第6話 入学初日に遅刻して、隣の席がこの前ナンパから救った女の子だったとか、それどんな主人公?


学校内のMAPを見て体育館に向かったのだが、誰もおらず親切な通りすがりの先生に皆はもう既に教室にいると教えて貰った。(ついでにクラス表が載っているところも)

にしても、さっきの親切な先生、何かどっかで見た事ある顔してんなと思ったら良く時間停止系のエロ漫画に出てくるハゲ教師じゃねぇか。

 だが何故だろう、あの先生からは一切そういう邪念を感じなかった、例えるならば悟りを開いて新たな境地へ行ったかの様なそんな気がした。

 うん?何言ってるか分からない、そりゃそうだろう。言ってる本人である俺が一番分かってないのだから。

 どうやらそんな事を考えている内に、自分の教室に辿り着いてしまった様だ。『1-2』という室名札が見え気を引き締める。


「静井恭弥です!ついつい寝過ぎてしまって、来るのが遅れました!」


 先程までは教師の声が響いていた教室も、俺が入ってきた事により一気に静まり返る。そして俺に向く皆の視線。


 おい、俺をそんな目で見るな。突然教室へ入ってきた人に皆の視線が向くのは当たり前の事だと思うが、こっちの気持ちも考えて欲しい。

 は〜〜〜!!恥ずいよ!恥ずすぎる!出来る事ならこのまま全てを指パッチンで終わらせたい気分、だが俺にそんな超人的な力はない。

 つまり!!ここは己自身の鍛え上げられたメンタルで真っ向から挑むしかない!


「あー、そうか。お前の席は……あそこだな」


 はい、負けました。もう僕のメンタルはズタボロです。何も、そんな素っ気ない態度で返す事ないじゃん、教師ならさぁ、もっとこう『そうか!』とか言って元気良く返してくれるもんじゃないの?そりゃ突然教室入って元気良く遅れた宣言した俺もどうかと思うよ。「恭弥くん?」だけどさぁ、もっとこう何かない訳?俺のメンタルを数秒で消し飛ばしてさぁ、もうやだ死にたい。


「恭弥くん」


 ん?隣の席の人から何だか名前で呼ばれてる気がするのですが、しかも何故だか愛華さんと似た様な声をしてらっしゃる。きっと、気のせいだ。

 恐らくこのクラスには別の恭弥くんがいるのだろう、だからきっとこの子もその別の恭弥くんに話し掛けてるんだ、そうだ、そうに決まってる。

 大体、高校初日から遅刻して隣の席がナンパから助けた女の子だったとかどんな主人公ムーブだよ!ご都合主義展開いい加減にしろ!そんなの妄想の中だけで良いんだわ!


 そんな言い訳合戦を脳内で行いながら、半ば確信めいてるものも、気づかない、気にしないフリをして必死に前に視線を向けると。


「貴方に言ってるんだけど、私をナンパから助けてくれた静井恭弥くん?」その言葉と同時に頬を指で突かれる。


 少しため息を吐きながらも、頬を突いた張本人である宮藤愛華さんの方へ視線を向ける。

 うん、めっちゃ可愛い(迫真) だからこそ、この子は主人公のヒロインだからと関わらない様にしようとしてるってのに、何でそっちから絡んでくるんだ!


「あら、可愛い女の子を前にため息を吐くなんて。そんな事してると、幸せが逃げるわよ?」


 そんな事をコソコソと先生に気づかれない様に話してくる愛華さんに、俺はこう答える。


「じゃあもう話し掛けてこなくて良いよ……」


 そう言うと、愛華はニンマリと人が悪そうな笑みを浮かべ、俺の目に視線を合わせると口を開く。


「お断り」




 

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