カルチャーのレクチャー

 異世界で最初に俺が出会った少女、聖女見習いミミは空腹もあったが、俺からコンビニ弁当を分けてもらうと少し俺に対する態度が軟化していった。


 しかしここで気を抜くとまた信頼を失いかねないから更に俺はある物を提供する。


「そうだ、ついでだから食後のデザートも渡しておこう」

「デザート?」

「これだ」

「何ですかこれは?」


 ミミが不思議そうにしているから俺は自分が渡した物について説明をする。


「これは飴という食べ物で、とても甘くて美味しいぞ」

「いいんですか?お食事までいただいたうえ、そのような物まで」

「個数はあるし、糖分は身体と頭を動かす上で大事だからな」

「そこまでおっしゃるならお言葉に甘えます」


 飴だけにか?というオヤジギャグを言いそうになったが、生憎俺はまだそんな年じゃない。


 そんな事を考えながら俺はミミに飴の食べ方をレクチャーする。


「いいか、いきなり噛むんじゃなくてまず口に含んで口の中で動かすんだ。その方が長く味わえるぞ」

「はい」


 ミミは俺の言った事に返事をして俺に言われたように飴を口の中で動かしていき、段々と彼女から笑顔が見えてくる。


「とても甘くて美味しいですーー、すごい、美味しいお食事だけじゃなくてこんな甘味まで持っていらっしゃるなんて」


 飴を食べて喜んでいるミミを見て、俺はもう1つ気になる事を聞いてみる。


「そうだ、のどは乾いていないか?」

「そういえば、そうですねどこか川から水を汲んできます。お食事と甘味のお礼も兼ねますので」

「いや、その必要はない君にもこれを分けるから」


 そう言って、俺はペットボトルのお茶をミミに見せる。例によって再度ミミは俺に尋ねる。


「あの、これは一体どのようなものですか?」

「これはな、お茶といって、葉っぱを煮沸して作った飲み物で……」

「あ、ティーの事ですね!それなら分かりますよ」

「そう、ティー、ティーなんだよ」


 外国人にお茶の説明をする感じの雰囲気になってしまったが、そもそもミミは異世界の住人なので外国人といってもある意味間違いではない、あれ?そう言えば何で俺、ミミと普通に会話しているんだ?まあいいや、何でかは分からんが、この状況は俺にとってはありがたい。


「俺はボトルで飲むからミミ、なんか注げる物を持っているか?」

「じゃあ、この筒にお願いします」


 ミミに言われ、俺はミミの持っている筒にお茶をいれ、ミミが飲んでいった。


「はぁーーー、なんと言いますか気持ちがほっこりしました」


 ミミのほっこりした様子を見て俺は日本文化の一部ではあるがレクチャーできて良かったと思った。

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