寄れば離れ離れれば近づく波のよう

───先輩は力強く輝く・・星・・けれど・・その心は金平糖のような・・脆いものだった・・


 そして・・木々の緑葉が強い夏が始まった。

 旧校舎の部室の窓からは緑色に輝く葉の光が差し込んでいる。

 新校舎のほうは空調が効いていたが、美術部のあるこの旧校舎にはそのような物はない。

 鞠・・そして、部長、榊木は一心不乱に作画に没頭していた。コンクールが近いからである。

 カーテンを揺らしながら部室に微かに入る風だけが彼女らの体を冷やす。

 とはいえ木造の建物だ。遮熱性はない。ほとんど温室に近いような温度。

 3人は汗がキャンバスにかからないように気をつけながらそれぞれ鉛筆・そして筆をとっていた。

 窓正面では風景画の仕上げをしていた榊木、その斜め後ろで女性の絵を鉛筆でかいている部長。

 その後ろでまだ具体的なラフすら仕上がっていない鞠・・。

 鞠は構図やアイデアがなかなかうかばず苦悩していた。

 (・・部にはいってまもないのに急にコンクールの話が部長からふられたからなぁ・・私はしばらく絵から離れていたからその感を取り戻すのにも必死だったんだけど・・)

 鉛筆を手にとり、顎に添えて考え事をしていた鞠。

 後ろから見える先輩の絵に目をやる。

 (・・やっぱ榊木先輩・・を描いている・・でも、前の未完成画の続きではないような・・)

 じっと鞠は部長の絵をみて・・ぼそっとつぶやく。

 「・・透けブラ・・」

 静かな部室のその声が響き、びくっとする榊木。

 「え・・ちょ・・なに・・」

 「あー、こら!鞠・・余計な事をいわないで!」

 あまり風の入らいない部室・・汗をかかないわけがない。

 すでに衣替えも終わり、半袖のワイシャツ・スカートにリボンの簡素な制服姿。

 夏用のワイシャツであり、布の厚さはない。そしてこの部室の暑さだ。

 榊木の体は汗でしっとりと濡れており、ワイシャツを湿らせていた。

 そして少し派手目に見えるピンクのブラジャーをつけていたため、そのラインがくっきりと浮かびあがっていた。

 ・・その一心不乱に筆をとる榊木の背中姿を部長は鉛筆で描いていたのだ。

 しっかりとそのブラジャーが透けている彼女の姿を。

 「部長!!」

 榊木は立ち上がってづかづかと部長にかけより、絵をみてがみがみと怒り出す。

 それを笑ってごまかす部長。

 「部長!!コンクールに間に合わなくなりますよ?! 余計なの描いてないで早く作品を進めてください!!」

 「ふふ・・ごめん。榊木ちゃんの背中・・とてもきれいだったからつい・・この透けブラ・・もさることながら、背中の肩の骨と、背骨のサイン・・そして、光で透けて見えるウエストのくびれがとてもよかったからね」

 といいながら、部長は視線を鞠に目を向ける。

 「!」

 (ちょっと部長の・・目が怖い・・怒っている・・のかな・・)

 

 ***


 部活の時間も終わり、鞠は汗だくになりながら画材とイーゼルの片付けに入っていた。

 よちよちと重いイーゼルを持ち上げ部室の奥によせる。

 先ほどのつぶやきで部長の落書きが榊木にばれ、その後に部長にみんなの画材の片付けを言いつけられた。

 多分ばらした為それの罰・・的なものなのだろうと思い、心の中で反省しながら片付けをする鞠。

 (・・うぅ・・部長・・やっぱ怒ってた・・じゃなきゃ・・みんなの片付けとかさせられたことなかったし・・)

 少し涙目になりながら作業を続ける鞠。

 その間に榊木の声が聞こえる。

 「部長・・今日ですが私、用事があって、申し訳ないですが先に帰りますね」

 「了解!暑いから熱中症に気を付けてねー」

 榊木がそそくさと荷物をまとめると部長に挨拶して部室を後にする。

 (え・・榊木先輩・・かえっちゃった・・)

