第9話

『今週末はハロウィンでーす!』

ニュースを見ていると街全体がハロウィンで大盛り上がりな映像が流されていて、ソファーに座って奏多はボーッとそれを眺めていた。

するとそこに勢いよく愛佳が入ってきてスマホの画面を見せながら「お兄ちゃん!ハロウィンだよ!」と大声で言ってきて、ソファーの上に倒れてしまった。

「あれ?お兄ちゃん、大丈夫?」

「だ、大丈夫…そうだな、ハロウィンだな…」

「狂恋もハロウィンイベントで新規カードが出るよ!でも、マルスは違うんだよね…」

そう言って見せてきた画面には、新規カードの画面になっておりそこにマルスの姿はなかった。

少し残念だな…と思っていると机の上に置いてあった奏多のスマホに通知が来て、取って見てみると…


吸血鬼の格好したマルスの写真があった。


琉斗からの写真で見た瞬間、奏多はその場に崩れてしまいそれを見た愛佳が「お兄ちゃん!?」と驚いていた。

すぐに起き上がり、愛佳に画面を見せてからすぐに返事をした。

するとメッセージではなく、電話で返ってきて奏多は落ち着いてから通話ボタンを押して出た。

「も、もしもし…」

『こんばんは、奏多さん。写真気に入ってくれましたか?』

楽しげに問い掛けてくる琉斗に奏多は顔を真っ赤にしながら気に入った事を伝えると相手は嬉しそうに笑い出した。

「衣装とか非公式ですよね?」

『はい、今回のイベントのリリィが吸血鬼なので…マルスが吸血鬼だったらこうじゃないかなー…とゆいと考えて作りました』

「凄いですね…」

『それで相談なんですが…』

“相談”という単語に何故か畏まってしまい、ソファーの上で正座をして聞こうとすると目の前にいるのか『普通に聞いてくださいよ』と見透かされてしまい、ちゃんと座って話を聞いた。

「そ、それで相談とは…」

『ああ、もし良ければハロウィンコスプレしませんか?ゆいのスタジオで』

「え、それは…!」

吸血鬼マルスを生で見れると考えるとすぐに愛佳に伝えた。

愛佳も「行きたい!」と言ってきたので、それを伝えると嬉しそうな声色で伝えてきた。

『それじゃあ詳しいことはまた後日決めましょうか』

「は、はい!楽しみにしていますね」

『はい、それではまた…』

通話が切れてスマホを机の上に置くと、奏多はソファーの上でゴロゴロ転がって幸せを噛み締めていた。

すると視線を感じ、視線の方を見るとニヤニヤ笑っている愛佳とバッチリ目が合ってしまいすぐに起き上がった。

「楽しみだね、お兄ちゃん!衣装も考えなきゃ!」

「そ、そうだな!衣装考えるか!」

2人はハロウィンっぽい衣装を色々考える事にした。


そして撮影当日。

ゆいのスタジオに行くと、吸血鬼マルスとゾンビメイドリリィが出迎えてくれて、奏多はドキドキしながらジーッと上から下までマルスを見てしまった。

「…奏多さん、そんなに見られると恥ずかしいです」

「へ!?あ、ご、ごめんなさい!」

「冗談ですよ、たくさん見てください、奏多さんなら色々見られても…」

手を取って手の甲に口付けてくる琉斗に顔を真っ赤にして慌てていると、ゆいが間に入ってきて離してくれて琉斗がムスッと不機嫌になった。

「ゆい…何で邪魔をした?」

「ハロウィンコスプレイベントなんだから、早く着替えて撮影したいだろ?奏多さん、愛佳ちゃん、いつものお部屋使って!」

背中を押されて部屋を出ると、すぐに奏多と愛佳は作った衣装に着替えてメイク等を済ませてスタジオに戻った。


奏多は狼男のレオンで耳や尻尾が生えていて、愛佳はキョンシーのラッキーの格好をしていた。

奏多の格好を見た瞬間、琉斗が近づいてきて抱き締められてしまい奏多は顔を真っ赤にして驚いていた。

「りゅ、琉斗さん!?」

「ゆい、飼っていいか?」

「待て待て待て、やめろやめろ」

すぐにゆいが引き剥がすと、4人は撮影を開始した。

琉斗の番の時は奏多もスマホでゆいの後ろから撮影をしていた。

コンビで撮るってなった時は、琉斗の距離感がおかしく奏多はドキドキしながら撮影に挑んだのであった。

そして一通り撮影を終えると、休憩になり愛佳が「あ!」と何かを思い出した様に声を上げてゴソゴソと何かを探り出した。

ゆいと琉斗が首を傾げながら待っていると、出されたのはクッキーやカップケーキが入った袋だった。

「お兄ちゃんと一緒に作りました!ハロウィンという事で!」

「は、はい、作りました!良ければどうぞ!」

奏多が琉斗に渡すと、琉斗はお礼を言ってきて奏多は嬉しそうに笑った。


「…どうやって保存すればいいかな…」

「ちゃんと食べろよ、琉斗」

ボソッと呟いた琉斗の言葉に即座にツッコミを入れたゆいであった。


撮影が終わり、メイク等を落として普段の姿に戻った奏多は琉斗と一緒にベランダでお話をしていた。

「今日のハロウィン、凄く楽しかったです。琉斗さんありがとうございます」

「いえ、俺とゆいも奏多さん達としたかったので…一緒に出来て良かったです……あ」

何かを思い出した様に小さく声を上げた琉斗に奏多はきょとんとして見ていると、相手の表情が意地悪な笑みになって寒気が来てしまい少し後退りをした。

「奏多さん。トリックオアトリート?」

「………へ?」

まさかの言葉に首を傾げた。

先程お菓子を渡したのでその事を言うと「それと今は違うので…」と言われてしまい、何かお菓子を持っていないか探したが見つからず部屋から持ってこようとしたが後ろから抱き締められてしまった。

「残念ですね、奏多さん。それじゃあ悪戯という事で…」

何をされるのかドキドキしていると首筋にチュッと口付けられてしまい、思いっきり吸い上げられてしまった。

ピリッとした痛みに何をされているのか分かると耳まで真っ赤になった。

「キスマークついちゃいましたね」


「……こ、こんなの悪戯じゃないですよ」


楽しそうに笑う琉斗に対して奏多はそう言い返したのであった。

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