく矢が今か今かと発射されそうになった。


「ああ、道理で簡単な割に死体が多いと思ったよ」


 躊躇なく一歩踏み出すと一斉に矢が発射された。


「魔法が効かないんじゃどうしようもないね」


 何も持ってない両手で指鉄砲を作ると袖から拳銃が出てきて手に収まり向かってくる矢に向ける。


「でもこれは魔法の銃じゃない。ロマンさ」


 デザートイーグルと呼ばれた銃から放たれた弾はアンチ魔法の矢を撃ち落としていく。


「愛しておくれよこの俺を〜♪」


 僅かにできた隙間に向かって撃ちながら錐揉みジャンプし矢を躱す。


「熱い夜を過ごそうじゃないか♪」


 また放たれる。同じ事をする。


「愛しておくれよこの俺を〜♪」


 マガジンを外すと袖からマガジンが出てきて自動で装填される。


「忘れられなくしてやるからさ♪」


 発射盤の前まで辿りつくとレバーを引いて仕掛けを解除する。


「罠は解除、鍵も取って戻ってきた。完璧」


 僅かに横にずれると後ろから一本だけ飛んできた矢を避ける。


「油断大敵、流石はこの俺、【エクリプス・スター】………ん?」


 音楽が止まった? まだ曲は終わってないのに。


「やっべ、電池切れだったか。そういや朝ウォークマンの充電し忘れたなぁ」


 でもおかしいな。少なくなったらお知らせが入るはず………


 イヤホンのコードが切れてた。さっきの矢を避けたつもりが当たっていたのか。


「ふざけんじゃねえ! これ高かったんだぞ! 2000万だぞ2000万! 魔石も無しに!  バランス接続で! ハイレゾも聞ける超優れもの何だぞ! 出てこいここの創建者! 賠償金を払えクソ野郎!」


 返事はない。誰もいないのはわかっているが言わずにはいられないんだよくそったれ! 


 まあいい。いや良くはないが落ち着け。仕事はこなすんだ。


 扉を開けると宝箱があった。鍵と同じマークがある。


「良いの入っててくれよお宝ちゃん」


開けようとした瞬間


「動くな、カズヒラ」


 後頭部に銃をつけつけられる。


「その名前で呼ぶなよシド。これは俺が先に見つけたんだぞ」


「悪いな。この依頼、俺も受けてるんでな」


「あのハゲジジイめ……銃をおろしてくれ」


「どいてくれたらな」


 後で依頼者のカツラ取ってやろう。後ろを取られたら仕方ない。どこう


「……なにその格好、スター・○ードのコスプレか?」


「はは! 良くわかったな! そうさ、あの伝説の映画、ガーディアンズ・オ○・ギャラクシーさ!」


 コスプレしてダンジョンに来るとかイかれてるのか? しかも全く似てないし……特に体型が………


「おい今体型が似てないとか思っただろ」


「思ってない思ってないコスプレに大事なのは愛だよ。お前からは愛が感じられる」


「はは! よくわかってるじゃねえか!」


 赤い服のまるまる太ったシド。シドは銃をおろして宝箱を開ける。中身は空だった。


「……やっぱりか……おいお前ら撤収だ! 中身は空だったからなあ! 外れだぜ畜生が!」


 悪態をついて適当な石ころを思いっきり蹴る。入口で待機している仲間達は笑っていた。


「やっぱりか? 何で空だって思ったんだよ」


「お前が鍵を取れたから」


「はぁ!?」


「お前が手に入れられる程度の宝なんで既に誰かが取っちまったってことさ! 何せお前は落ちこぼれだからな!」


 は? おい今何つった? 


「俺が落ちこぼれだと!?」


「当たり前だ“ノーギフト”が! じゃあお前のランク言ってみろよ」


「……E。でもしょうがないだろ。ソロ何だから! ソロじゃなかったらAはいってるね!」


「本当に実力がAだったらチーム組んでるだろ! 能力なんてないから誰とも組めなくてソロやってんだろうが!」


 入口の仲間も含めて俺を大笑い物にする。すげぇぶっ殺したい。


「何なら俺たちが入れてやってもいいぜ? そう、俺達【スーパーマジッカー】に。ただし皿洗いとしてな!」


「はいはいわかったから。さっさと帰りなよ。もう依頼物はないんだから。俺はここの小石を拾ってから行くよ。やたら頑丈だし武器になるかもな」


「そんなものに頼るぐらい金も無いのか落ちこぼれの貧乏人が! おいお前ら行こうぜ! こいつといたら貧乏が移っちまう」



 そう言って【スーパーマジッカー】は退散していく。  


「……………………」



「はい馬鹿確定〜! 」


 笑いながら宝箱に近づく。


「なんで扉の鍵のマークと宝箱のマークが一致しているのか疑問に思わないのか?」


 宝箱を閉じて鍵を入れる。


「扉を閉めるならともかく罠をくぐってまで元の場所に鍵を戻す意味あるか? まあ、俺の美声の感想も言わない奴らだ。さっき来たばっかで俺が宝箱を開ける直前だったから内心焦ってたんだろ」


 鍵を回す。



ガコン。


 

「ほらな。やっぱり仕掛けがあった」


 宝箱の底が空いて下に繋がっていた。魔法銃のワイヤー機能で下に降りていく。


 






















「おい嘘だろ」   



 床についた時に広がった光景は古い石塔には見合わない、電子機器だらけのいかにも研究所のような部屋だった。そして眼の前には巨大なカプセルがありその中で液体の中に浮かんでいたのは



 真っ裸の獣人の女の子だった



「これは………まさか………噂の…………」





 間違いない。まさかそんなことが、ありえるなんて





 

「一目惚れってやつ?」

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