第1章 ストーカー

第1話 写真

「うげぇ……今日もある」


 ポストを開けた瞬間、一番に目に入ってきたのは、最近届くようになったピンク色の封筒。


 文通?


 違う。


 リアルで友だちいないし、いつの時代よ。


 ファンレター?


 違う。


 アイドルじゃないし。


 私はただのアイドルオタク。


 恐る恐る封筒を手に取る。


「やっぱり」


 今日も消印はない。


 直接ポストに投函されてるってことだ。


 つまり、住所を特定されてる。


「最悪」


 やけに厚みのある封筒を手に取って部屋に戻る。


 狭いワンルーム。


 その片隅に山積みになった封筒。


 中身はいつも同じ。


 私の写真。


 家に入るところ、買い物しているところ、歩いているところ。


 今回も

「やっぱり同じだ……」

 隠し撮りされた写真だった。


「よくまあこんなに撮れるよなあ」


 数十枚の写真をパラパラめくりながら、思う。


 暇人なのかな。


 って、他人事みたいに考えてる場合じゃない。


 これは立派な犯罪。


 ストーカー行為。


 警察に相談に行ったんだけど、大して動いてもらえなかった。


 なにかが起こってからじゃないと真剣になってもらえない。


 いやいやいや、現在進行形でストーカーされてるんですけど。


 写真だけじゃなく、後をつけられてるっぽいし。


 残念ながら確信はない。


 ちょっと気配を感じて振り返っても、誰もいない。


 うーん、困ったなあ。


 とはいえ、相談できる相手はいない。


 友だちいないんだもん。


 人付き合い苦手なんだもん。


 仕方ない。


 いつものようにSNSに呟きますかあ……。

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