お墓の守り人 銀太と奇妙な訪問者

珈琲パンダ

第1話 てるてる坊主と黒い猫

 小さな女の子は、テルテル坊主を作って青いマジックで目玉と口を書いて、母親に対して


「これで明日は晴れるよね!」


 と嬉しそうに尋ねた。母親はにっこりと優しい顔を娘に向けて、ゆっくりと頷いて、柔らかい娘の髪の毛を撫でていた。女の子はテルテル坊主をもって、どこに飾ろうかとウロウロと部屋の中を歩きだした。外は梅雨時期の影響なのか雨模様で、いつ雨が降りだしてもおかしくない雰囲気だ。

 女の子が歩く傍らには、一匹の黒い猫が娘のテルテル坊主をものほしそうに眺めていた。


「明日ねー!パパと一緒にディズニーランドに行くんだ!!ミッキーに会えるかな?ミニーちゃんは握手してくれるかな?」


 女の子は一人で大声で話しながら、部屋の中を行ったり来たりしている。女の子はふと窓枠部分の突起にテルテル坊主を結べそうだと気が付いた。その突起にテルテル坊主のひもの部分を結びつけると、満足げにパンパンと手を叩いて、テルテル坊主を一度だけ拝んで気が済むと、母親のもとへと走っていった。


 黒い猫は、しばらくは大人しくしていたが、だんだん我慢できなくなってきた。窓枠部分にぶら下がったテルテル坊主めがけてジャンプした!ちょうどいい遊び道具に見えたのだろう。猫はテルテル坊主を叩いて落とすと、満足げに口に咥えてどこかにもっていってしまった。外はいつの間にか暗くなり、ぽたぽたと雨が降り始めた。


 降り出した雨は、徐々に強くなってきた。父親が帰宅する頃には本降りの雨になっていた。天気予報は予想通りの雨の予報。降水確率は90%だった。


「雨か。延期したほうがいいんじゃないか?」

「それはないわよ。あの子とても楽しみにしてるもの」

「だけど、晴れた日に行ったほうがあの子のためだろ。それに僕は仕事があるから、どちらかと言うと、別の日のほうが助かる」

「何を言っているの?また仕事!?そうやってまた…」

母親はそう言って言葉がまたキツくなることを後悔した。


「ああ、わかってるよ。明日はちゃんと行くよ。もうずっと前からの約束だ。仕事の話は明日はしないから…」

父親はそう言ってフーっとため息を付いた。


「明日は早いし、早めに休んで…」

「ああ、わかった。明日の仕事を少しだけやったら早く寝るよ」


父親はそう言うとまた仕事のパソコンを立ち上げると、カタカタと仕事を始めた。

時間は深夜の一時を回って尚、仕事をしていた。


雨音は少し弱まってはまた強く降り出し、とても止む気配はなかった。

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