異世界大好きな私が悪役令嬢に転生!?──かと思いきや、魔法も使える最強ヒロインでした!

わか猫

第1話

 私はいつも人の前に立って、みんなをまとめるような役割をしていた。クラスでも毎度委員長に推薦され、クラスメイトのためを思って嫌なことでも引き受け、風紀を乱す人には注意していた。正義、を代表するような人間だったと思う。

 それなのに。

「あいつまたグチグチ言って来るんだけど。ウザすぎん?」

「わかるぅ! いい子ちゃんぶってんのキツいんだがw」

ただ、みんなのためにやっていたことなのになぜそんなこと言われなければならないの。イジメだと目に見えてわかるようなことはされなかったけど、陰口を言われるだけでも私は傷ついた。正直まとめ役で真面目な感じもなりたくてなった訳じゃないのに、作ってしまったキャラは変えられないし、誰かがやらなきゃならないから委員長もやっていただけだ。

 やっぱり、正義なんて貫いてもろくなことにならない。好きに、自由に生きたい。

 憂鬱な日常から抜け出したいのに抜け出せないやるせない気持ちは、漫画やアニメを見ることで発散していた。私は異世界系というジャンルが好きで、もふもふや悪役令嬢、王道ファンタジーも大好きだった。物語に熱中しているときは、めんどくさいことを全部忘れて楽しむことができる。私はベッドに寝転がってスマホで漫画サイトを開いた。

 もし、異世界に行けるなら、もふもふの可愛い魔獣とスローライフとか魔法で無双とかもいいけど、魔王様の側近になるのも憧れるんだよなあ。なんか厨二病みたいだけど、中2だし許されるはず! ざまぁはちょっと面倒ごとに巻き込まれそうだし2次元だけで十分かな。

「ああ、異世界行きたい」

 

 そのとき読んでいた漫画の記憶はない。きっとすぐに眠ってしまったのだろう。


「リージュ様、おはようございます。お目覚めの時間ですよ」

 知らない名前を呼ばれ、私は目を覚ました。ここは、いったい? 目の前には、高価そうな装飾の家具や金色の額縁に飾られた絵画。前世では全く縁のなかったものだ。

 も、もしやこれは、異世界転生!? 夢じゃないのか、とほっぺたをつまんでみるがしっかり痛みは感じる。それよりも、綺麗な金髪だし、肌つるつるもちもちだし、その、胸が、アニメサイズなんですけど! 私は気になってゆっくりと自分のそれに手を伸ばそうとしたが、突然の声にビクッと手が震える。

「いつまでぼおっとしているのですか? 今日は皇太子様とお茶会をなさる予定でしょう」

 その声がした方向を見ると、肩の上で揃えられた黒髪のボブにフリルのついた白と黒の服装の少し怒っていそうなメイドがいた。危ない、そうだ私、彼女に起こされたんだった。同性だとしても人前で恥を晒すところだった、ふう。

「リージュ様、皇太子様の誘いをすっぽかすおつもりですか? ほら、御支度をいたしますよ」

 ん? 皇太子? 異世界大好き人間からしたら転生は最高の出来事だけど、ここが異世界だとしたら、このシチュエーションって、悪役令嬢タイプじゃない? だとしたら、だいたい何もしないと最悪の結末になるのがオチよね。それって、うーん、私死ぬ? モブキャラであってほしいけど、皇太子様とお茶会する約束をするモブキャラなんているわけないし。結構ヤバいんじゃないかしら。全くめんどくさいことになったわ。

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