第7話 逃走劇!それでも僕はやってねえ

城下町も人でごった返している。

そりゃそうだ、僕ら親子がお呼ばれしたのも建国記念祭の序開じょびらきだったのだから。


さて、どうするか…

魔物と違ってこの人たちを言霊で吹っ飛ばすわけにもいかない。


………いや、待てよ………なるほどそうか


「この人たちを」吹っ飛ばす必要はない。


僕自身を吹っ飛ばす!!


正直、この時に頭がマトモに働いていたとは言い難い。

僕は辛うじてまだ回る脳味噌を駆使して、「自分を吹っ飛ばす」ための韻詩ヴァースを編み始めた。


〽「けんけんぱ!

でも婉然えんぜん天馬てんま

ここが行き止まり

なら渡る虹の橋

ひとっ飛び」


よし!身体が浮いた!

このまま、町を飛び越えて、敷地の外へ…!!


僕の身体が天高く浮かび上がる…いや、なんだこれ!??!い、勢いが強すぎ………調整が効かな………た、高い高い高い高い高い高い高すぎるッ!!!


「う、うわああああああああああァァァァァァァァァァァァ!!!ひぃいやあぁぁあぁァァァ…」


人々が驚嘆の声をあげる。

「な、なんだありゃ、人が飛んでるぞ!」

「天使様か、神様か…」

拝む人も出始めた。


「どっちでもないですぅぅぅぅぅぅ………」


僕は空へと消えていった。



*        *        *        *        *        



『…なさい…きなさい…起きなさい』


「はうあ!!!」


温かみのある声に僕は起こされた。


誰の声だっけ…覚えてるような思い出せないような。


気がつくと、俺は辺り一面真っ白な空間にいた。



「アッ…さてはこれ死んだっぽいな…。」


『また会ったな、サンよ。』


頭の中に声が響いた。


「え!?えっ!?」


すると目の前に3メートルは優に超える肌の黒い大男が腕組して仁王立ちしていた。

髪の毛は、恐怖髪束ドレッドロック、そして桂冠けいかんを被っている。


「うわあああああ!」


『前と全く同じリアクションってどうなのかな。』


大男は呆れていた。


『まあ天丼ってことか。』


「………テ…テンドン?」


『あ~そうだったわ、記憶預かってたんだったな。』


大男は、人差し指を僕の頭に向けてこう言った。


『ちょっと衝撃大きいけど我慢してくださいね~』


ドオォォオオォォオオオォオオォォォォォオオオォオォォオォオオッォォン!!!


「あががががががががががが!!!」


—————な、なんだこれは!!!

頭の中に「記憶」が流れ込んでくる!!!

だ、誰だ!このあんちゃんは!!

いや、これは僕…俺…!!??


「あががががががががががが!!!」


『よっし。完了~!』


こうして、僕は、いや俺は前世からの全記憶を神ジェアより返還されたのだった。

あまりにも急激に記憶が入ってきたので大混乱におちいりかけた。

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