第44話 みそとせの湯気

お椀の中で

あっという間に 熱々から 

ちょうどいい温度に 冷めていく


ご飯とおかずに うつつを抜かしてないで

温かいうちに 

冷え切る前に

毎日 美味しく 召し上がれ


あなた と わたし と あの子たち


続ける 続く 

続けられますように


願う 日々の食卓








*******


めずらしく作品についての創作あとがき。


 書き上げたあと、うーん、読み直してみて。

 ふと、ひとつの言葉を書き足したところ。

 随分と作品が、テーマが、印象ががらりと変わってしまいました。

『登場人物が勝手に動き出す』なんて言葉をよく耳にしますが、まさにそんな感じ。

 主人公の彼女、旦那さんとの間に子供を授かったようです。


 最初は熱々の恋愛結婚でも、まあ落ち着いていくものです。

 ご飯とおかず、つまり日々の生活や仕事のあれやこれに、かかずらってばかりにいないで。

 自身の趣味にのめり込んでばかりいないで。

 夫婦というものは互いに大事にし合い、恋のように落ちたり燃えたりするもんじゃなくて、家族愛を子育てのように育てていく。

 冷めた味噌汁を温め直すというわけにゃいかんのよ、夫よそこんとこ分かってるな?

 という、やや山椒は小粒でぴりりと辛い感じの、妻の詩でありました。


『あなた と わたし』 に


『あの子たち』 を


 ちょいと加えてみたところ。

 ほかほかの湯気のたつ、食卓に様変わりしました。


 うむ、こちらのほうがしっくりくるな。

ということで、この詩の発表となりました。


 ちなみに、『みそとせ』とは30年、味噌汁の味噌にかけた遊びごころです。





 


 




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