第5回 頭に「お」のつく映画といえば?

 映画の主役といえば、一番画面に映る時間が長い、メインの役どころ……ですが、そんな人たちが「芝居」しておらず、脇役たちが「熱演」している映画があります。


 今回は、頭に「お」がつく映画、「おニャン子・ザ・ムービー 危機イッパツ!」を紹介します。


 1986年の邦画。監督・脚本は原田眞人、出演はおニャン子クラブ、桃井かおり、原田遊人、関根勤、江口洋介、宮川一朗太、伊武雅刀、山口良一、安岡力也、今井萌、逸見政孝、梅津栄、小野武彦ほか。


 人気アイドル「おニャン子クラブ」の全国縦断コンサートツアーの裏で動く人間模様を描く内容となっています。


 仲間うちで「マージャンボーイ」と呼ばれている麻雀好きの青年がいました。

 麻雀仲間のひとり「マラソンボーイ」が「自力で走って、おニャン子クラブのコンサート会場のスタジアムまで行く!」と断言します。

 結構な距離があり、走り続けても何日かかるのか……しかし彼は考えを変えず、感化されたマージャンボーイもそのマラソン旅に同行することになります。


 おニャン子クラブのメンバーに檄を飛ばす女プロデューサー・帆立ホタルは、離婚した後も小学生の息子と交流がありましたが、息子は母のコネでスタジオに入ってはおニャン子クラブのメンバーたちの写真を隠し撮りし、生写真の闇取引グループに売っていたのです。


 一方、おニャン子クラブのメンバーたちの住居に不法侵入し、私物を盗難してはオークションで売りさばく悪党連中がいました。


 オークションの参加者たちの前で、主催者であるエース(若い頃の関根勤が怪演)は、入手したおニャン子クラブメンバー・国生さゆりの髪の毛から細胞を培養し、クローンで作った声帯と唇を有する人工知能によって「国生さゆりの肉声と会話できる装置」を見せつけます。(またアホなものを……)


 おニャン子クラブの人気メンバーが、脱会したり、入れ替わる悲しみを終わらせるため、クローンでおニャン子クラブのメンバーを創り出して手元に置き、時限爆弾で本物たちをコンサートで殺害、自分だけの思い出を永遠のものとする……エースは、そんな幻想に取り憑かれています。

 富豪であるエースは、海外から爆弾を輸入するなど、着々と幻想を現実に近づけていくのでした。


 果たしてコンサートは無事に行われるのでしょうか……?


 秋元康先生が関わっていた「おニャン子クラブ」を主役とした作品なのですが、当時人気絶頂で多忙を極めるグループとあって、映画のために撮影できるスケジュール的余裕は、ほぼありません。


 そこで、監督・脚本を務めた原田眞人は、コンサートツアーに同行してドキュメンタリー映像を撮影したうえで、役者を使って「ツアーの裏側、水面下で周りの人たちが動いていたドラマ」を作り上げました。


 逆に言えば、脇役は熱演しているけれど、主役が芝居する「新規映像」がほとんど無い映画……という点では、とても珍しい造りになっています。


 夕方に「夕やけニャンニャン」を放送し、「おニャン子クラブ」がブームだった頃、「セーラー服を脱がさないで」などは知っていたけれど、「うしろゆびさされ組」の歌う「象さんのすきゃんてぃ」や「バナナの涙」も、よく聞くとエッチな歌詞だったんだなあ、と大人になって今更ながら発見しました。


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