 とっさに鞠は大声を上げる。

 「お、お疲れ様でしたー!」

 「はーい、鞠ちゃんおつかれー。また明日!」

 軽く会釈をすると榊木は走って去っていった。

 (私も早く終わらせて帰ろうっと・・)

 鞠はそそくさと片付けを再開する。

 そして最後のイーゼルを部室の隅に寄せた瞬間・・。

 すっと鞠の体に手が絡まる。

 「・・あ・・」

 背後から感じる体温と吐息。

 そして、花のようないい匂い。

 「・・あ・・部長・・何を・・」

 「何をって・・やっと二人きりになれたじゃない・・」

 ・・そう、また始まってしまった。

 部長からの一方的な愛情表現が・・。


***


 まだ緑葉の光が差し込む放課後の美術室。

 その静まり帰った部屋には、乱れる呼吸の吐息・・・そして、淡い声・・。

 部長は鞠のワイシャツをまくり上げ、冷たい手でをブラジャーの中に滑らせて胸を刺激しつつ・・・もう一つの手で、ショーツの上から鞠の下半身を執拗になであげる。

 「・・ふ・・ん・・♡」

 鞠もその部長から与えられる刺激に耐え声をこらえる。

 もし自分の甘い声が窓から漏れて他の生徒にしられたらまた部長を困らせてしまうからだ。

 「ふふ・・声をこらえちゃってかわいい♡」

 「は・・・あ・・♡ぶ・・部長・・やめて・・声・・聞かれちゃう・・♡」

 「かまわない・・鞠の声・・とてもかわいいから・・私がいっぱい聞きたい・・ねぇ・・ほら・・鞠の声・・もっと・・聞かせて・・?」

 そう部長は鞠の耳元で語りかけさらに鞠を攻めあげる。

 「やぁぁぁあ♡」

 電気が通うかのような刺激に思わず声を上げる鞠。とっさに自分の口を押さえるが、涎が溢れるほど口がふさがらなくなっていた。

 息をするごとに意識せず声がでてしまう。

  「あ・・♡ん・・♡ぶ・・ぶちょ・・」

 「すごいかわいい・・♡・・ほら・・これはどう?鞠・・」

  「あ゛♡・・あぁ・・♡は・・・♡」

 鞠は足をガクガクを震わせる。そのまま力が入らなくなり膝を床につきぺたりと座り込んでしまう。

 「すごく・・気持ちよかった?♡こんな鞠の声聞いたの初めて♡」

 肩で大きく息をする鞠。うつろな瞳でゆっくりと部長の顔を見上げる。

 ・・顔を真っ赤にして・・興奮して・・息を乱して・・そして・・その唇は・・とても潤ってて・・まるで・・。


 ─ 果実のよう ─


 「!?」

 鞠は無意識のうちに立ち上がり・・。 

 部長の頬に手を添えて・・。

 その潤った果実のような唇に・・。


 ・・口づけ・・を・・。 


 ─ガタン!


 っという大きな音と共に、鞠の体は突き飛ばされる。

 「きゃあ!」

 突然のことに思わず悲鳴をあげる鞠。

 そのまま部室の壁とイーゼルにぶつかり、倒れて尻もちをついた。

 「痛・・ぶ・・部長・・?」

 恐る恐る鞠は部長の顔を見る。


 ── 真っ青だった・・。


 ・・先ほどまでの高揚した顔はなく、真っ青になって・・まるでなにかに怯えているかのように。

 「・・あ・・いや・・なんでも・・」

 部長はそそくさに荷物をまとめだすと制服がみだれた鞠を見ないようにそのまま部室を出ていってしまった。


 ・・。


 ・・突然の事に驚きが隠せない鞠。


 乱れた制服のまま・・呆然とする・・。


 (・・私・・なにか・間違えた・・)

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