第十三話 仲間達への鎮魂歌

 完璧だった。

 ガーベが交わしたゴブリンとの友情。

 そこで稼いだ視聴者数。


 さらに。

 ゴブリン達と共に、リーシャがいる村に向かう過程で再度話した今回の企画内容。


 すなわち。

 ゴブリンとオーガを誘導して、村を襲わせる。

 そして、リーシャをめちゃくちゃのドロドロにしてもらい、その様子を生配信する。


 これらの相乗効果で、ガーベチャンネルのリスナーは爆増した。


(低評価つける偽善者共や、『犯罪者乙』とか荒らしコメントつけるボケも居たが、何もかも完璧だったんだ)


 なのに。

 なのになんだ。


 時はゴブリンと共に洞窟を出てから数分後。

 場所は件の村。


「どうしてこうなったんだぁあああああああああ!!」


『ゴブリンとオーガ同士で殺し合ってて草』


『これ、ゴブリンとオーガで縄張り争い発生してね?』


『村もリーシャちゃんも無事でワロタ』


 そんなリスナー達の言う通りだ。

 まさに予想外の展開。


 共にリーシャを襲う!

 そんな意思のもと、ガーベと仲間になった大量のゴブリン達。


 彼等が村につくや早々、オーガに襲いかかったのだ。

 リーシャや村の人を無視して。


(まさかリーシャを取り合ってるのか!?)


 ゴブリンやオーガは独占欲——特に雌に対する独占欲が強いと聞いた事がある。

 そしてリーシャは相当の美人。


「だ、ダメだお前ら! オーガと戦ったらダメだ! 協力するんだ! 協力してリーシャや村の人を倒さないと!! あ、ああ——っ!」


 減っていく。

 ゴブリンの数がどんどん減っていく。

 一方のオーガも強いとはいえ多勢に無勢、刻々と数を減らしていき。


 ……。

 …………。

 ………………。


 こんなの嘘だ。

 ガーベが地面に膝から崩れ落ち、ふと視線を上げた頃には。


『ゴブリンもオーガも相打ちで全滅しててワロタ』


『こいつのチャンネル、いつも女で釣ってるだけでなんもやらないじゃん』


『しょーもな』


『詐欺チャンネル乙 通報しますね』


『結果的に村救ってるだけじゃん。そういうの見たいわけじゃないんだが』


『リーシャちゃんメチャクチャにならないなら、このチャンネル見てる意味なし』


 大量のアンチコメントだけ残して、リスナー達は消滅していた。

 しかも唐突に画面上に浮かぶ『チャンネルが凍結されました』の文字。


 どっかのアホが不適切なチャンネルとして通報しやがったのだ。

 ゴミ人間すぎる。


「クソっ! どうして俺がいつもこんな目に!!」


 一生懸命生きようとしているだけなのに。

 真面目に頑張っているのに。


「せっかく、仲間ができたと思ったのに……」


 その仲間達は死んでしまった。

 オーガ達と相打ちになって。


「酷すぎる……こんなのってねぇよ!」


 などなど。

 ガーベがそんな事を考えながら、ぼんやりと前と見つめていると。


「ガーベさん!!」


 そんな元気で嬉しそうな魔王。

 もといリーシャの声が聞こえてくるのだった。

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