イヤな感想をもらったら?

 小説を公開している理由の一つに、感想が欲しいと言うのがあると思います。


 実は『小説を書くこと』と『人に読んでもらうこと』は、必ずしもセットではなかったりします。

 小説を書くだけならば、ただ書いて自分で読んで終わってもいいんですから。

 書き始めのころの自分を思い出して欲しいのですが、ただひたすらノートやスマホに自分の頭の中の物語を書き記し、それだけで十分に楽しく満たされていたと思います。

 次々に浮かぶセリフや景色を文字として残し、それが増えていく様子になにかしら達成感を感じたり。

 作文も読書感想文も小論文も苦手だったのに、原稿用紙換算でこんなに何枚も書けるなんてすごい! と、自分には物語を作る才能があるかも? などと考えニヤニヤとしていた時期もありました。

 

 小説や文章を書く行為は、書くことが楽しい。楽しいから書く。これで完結しているのです。

 

 しかし、多くの人はこの書いたものを人に見せたくなる。


 それはなぜか?

 

 それは自分が書いた文章に共感して欲しいからだと思います。

 物語ならその世界や登場人物を共有し、エッセイならその考えや主張に賛同して欲しい。

 これを『承認欲求』と言う人もいますが、それとはまた少し違うような気が私はしています。

 確かに、時間を費やして書いたものをいい物だと褒めて欲しい気持ちはあります。

 けれど、ただ『がんばったね』とか『こんなの書けてすごい』と言ってもらいたいだけではなく、この登場人物が好き。この場面は感動したと言って欲しい。

 

 よく考えたら、承認欲求よりたちが悪いかも知れません(笑)

 

  *


 書いたものをWEBで公開すると、まず読まれたり、読まれなかったりに一喜一憂することになります。

(このなかなか読まれなかったりの苦悩は、また別の機会に……)

 今は、小説投稿サイトがあるので一定数の書き手がいて、書く人は読むことも多いですから、同じ数の読者がいると考えていいでしょう。

 私は、長く個人のホームページを運営していて、同じ創作系お友達数人とやりとりをする程度のひっそりとした場所で小説やブログを公開していました。

(現在は時代の流れで廃れてきて周りものホームページも減って来たので、昨年、完全に閉鎖してこちらの小説投稿サイトに移行しました)

 人は少ないのにもかかわらず、困ったことは起こるもので何度かブログや感想掲示板を荒らされたことがありました。

 これは、誰でも読める場所に小説を置いている以上仕方のないことだったりもします。


 今だと『アンチ』と言うのかも知れません。

 ただ、それにも種類があって『ただ単に私を傷つけようとする人』と『私の書いたものと相性が悪い人』と2種類いたように思います。


   *


『3行で読む気が失せた』『ゴミため』『オ〇ニー小説』『書く時間の無駄』『媚びを売って書いてる』

 前者には、こういうことをブログや掲示板といった人目の付くところに書きこまれました。

『3行で読む気が失せた』はまだ感想の類いかも知れませんが、やはり、最後まで読まなかった、あるいは読めなかったならそれは報告せずに去ればいいだけのこと。それをあえて人目に付くところに書き込むと言うのは、やはり私を傷つけようとしていると受け取れます。

 もう、10年以上前のことなのでスクショをとったりIPアドレスを開示してもらうなどのことまでは気が回りませんでしたが、創作仲間に相談したところ、相手にしないで無視をする、多くの人の目に留まる前に削除をするというのが、一番いいと言われそうしました。

 メンタルは削られましたが、嫌な書き込みを見つけたら淡々と削除をして、他の方とは仲良く会話を続けました。

 結果、3カ月程度で飽きてくれたのか気が付いたら不快な書き込みは一切なくなっていました。

 私は個人のホームページだったので、それほど多くの人に読まれていることはなかったはずです。それでも、こういう悪意を持った人に遭遇してしまう場合があります。

 今は、小説投稿サイトにてその当時の倍程度読まれています。

 なので、リスクは今の方があるかと少し身の引き締まる思いをしております。


 ちなみに、当時書いていた小説の内容も現在ここで公開しているものと今とほとんど変わらない、ライトノベル系の少女向け恋愛小説です。

 もしかしたら、明らかに女性作家だと分かったので、嫌がらせをして『書くのやめます』など言わせて心を折りたかったのかもしれません。


 あからさまに作者を傷つけようとした意図で書きこまれた感想は、感想ではありません。

 そういったものに傷つけられて、筆を止める必要はないので、反論したい気持ちは分かりますが、あまり相手をせずに削除することが効果的です。

 そういう昔で言うとアラシや今で言うとアンチコメントが残っていると自分自身が何度もそれを目にして傷つきますし、楽しんでくれている読者が目にしたときにも不快でしょう。

