第14話 愛しのエリーゼ
「今日も元気に
ああ、また地獄が始まってしまった
今日こそ俺の命日になるかもしれない…
「やあやあ体の調子はどうだイ?ボーイ・アクセル☆」
デルトイド・トラペジウス
フローレスの元パーティーメンバーで『覇象』の二つ名を持つA級冒険者だ。
金髪のおかっぱ頭に爽やかな笑顔。
白いタンクトップに真っ赤なトランクス。
おまけに黒い網タイツに白いブーツ…
2メートルはある筋骨隆々の巨体から放たれる威圧感はまさに『象』のそれだ。
デルトイドは師匠であるフローレスの紹介で、2週間ほど前から毎日家まで来て、体づくりのサポートをしてくれている。
(師匠が絶対にこの人と目を合わせない理由がよくわかったよ…)
彼の指導はとても厳しいもので、早寝早起き一日一善、朝晩のストレッチ、とても細かい食事制限に、1日2回の顔パックまでしなければならない。
ちなみに顔パックは強制である。
そしてトレーニングでは身体中のあらゆる筋肉を鍛える30個ほどの筋トレメニューを、3日に分けてこなさなくてはならない。
同じ筋肉に毎日負荷がかかることはないので体を壊すことはないのだが、おかげさまで俺は毎日全身筋肉痛だ。
まあ2週間前に比べたら少しは体つきが良くなってきたのかな、って気もしなくもなくも、なくもなくもないが。。(しないんかい)
「今日の朝もちゃんとストレッチしてきたかイ?」
「はい、筋肉痛で死ぬかと思いましたけど」
「すぐに体が慣れるようになるサ☆その時には君の体は別人に生まれ変わってるヨ」
すでに1回生まれ変わってるんだよなあ、とか思いながら、アキレス腱を伸ばす。
「今日も一日頑張っていくヨ☆ 愛しの
大声で叫びながら自分の筋肉を撫で回す2メートルのおっさんを尻目に、僕は玄関口へと向かう。
今から10キロランだ。
俺はもはや当然のように両手に5キロのダンベルを握る。
腕には魔力の使用を止めるアンクレット型の魔道具をはめている。
体内に存在する魔力さえも使わないようにすることで、自分の肉体本来の力を引き出すためだ。
(少しは強くなってるのかもな)
チラッと横を見ると、左手にピンクの手鏡を持ったムキムキ金髪爽やかおじさんが笑顔の練習をしながら、右腕で逆立ちして腕立て伏せをしている。
うん、見なかったことにしよう。
謎の後悔と共に小さなため息をつきながら、時間を測るための時計型魔道具をセットする。
こうしてアクセルの単調で地獄でそして有意義な体づくりの一日がまた、幕を開けた。
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