【プロトプロット】クラスとスキルが悪役令嬢になれと言うので、やられ悪役令嬢を目指す事にしました。

@7938995

第1話 ここまでが第一目標 いつか辿り着くこの話

視界に映る大人形メガ・マトンの残顔。成人男性の身長を優に超える大きさをしていたそれは、無残にも無数の穴が穿たれ、舗装された道の上で無念に膝をつき機能を停止している。

 大人形を穿ち抜いた集団は、小型の杭打ち機パイルバンカーを仕込んだ機械腕マシン・アームから排圧の為の水蒸気を上げながらある一組を追っていた。


「ちょっ、ちょっとシャーリー!あなたの用意した大人形、十分と持たなかったのですけれど!?」

「申し訳ありませんお嬢さま。どうやら博士に不良品を掴まされてたようですね。イベント終わったら抗議しましょう。とりあえずお菓子食べますか?」

「お嬢たち、喋ってると舌噛むぞ」


 追いかける先にはT型車に乗る三人の男女。砕けた口調で、障害物を避けながら運転する執事服の男、風に揺れるスカートを抑えどこかずれた事を言うメイドの女、その二人にお嬢様と呼ばれるイエローブロンドに黒のドレスを着た少女。

三人の乗ったT型車はみるみる内に集団を突き放していく。


「お、おーほっほっほっ!よくやったわ!ステュアート!パイルバンker共がどんどん離れていくわ!このまま全速力よっ!」


 少しだけ羞恥心の滲む演技で、調子のよい高笑いをしながら逃げるお嬢様。

「あ。……すまんお嬢たち、爆発するわ」

「え?」


 積まれた機関エンジンから異音が響く。空転する車輪。段差に乗り上げると同時に機関内部の水蒸気が暴走し、大きく膨張したそれに耐えきれず破裂し、

「くそー!覚えてなさいよっ!あんたたち!」

 整備不良による自爆の責任を相手プレイヤーに転嫁しながら吹き飛んでいく中、お嬢様は己の心に昂ぶりを憶えていた。

——悪役ロールプレイ楽しいかも。

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