第8話 始まり

【るい、コーヒー入ったよ】


【ありがとう、今行く】


寝ぼけて髪グシャグシャで起きて目を擦ってる。

るい、朝苦手だったね。

その👕昨日も着て寝てたよな?


【るい、毎日洗濯に出してないのか?】


【何で?、汗かいてないからいいかなー】


そうなのか!そんなもんか、俺が神経質なのか?

るいの後ろにまわってクンクン!


【涼ちゃん、嗅ぐなー!】


いてー!、脛を、またか。用心していたのに、

相変わらず足クセが悪い。


【臭かった?、嫌だよ、嗅がれるの】


【ごめん、臭くないよ。るいの汗の香りは】


【臭いってことじゃん!】


また蹴りやがった。いてー!同じ場所!

せめて変えてー!その蹴り凶悪過ぎ。


【好きな人に臭いって思われるの嫌なの、しかも嗅ぐって、犬じゃないし。馬鹿なの?】


可愛いんだけど、凶暴。そう言えばここはペット可物件だって聞いたような?だいぶ前だから忘れてたけど。


【るい、犬飼おうか?】


【何突然!何で犬?】


【だって、るいと恋人気分でもう暫くいたいじゃん、もちろん子供も…】


【涼ちゃん、子供のことも考えてくれてるんだ】


【もちろん、ただもう少し恋人気分で、それに子供出来ても犬いたほうが成長にもいいからね】


【涼ちゃん、しっかりパパさんだね】


ん、スマホがブルブル、誰だ?

えっ、玲奈。なんで?


【お久しぶりです、涼さん、今日少し会えますか?もちろん、るいさんも】


【いいけど、会ってくれるの?】


【いつもの喫茶店で。じゃ】


玲奈、急に何だろ?いつもの喫茶店か。


【るい、出掛ける準備どれくらいで出来る?】


【えっ、もう犬見に行くの?】


【違うよ、玲奈が話あるって】


【…解った。すぐ準備する】


二人は喫茶店に、すると既に玲奈が来ていて、


【こっち。とりあえずアイスコーヒーでいい?】


【うん】


玲奈と向かい合って座った。気まずい…

何だろ?許してくれるってことでもないよな。

それによそよそしい、完全に他人…


【二人に聞きたいことがあるから。もちろんどんな理由にせよ、涼とより戻すことは無いからご心配なく、るいさん】


きつーく話しだしたな。まいったな、これ。

玲奈は続けて、


【最近、ユキの様子がおかしいの。涼と会いたいって言うのは解るけど、涼さんって寝言で…そんな風に呼んでいたことある?お父さんか涼ちゃんでしょ?聞いても何もそのことは答えないの、まぁ、お父さんってことは気にしないで、血が繋がってないし、もうお父さんになることはないから】


玲奈、キツーい!!!


でも、ユキの涼さんって言い方は…


るいも明らかに動揺した表情。

ユキ、記憶あるのか?それとも成長に連れて蘇るのか?何が起こってるんだ?


【二人とも、その動揺ただ事じゃない感じ】


玲奈が疑い始めた。るいがいきなり、


【玲奈さん、理解出来ないのは解っています、でも真実を話します。お願いだから聞いて下さい】


【玲奈、俺からも頼む】


玲奈はふーとため息。そして、


【解りました、でも理解はできないから、最初に、言っておく。涼が裏切ったことに変わりはない、今日はユキのことが心配で確認したかったから】


それから、るいはパラレルワールドの世界のこと、ユキと同じ職場だったこと、この世界に来てからのこと、それに俺とユキの関係も…何もかも。


【それが全て真実なら、ユキと涼は付き合って恋人同士だったってこと?随分と都合よくした作り話を…】


るいは下を向いて、少し泣いている。

玲奈は、


【涼、あなたは未来で私と結婚して、次にユキと恋人同士になって、今はるいさんと…呆れた!】


言われるとおりだ。悪いのは全て俺だ。

何も言い返せない、誰も幸せに出来ていない。


るいが話しだした。


【涼ちゃんはみんなを守ってくれて…だって、その証拠に…】


玲奈が怒って、


【証拠になんなの!】


るいも負けずに、


【みんな涼ちゃんのこと好きになってるじゃん!】


辺りが静まり返った。るいの真剣な表情と涙。

言葉の重みが全体を包み込む。


玲奈は、暫くして、


【るいさん、解った。本当にそうだね、涼のこと好きになったのは事実。今、あなたも強く強く涼を

想っているんだね】


【玲奈。悪いのは俺だ、本当にごめん】


玲奈は、見上げて、


【あー、もう、こんなことで嫌な女になりたくない。これじゃ。モテないね。もう終わり、こんなの今日で終わり、話も終わり】


玲奈…ごめん。そしてありがとう。


【るいさん、涼をよろしくね。コイツ、扱い難しいからね。神経質だし、寝てる服毎日変えろとか、無視してると匂いとか、ん、どうかした?】


るいは、涙のかわりに笑い始めて、


【匂い嗅がれるの嫌ですよね、ほんと】


玲奈は、


【涼、もうやってるの?呆れるね、その趣味!】


玲奈は立ち上がり、レシートを持って、


【話せて良かった。るいさん、ユキのこと、少し信じることにした。ユキが成長して全てを思い出したら、涼、どうするの?】


るいが不安そうだ。ここはしっかりと、


【ユキの幸せを最優先に考える。そしてユキを幸せにするのは俺ではない誠実な男だ。もちろんいい加減な男なら許さない】


玲奈が笑って、


【自分で誠実とか、何言ってんの!、父親気取りなんですか?涼。それはこれから出会う私の旦那さんの役目です。あなたではありませーん】


そういうと玲奈は帰り際、会計終えると、


【るいさん、お幸せに。ユキのことで連絡することあるかも。その時だけは涼貸してね、こんなヤツでも一度は好きになったから】


いつもの玲奈だ。明るくて。


【はい、ありがとう、玲奈さん】


もう会うことにないかもな、玲奈。

ユキのことで相談してくれると嬉しいな。

玲奈、元気で、幸せになってくれ。

俺はいう資格ないね。


何とか無事に話し合い出来たのかな?

これで良かったんだよな、きっと。


【涼ちゃん…お腹空いたね】


【よし、何か頼む。オムライス、スパゲッティ、

サンドイッチ、…】


【飲み物もね、涼ちゃんお金いくらある?】


お金?しまった、財布忘れた!


【るい、とりあえず部屋戻ろうか?また来れば…】


るいは、じーと見て、ヤバい、来るぞ来るぞ、

脛をガードして、この椅子があれば大丈夫!

同じ技は通用しませーん。


それよりも、さっきの玲奈の話。

ユキの記憶が戻り始めるのか、それとも偶然なのか、不安だよな。そんなことあるのかな?


もし記憶が戻ったら…俺はどうすんだろう?

るいもことも…るいも同じこと考えているんだろうな?


駄目だ、るいを不安にさせちゃいけない。

るい、大丈夫?何考えてるのかな?


すると、るいはいきなり、


【涼ちゃん、お腹すいた!ー、財布持ってこないって一体…、馬鹿!】


うわ、何、椅子ごとキックかよ!


いてーーーーーー!、椅子の補強部分が脛に、

もう脛ばかり、もう嫌!

青タン赤タン黄タン、信号か!!! 


悩んでも仕方ないな。そうだよな、るい。

その時に考えよう。


とりあえず財布取りに戻ろう。俺だけ…

もう、るい、いろいろ頼んでるし…


これからのるいとの生活、楽しみだな。

脛をガードするサポーターか何か必要だな。



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