第6話

かぶと虫



突然の妻からの連絡




今日お友達来るって言ってるけど、私の誕生日のケーキ持って。




ふと気付く、今日は妻の誕生日だ。


妻は料理上手で若い頃はよく私の友達を招待して

家で手料理を振る舞ってくれていた。



今だに週末になると必ず私の友人はビール片手に家を訪ねて来る。



はずむ会話、懐かしい話

テーブルに並ぶ沢山の妻の手料理


知らぬ間に沢山積み上げられた、空き缶


毎週恒例のお楽しみ。


けれど気付くとリビングに妻の姿が無い。


先に寝てしまったようだった。


翌朝、二日酔いで痛む頭を押さえて


目を覚ますと整頓されたリビング


いつの間にか無くなっている空き缶



私の定位置になっているソファーには妻がいて休日だから放っておいてと吐き捨てる。



妻 全く、誰の誕生日やったんやろうね?


夫 お前だろう


妻 散歩でも行ったら?

  今日は私休みやからそっとしててね


 

棘のある言葉にハッとして


行く当てもなく、寝室に逃げ込む。


居場所の無い我が家



ふと考える……やはり私はかぶと虫。









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