第15話 デスゲーム1日目 2


 圭祐が違和感を覚えたのは、マイクロバスとすれ違った当たりだった。

 急に背中と股間の傷が疼きだしたのだ。

 霊体である圭祐は、厳密には痛みを感じることはない。

 ただ情報として、それが痛みであると認識していた。


 ──どくん。

 全身が何かを感じ取っている。

 この感覚はなんだ?

 全身の傷が何かを伝えようとしている。

 どくん、どくん!!

 

 デスゲームに集まる参加者たち。

 近づけば近づくほど、自分の中の何かが騒ぎはじめる。


 どくん、どくん、どくん!!


 何かが頭の中を駆け抜けていった。

 唐突に、それで確信的に、圭祐はそれを理解する。


──この中に、俺を殺した犯人がいる。


 圭祐は注意深く、周囲の参加者たちを観察した。

 圭祐のいる位置は、前方やや左側。幸いにも、ほとんどの人の顔を見ることができた。

 参加者はドタキャンなどを含め、結局は90人になったらしい。

 男女比はほぼ同じ。

 乙希の所属するオカルトコミュニティ、オカメンの人数は22名。おそらく最大の集団だろう。

 H乳牛と話していた小学生は、親と同伴で8名。

 大学生らしき集団が、全部で4つ。うちひとつは、全員が女性だ。

 数えたら46名いた。

 あとは、2、3人で参加しているらしい人、ソロでの参加者だった。


「どう? 誰だか分かった」

 乙希が不安げに尋ねてくる。

「いえ…。分からないです」

 近づいて確認すれば、分かったりするのだろうか?

 乙希からは、乙希から離れることを止められていた。

 ヒガン髑髏の啓示を受け取ったから、参加を決意した者もいるはずだ。それはつまり、霊感がある、と同意でもある。

 昼間とはいえ、姿を見られる可能性があった。余計な騒ぎも除霊されるのも御免被りたい。


 ふと、野木智美と目が合った。

 慌てて彼女は、目を逸らす。

 乙希が言うには、彼女は自分と相性が良いらしい。

 相性が良いと「縁」が強くなり、姿が見えたり、影響を与えたりもできる。

 けれど、それは本当だろうか?

 縁が強くなる理由はそれだけではない。

 生前に何らかの関係があった。

 その場合も、縁は強くなるらしい。

 俺は、どこで、彼女と会ったのだろうか?


 そのときだ。

 圭祐の脳裏に、閃くものがあった。

 どうして、そう思い込んでいたのか?

 犯人が参加者だと、誰が言った?

 

 圭祐は睨みつけるように、運営のメンバーを観察した。

 YouTuberが5名。その手伝いが5名。

 しかし、参加者と同じように、何も感じることはなかった。

 ──たったひとりを除いて。


 どくん、と心臓が高鳴った。

 肉体はなく、心臓などとうの昔に火葬されたはずだが、認識が心臓の高鳴りを感じていた。

 じっと、その人物を注視する。

 この中で明らかに異質な存在。


 そうだ。

 もしかしたら、あいつが犯人かもしれない!!

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