5 - 5 朝

 ──午前5時。

 スマートフォンに登録してある祖父の番号から着信がある。

『出たぞ』

 逢坂一威の声は震えている。笑っているようにも聞こえる。人間は本当に恐ろしいものを目にすると、笑うしかない、と誰かが言っていたような気がする。妄想かもしれない。

『繭に包まれた赤ん坊の死体だ』

 その瞬間、向かうべき方向がなぜだかすぐに分かってしまう。

 シートベルトを締め、アクセルを踏み込んだ憲造の肩を後部座席の稟市が強く掴む。

「無藤家に」

 無藤絹代は、朝現れる。

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