第23話 魔王と勇者


「魔族領…?」


「そうだ。人型で知能が高く圧倒的な魔力を備えた化け物、それが『魔族』だ。

あいつらは俺たち人間の世界の外側・・に独自の社会を築き存在している。『魔王・・』を頂点としてな。」


「…!!」


『魔族』


聞いたことがある。前世の知識だ。


かつて突然現れたこの集団は瞬く間に人間世界に侵略し、暴虐の限りを尽くしたとされている。


「これは今からちょうど1000年前の話だ。

なんの前触れもなく突然現れた『魔王』率いる『魔族軍』の圧倒的な力の前に人々は為す術がなかった。


それまでの平和が嘘だったかのように一瞬で世界が血の海に変わり、人類の半分が魔族と、奴らに操られた魔物によって殺された。


誰もが絶望し、魔族に滅ぼされるのをただ待つだけという状況の中、『勇者』は現れた。」



俺は背筋に冷たい汗が流れるのが分かった。


(今からさらに1000年前…『魔王』に『勇者』!?)


「勇者はとにかく強かった。何か特殊な能力を備えていたと聞く。

彼は当時前線で魔族と戦っていた強力な戦士4人を引き抜き、『勇者パーティー』を編成した。


彼が率いる『勇者パーティー』は侵略してくる魔族を次々と打ち倒し、ついには魔王の元まで辿り着いた。

しかしそんな勇者でさえ、魔王をこの世から葬り去ることはできなかった。


自分たちではこの『魔族の王』を撃ち倒すことができないことを悟った彼は、自分の身を犠牲にして彼の能力で魔王を無力化した。そしてパーティーメンバー4人がかりで魔王を封印したことで長い戦いは終わった。」


聞いたこともなかったこの世界の『真の歴史』に俺は驚きを隠せなかった。


「…その後どうなったんですか?」


「戦いを終えて帰った『勇者パーティー』の4人は、壊滅的だった社会を立て直して4つの国を建てた。

それが今のヤムル、ミリアス、ギース、マルガだ。国の名はこの4人から取られている。


だがその後も魔族による侵攻は度々起こった。

封印されている魔王の残存魔力から新たに産み出された魔族だろうな。


奴らは魔王復活を掲げて魔物と共に何度も攻めてきた。その度に人間社会は大きな打撃を受けた。


しかし、人類側の勢力にも変化は起こった。


異能・・』と呼ばれる能力を持つ者たちが出現したんだ。


彼らは亡き『勇者』と同じように特殊な能力を使い、魔族の侵攻を食い止めた。


そして『異能力者・・・・』達にはある共通点がある。


それは魔族による侵攻がある時にしか彼らは産まれないということ、そして彼らの持つ『異能』は魔獣や魔族を倒した時にのみ強化されるということだ。


魔王が封印されてから1000年間、魔族が侵攻してくるたび『異能力者』たちがそれを打ち破り、人類はなんとか生き延びてきた。」


シリウスがなぜこの話を俺にするのかが分かった。


「お前が本当に『勇者』で、『魂の眼ソウル・アイ』とやらが『異能』なのだとしたら…近いうちに魔族の侵攻が迫っていることを意味する。

そしてお前はそれを食い止めるため、魔族と戦わなければならない運命だということだ。」


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