第七話 ゴブリンと美少女、ナニも起きないわけがなく

 時は数日後。

 場所は件の宿屋のある街から、だいぶ離れた小さな村。


「なるほど! つまり、この村はゴブリンとオーガ…….その両方に襲われて困っているのですね!」


「そういうことですじゃ。ギルドに頼んだ段階では、ゴブリンだけだったのが、どこからかオーガも…….やはりクエスト内容が実際と違うとなると——」


「心配はいりません! リーシャにお任せです! それにこちらのガーベさん!」


 ずずい。

 と、リーシャに背中を押されるガーベ。

 ガーベは無理矢理この村の村長——先ほどからリーシャと話しているジジイの前に押し出される。


 クソ気まずいので、ガーベが軽くお辞儀をすると。

 リーシャは村長が何かアクションするよりも先に、その村長へと言う。


「この方はすごいんです! 正義感が強くて、どこからともなく助けに現れて、魔物をすぐに倒してくれるんですよ!!」


「おぉ、そんな方がこの村に……ありがたい限りですじゃ」


 言って、なにやら拝んでくるジジイ。

 ぶっちゃけうざい。


(はぁ、次の配信内容どうすっかなぁ。この村、ジジイとババアばっかで襲ってみた系配信ものできなそうだし)


 そもそもリーシャがそばに居たら無理だ。

 リーシャの固有スキル『ジャスティス』がある限り、悪いことしたらリーシャに瞬殺されるリスクが付きまとう。


(でも、リーシャをメインに据えてリスナー稼ぎたいから、離れるわけにもいかねぇし)


 マジでだるい。 

 などと、ガーベがそんなことを考えている間にも。


「それじゃあ行きましょう、ガーベさん! 目的地はあそこの山の中腹にある洞窟です!! えいえい、おー!」


「はいはい、えいえーい」


 そうしてテチテチ、クソダルい行軍が始まったわけだが。

 天才的なガーべは天才的にも天才的な発想をしてしまった…….それは。


(ゴブリンと戦ってる時に、わざと足引っ張るとか良くね?)


 そして、リーシャをゴブリンに敗北させるのだ。

 ゴブリンが人間のメスに、どんな行いをするかは有名だ。


(その一部始終を配信すればいいじゃん!)


 天才すぎる。

 さすがはガーベッジ・ダスト。

 流れるように配信のネタが出てくる。


 そうと決まればさっさとゴーだ。

 とりあえず新しく作ったチャンネルで、配信を開始してリスナーに企画を説明しよう。

 さぁ、開始だ!!


「ウェーイ! ガーベチャンネルのガーベッジ・ダストでーす!」


「ガーベさん? どうかしたのですか?」


「な、なんでもない! 敵がいる気がしたけど勘違いだった! 後ろは俺が警戒するから、リーシャは先導を頼む!」


「はい!」


「…….行ったか」


 リスナーへの挨拶を邪魔するとは、マジで流れを理解していないな。

 これだから素人は困るのだ。


 ガーベはリーシャへと悪態をつきながら、小声で配信を続行するのだった。

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