第15話 性癖拡張!?

偽善田はもう一人の自分に春川の説得を任せ、10分トイレで過ごした後に帰ってきた。

そろそろ説得出来たかと自分の部屋の扉を開けると…


部屋の中には春川含めて4人の使用人がいた。

そして全一は春川と一人の男性の使用に羽交い締めされて拘束されていた。


「ちょ…ちょっと…一体何を?」


「お嬢様!この男がお嬢様の部屋を勝手に漁ろうとしたのです!

善田家の者に害をなそうとすると頭がパーになる土器の力が発現し手遅れになる前に、この男を家に返しましょう!」


春川が完全に全一を家に帰そうとしているのを聞き、偽善田は目で「何をしてるんだ」と訴えかける


(お前春川説得するんじゃなかったのかよ!何で説得どころか監視の目が増えてんだ!)


どうして全一が部屋を漁ろうとしたのかは知らないが、とりあえず春川達に全一の拘束を解くように命じる。

すると渋々春川ともう一人の使用人は腕を解く。


「すまんすまん、ほんの出来心だったんだ。てかいい加減頭がパーになるって何なのか教えてくれ」


「IQが70程下がって正常な思考が出来なくなる。もはや普通の生活は送れなくなるんだぞ。

仮にもお前…全一様はお客様ですから、そうならない様にと思い拘束させていただきました」


途中で平常心を取り戻した春川は口調を元に戻す。

春川が呼んだと思われる他の使用人達も頷いており、もはや彼らを説得するのは無理だと思われる。なのでもうこの部屋で二人きりになるのは諦める事にした。


「…家には送らないけど、貴方達がこの部屋にいる事は許可するわ。

所で春川、私が普段この自由時間に何をしているのかってどれぐらい知ってる?」


「主にダンスの練習、プリンセスヒーローシリーズの見返し、衣服の制作、性癖拡張をしている事は知っています」


「なるほどなるほど…って、え!性癖拡張!?」

「え!性癖拡張!?」


春川の口から発せられた思わぬ言葉に当然二人は反応する。偽善田も自分が善田だというのを忘れて反応してしまった。

使用人達はとつぜん声を大きくした偽善田に一瞬驚くも、直ぐにその理由を察した。


「あっ、この言葉では全一様に誤解されてしまいますね。

詳しく言えば、想い人がどんな性癖を持っていても応じられる様に様々な書物を読み漁る時間です。ちなみ具体的に部屋で何をしているのかは使用人一同知りません。

なので全一様、お嬢様は好きな相手の為に努力が出来る心美しき方です。くれぐれも勘違いなさらぬように」


「わ、分かった。

でもほら、お前が言った通り本当に善田の全てを俺自身が受け入れられているのか分らないだろ?

善田がどんなものを読んでいるのか把握するのもその一歩になるとは思わないか?」


「ぐ…学校の時とは違ってよく口がまわるな…」


小声で春川は愚痴を漏らす。

その時、偽善田も善田がどんな本を持っているのか気になりながらも、今すべきことを考える


(よし、俺もエロ本探そ。

まぁそれは後でで良くて、問題は二人で自由に話合えないとなると、何をするべきか分からんな。

ダンスの練習、プリンセスヒーローシリーズの見返し、ドレスやティアラの制作、性癖拡張…

俺が出来そうなのはプリンセスヒーローの見返し、性癖拡張ぐらいだ。てか衣服の制作とか出来る気がしない…)


「…じゃあ今日はプリンセスヒーローの見返しでもしようかしら。春川、準備しなさい」


「かしこまりました、本日は139話ですね。今すぐ用意いたします」


ちなみに『プリンセスヒーロー☆』はプリンセスヒーローシリーズの18作目である。30年前から続いているシリーズなので本日放送された最新話までまだかなりの話数がある。

それを二人で見る事となったが、この139話はシリーズの中盤辺りで、前の話を知らずに見てもさっぱり内容が分からず退屈な時間を二人は過ごす事になった。




2話を見終わった頃には21:00を迎え、二人が待ちに待ったオンラインゲームの時間となった。

全一が持参したPCは今日全一が寝る部屋に置かれており、善田が使うPCはこの部屋に設置されていた。

だから今日はここで二人は分れる事になる。


「よし!2時間しか出来ないからさっさとゲーム内でフレンドになって一緒にやるぞ!」


「おっけー!」


二人はそう言うと直ぐに部屋を分かれ、各々の部屋へと向かっていった。

善田までもやる気満々になっている事に春川は驚いてはいたものの、二人が離れる事に安堵していた。


二人は各々別の部屋でゲームにログインをする。

このゲームは完全最新作の国産MMORPG。最大20人パーティーまで組め、リアルな異世界を旅をするというものだ。世界観もよく作り込まれており発売日のレビューはほぼ満点。昨日リリースという事もありユーザー数は多く賑わっている。

全一がこんな状況でもやりたがる程の神ゲーであった。


言うまでも無く二人の相性は最高。お互いの動きは大方分かっているので、スラスラと戦闘を勧められる。


現在善田は部屋で一人きり、部屋の前に使用人が一人いるだけ。

そして全一も同じく部屋の中には誰もおらず、部屋の前に使用人が一人いるだけ。

狙ってはいないが、ゲーム内で二人っきりで話せる状況となっていた。


偽善田:〔全く狙ってはなかったが、今なら使用人が居ないから二人で話せるな〕


全一:〔おお、そういえばそうだった。じゃあ今からその部屋にあると思われるエロ本捜索をしてみてくれ〕


偽善田:〔違う、今話さなきゃならんのは今度どうするかって事だ。

お前も見たから分かるだろ、あのびっしり詰まったかスケジュール。そして俺があんな生活出来ないって事も分かるだろ?〕


全一:〔違いない。当初の予定通り明日はアスレチックから一緒に階段から転がり落ちてみるか?〕


偽善田:〔いやいや、俺達が二人っきりで出掛けるなんて春川達が許してくれないだろ。だから多分誰かしら俺について来る事になる。

だがそうなると俺らは自由にやりたい事を試せない。階段から二人で落ちるのも「危険ですお嬢様」とか言って止められそうだし〕


全一:〔じゃあさ、善田家が作る土器の力について調べてみたらどうだ?

今日色々話を聞いたけど、こんな異常事態が起きてるのもその土器の力じゃないかと思えてな…どうもそれが怪しい気がする。

こんな事になってるし、もう異能的なものがあるのは疑うつもりは無いから、異能を受け入れた上で動こう〕


自分との作戦会議とはなんとも不思議な感覚になるが、話が進みやすくとても話しやすかった。

そして一先ず明日はその方向で動く事にした。

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