ボイコット

「今日は、ミック技師さんがお茶当番ですよね?」

「……」


「お茶当番の日は、天使長のお水当番でもあるんですよね?」

 天使長は、もともとはミックの猫。今では、編み手さんの水火ミカの方に懐いている。

「どうしてお茶も入れないし、天使長のお水もほったらかしなんですか」


「……」

「技師さん?」

「……」

「お返事は、ミシェル?」

「ミシェルって、呼ぶな!」


「にゃーん」

「うるさい、天使長!」


「あらあら。ミックはずいぶんとご機嫌斜めだこと」

「……」


「にゃーん」

「いらっしゃい、天使長。新しいお水をあげるから」

「にゃーん」


「きみは」

「はい?」

「ぼくより、天使長の方が好きなのか」

「はい!」



 やっぱり、夏至の夜に編み手さんの夢に出てきたのは猫だったんだ。

 それから、一週間、ミックはお茶当番も天使長のお水当番もボイコットした。


 ミックは、編み手さんといっしょに仕事をするようになってから、からの反動だろう、いっぺんに中身が子供になってしまった。まったく困ったものだ。

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