 また、不快なコメントを残していると何を勘違いしたか『こいつにはこういうことを言っていいんだ』と思いこんで、さらに似たようなやからが寄ってきます。

 昨今耳にする『炎上』というのは、この傾向があるかと思います。


 精神の安寧の為にも、作者が不快と感じたり、傷つけられたと思うコメントはあまり正面から受け止めずにスルーりょくを使い、相手にしないことが賢明だと考えます。


   *


 また、後者にあげた相性の悪い人の感想は少し対応が難しいのですが、基本は同じであまり相手にしないのが良いと思います。

 耳が痛いことを言ってくるのと、相性が悪いはなかなか判別が難しいのですが、書くモチベーションが下がってくるようなコメントは、削除するまでは至らなくても即返事をしない、またはまったく返事をしないなどの塩対応で良いかと思います。

(基本的には、私は全部のコメントにお返事はしておりますがまれに本当に見逃して忘れてしまうこともあるので、そのような場合があったらごめんなさい……)


   *


 以前『親に捨てられて闇組織で育ち殺し屋になった』という内容の掌編を書いたことがあります。

 その時に『親がいないからと言って、そんな境遇になるとは現代社会においてあり得ない』というコメントをもらいました。


 もちろん、あり得ません。


 そもそも、現代に闇組織も殺し屋も存在しないのですから。

 そして、小説はフィクションです。

 なのに、そんなあたりまえの指摘をしてくるなんて無粋な人だと思いました。


 しかし、冷静になってそのコメントを書いた人の気持ちを考えたときに、この人はそういう境遇の人だったのではないか? と思い至りました。

 悲しいことに親と死別したり、虐待などで一緒に暮らせなかったりなど、似たような境遇は存在します。

 だからと言って、それに配慮してそこを削ると物語が根底からくつがえり、物語として成り立たなくなってしまう。

 私の書いたもので、その人は傷ついたと言いたいのかも知れません。


 かといって、私がその人を傷つけようと思って書いたわけでもない。


 その場合、私は書いたものを直した方がいいのでしょうか?


 私の場合、直せる場合は直します。WEBの良いところはすぐに修正が可能なところですから。

 しかし、その物語は直せませんでした。

 掌編の中で主人公の孤独さや寂しさを際立出せる、あるいは殺し屋という特殊な仕事をついた動機付けとしてどうしても欠かせない要素だったんです。

 その設定を変えると、物語として成り立たなくなってしまう。

 私は、そのコメントを削除も無視もできなかったので、なぜその設定が必要なのかということと、決してそういう境遇の方を傷つける意図ではなかった旨を説明し、最後に作品の修正も削除もしないことをお伝えしました。

 そうしたところ、相手の方からはそうした設定を不快に思う人もいるということを理解してもらえたらそれでいい。作品を下げる必要はないと一定の理解を得ることができました。


 

 こういった設定や登場人物に対する不快感を伝えてくる方は一定数います。

 その場合は、先のアラシやアンチとは違い、相手の意見もひとつのご意見として受け止めて、その上で物語としてどうしても必要な要素かどうかを考え、必要である場合はその旨を説明すると理解を得られたりします。


 書くことが第一優先ですから、そこにかならずしも多くの時間や労力を割く必要はないので、話が平行線の場合は最終的には相手の希望は作品の修正や削除か、こちらが筆を折ることなので一度説明したらその後はスルーで良いかと思います。

 さらにしつこいようなら削除やブロックも致し方ないでしょう。


 *


 ただただ小説を多くの人の読んで欲しい、いいねと言って欲しくて公開しているのに、傷つけられたり、意図していない意見をもらうこともある。

 これは誰でも見ることができるスペースに、小説を公開している以上避けられないことです。


 私たちが自由に書くのと同じように、読者もまた自由に感想を書く権利があります。

 それをどう受け取るかは、また私たちの自由だったりもします。

 ひとつひとつ大切な感想ではありますが、その中にはどうしても受け入れがたい物も存在する。

 そいうときは、正面から受け取らずに一度、保留中の箱にいれて寝かせておいたり、二度と開かない場所に封印したり。

 あきらかに敵とみなしたときは切って捨てたりしてください。


 お客様は神様ですという繊細な書き手さんが多いとは思いますが、感想を取捨選択したり、気にしないスルーりょくも大切なスキルですので身に付けておくといざというときに安心です。

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