第2話 居酒屋《後半戦》

「たっだいま〜。あれ? キミ、どうして詰めちゃったの?」


「何でよ〜。カオリの横が良いとか? ダメでしょそんなの。カオリ彼氏いるんだから。彼氏のいる女のコとくっついちゃ駄目でしょ。そういうの良くないでしょ。断じてッ!」


「あたし? あたしは……ほら、別に彼氏とかいないし……だから、くっついても駄目じゃないっていうか……」


「むしろ……くっつきたいと言うか……」//小声で


「な、何でもない!とにかくそこは駄目ッ! キミは元通りこっち来て、ハイッ!」


「で、また前を失礼〜。よっと! ドーン! ウリウリ」


//SE 服が擦れる音


「キャハハッ! また膝に座っちゃったァ〜。だってェ、一歩じゃムリなんらもん」


「あれだよ。焼肉食べる時、白ゴハンにワンタッチするじゃない? あれあれ。タッチ・アンド・ゴー」


「えッ……しない……の? 焼肉アンド白米じゃないの? タッチしないの?」


「なん……だと……。ビビンバ……」


「お金持ちかぁ〜ッ! そりゃッそりゃッ! ああゴメン。ウリウリしすぎた! キミの膝、座り心地良くてッ! アッハッハッ」


「えぇ? 別に酔ってないよォ〜。なんならまだ足りない。カルーアミルクお代わり頼んでェ〜」


「らいじょうぶゥ〜。部屋、近いしィ」


「どこって……歩いて……15分くらい? いつもは駅までチャリだよ。今日は飲むから、歩いて来たの」


「ングッ、ングッ……プハァ〜! キミはァ、飲んでる? 顔、赤いよ。ほどほどにねェ〜」//喉を鳴らして


「あたしィは平気ィって、言ってんじゃん〜ッ。今日はもっと飲むのォ〜。飲む必要があるんだからァ」


「どうして必要かって? いくらァ、キミとあたしの仲でもォ、それだけは言えないィ〜」


「そう言えばさァ〜、お肉の話ね。してたじゃんッ、お肉! 焼肉の話ィ〜」


「そう。お肉、好き? どこのお肉が好き?」


「カルビかぁ。ヘェ〜。脂っこいの、好きなんだ」


「この間の河原でやったバーベキューでも、黙々と肉ばっか食べてたなァ〜って」


「うん。あたしもいたよ。気が付かなかった? ひっどいッ! こんな可愛いセンパイに気が付かないなんてッ!」


「さらにひっどいッ! ちっちゃくて気が付かないなんてッ! キミも結構言うねぇ〜」


「調子に乗りました? うん。よろしい。許してつかわすぞよ」


「で、肉食系のコーハイくんは、ステーキも好きなんだ」


「えェ〜500グラムも食べるの!? まあ、その体格だもんねぇ」


「ふぅ~ん、そんなに食べちゃうんだぁ〜。大変だねェ。大変だァ」//思わせぶりに


「――――食費がね?」


「あッ、お金持ちだった。アハハッ」

「――――え? 違うの? そっかァ。食いだめかァ。卑しい奴めッ」


「しかしィ。ガタイ良いよねェ、コーハイくん。腕、太っといし。太腿ふともも、パンパンだしッ」


「ちょっと触らせてェ? ちょっとだけ。ね?」


//SE 服に触る音


「凄〜い。カチカチかと思ったら、意外とソフトなんだ。アハッ。くすぐったかった? ウリウリ」


「あたしなんて、ふにゅふにゅだよ〜。触るゥ?」


「……いいよォ?……ほらァ」


「なーんてウッソ〜! 彼氏でも無いのに触らすわけないれしョ〜。触りたかった? ヘッヘーン。残念れしたァ」


「じゃあ自分も彼女にしか触らせない? ケチッ、ケチかよォ〜。減るもんじゃなしィ〜」


「じゃあさ、あたしをキミの、彼女にしてみるゥ?」


「そしたらもっと触っていい? あたしのも、触って……いいよ?」//僅かに緊張


「……何よォ、黙っちゃって〜。冗談に決まってるでしょ〜。だってキミ、からかい甲斐があるんだもん〜」


「やぁだぁ〜。怒んないでェ〜」//駄々を捏ねる感じで


「カルーア飽きたなァ。次は何飲もうかなァ。え? 飲み過ぎ? まら、平気らよゥ」


「ぶゥ〜。ヤダァ、まだ飲みたいィ〜。平気ッ、平気らよォ〜!」


「じゃぁ〜、それちょうだいッ。ングッ、ングッ、プハァ〜。にごり酒、うまァ〜」


「ポテト食べたい……食べさせてェ?」//甘える感じで


「あ〜ん……あ〜ん……」


「あ! あ! んッ! どうして食べさせてくれらいのォ〜。アァン〜」//怒ってからの嘘泣き


「センパイのォ〜、れいめ、命令らぞッ。そうそう、最初から素直に……ぅおいちィ〜!」


「あ、ちなみにさっきのは『あ~ん』とぉ、あたし泣いちゃうッ! の『アーン』を掛けたんだよ? 分かんなかったでしょ〜。ダメだなァ〜」


「そんなんじゃ、女のコにモテないなァ〜。えェ〜。そうなの? 今までモテた事、ないの?」


「彼女、居ないんだァ。へェ~。ふぅ〜ん」//期待


「ねェ……どんな娘が好みなの? お姉さんに教えてみ? いい娘いたら、紹介してあげるよ?」


「それとももう誰か好きな娘とか、いる?」//不安


「いいじゃん。あたしとキミの仲じゃん。どんなスタイル? 性格は?」


「どんなでもいいって、そんないい加減な事で良いわけェ? あれだ、『僕のこと好きでいてくれるなら〜』だ」


「ホントに、そうなんだ。ふぅ〜ん……」//期待


「えェ? 酔っ払う女はイヤ? じゃあ、あたひはセーフだ。酔ってらいし。ギャハー」


「ポテト食べさせてェ。あ~ん」


「小鳥っぽい、あたし。鯉りゃないよ。小鳥。あ~ん」


「あ、カオリィ、写真撮って。ツーショ、コーハイくんと。えェ〜、いいじゃん。撮ろ?」


「ほらァ、もっとくっついてェ……手ェは、ここね。あァン、もうッ。めんどい! 乗っけてッ!」


//SE 膝に乗る音


「エヘヘェ〜。やっぱ座り心地良好ォ〜」


「ひゃゥんッ! またァ、腰掴んだァ。エッチィ」


「ピースゥ! カオリィ、ありがと。見して? ちょっとォ、なァんで顔、背けてるのよォ〜」


「ワンモアチャンス! カオリッ、ワンモア!」


「キミは動いちゃだめェ〜。ちゃんとカメラ見て、手はあたしの肩だよ」


「おぉ、今度はちゃんと撮れたね。見てみてェ。ね、可愛いでしょ。可愛いって言ってッ」


「ウフフゥ〜。よろしい」


「ぁふ……。何か、キミに寄っかかってたら。眠くなってきちゃったァ……ちょっと、寝る」


「駄目じゃないよ。寝るゥ〜……スゥ」


「スゥ……スゥ……もう飲めにゃい……スゥ」//寝息

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