第5話:ストーカーなマカロン。

僕のマンションに居座ってしまったマカロン。


で、僕が会社に行ってる間はプリンちゃんとマカロンのふたりだけになる。

僕はそれが少しだけ気になった。

かと言って会社を休むわけにもいかないし・・・。


「行ってくるから・・・」


「いってらっしゃい・・・気をつけてね・・・」

「あ、おまじないのチュ〜」


そう言ってプリンちゃんは初ちゃんのクチビルにチュってした。


「おまじない?」


「そ、いってらっしゃいのチューは縁起がいいんだよ」


「ほ〜そうなんだ・・・知らなかった」

「じゃ〜毎日しなきゃね」


「うん・・・だね」


「じゃ〜行ってくるから・・・」


そう言って僕は会社に出勤して行った。

僕がいない日中もプリンちゃんは甲斐甲斐しく掃除や洗濯をがんばっていた。

で、マカロンだけど・・・

することがないマカロンは暇を持て余してプリンちゃんにくっつき倒していた。

台所、居間、トイレ、ベランダ、どこへ行っても後ろをついてきた。


「あのさ・・・ついてこないでくれる?」


「暇なんだもん・・・ねえ、仲良くしようよ〜」


「マカロン、あなたストーカー?」

「初ちゃんの前で、なんでもするって言ってたでしょ?」

「私はお部屋のお掃除するんだから、暇でしょうがないんなら、あなたは

洗濯とかしてよ」


「やり方知らないもん・・・」


「初ちゃんにウソついたの?・・・そういうのズルいよ」

「マカロンはウソツキインコって新しい品種だね」


「だって・・・」


「なにもするつもりないんなら、ソファにでも座ってテレビでも見てれば」

「せめて私の邪魔するのはやめてくれる?」

「そばにいられると、うっとうしいから・・・」


「ねえ、ほんとは俺のこと好きなんでしょ?」


「ほんとに空気読めない人だね」

「普段から私のあなたに対する態度、見てたら分かるでしょ?」


「私は、あたなにはまったく関心ないから・・・それはおばあちゃんちに

いた時から何度も言ったでしょ」

「私の嫌がることいっぱいしてきたでしょ?」

「それに同じインコでも相性ってものがあるの、価値観の違いとかね」


「一緒にいるの無理な関係ってあるでしょ、マカロンと私はそれだよね」

「マカロンはいいふうに考えても、ただの友達」

「どこまで行っても平行線・・・けっして交わることはないの」


「わ〜はっきり言うね・・・だめ押しだよね」

「あのさ、俺とプリンちゃんと初ちゃんで三角関係とかってならないの?」


「ならない・・・ぜったいならない!!」

「あなたは初ちゃんと私の間には入れないの・・・一ミリだってスキないからね」

「だから、私はほんとはマカロンと一緒に暮らしたくなかったの」


「ずいぶん嫌われたもんだね」


「嫌われるようなことしてるのは、あなたでしょ」


マカロンはスネたみたいにプリンちゃんのお尻を指でツンツンつついた。


「もう、人のお尻つつかないでよ」

「あっちって・・・初ちゃんに言いつけるよ」


「あ〜あ、退屈だな・・・」


「そうやって毎日、なにもしないでプラプラして過ごすつもり?」


「だって俺って基本、働いたことないんだもん」

「おばあちゃんに飼われてた時から、ずっとプー太郎してたし・・・」


「これからも、毎日こんな感じって、まじでウザいんだけど・・・」

「そうだ、ペットショップにでも就職したら?」

「ペットショップのケージに入って、お客さんに愛想ふりまいてたらいいんだよ」

「そしたら少しは暇つぶしになるでしょ」


「え〜なんで俺が客に愛想なんか振りまかなきゃいけないんだよ」


「もしかしたらどこかのお金持ちに見初められるかもよ」

「そしたら、リッチじゃん・・・贅沢できるよ」


「いくらリッチになっても、どうせケージの中だろ?」

「そんなの自由じゃないし・・・」

「もういいわ・・・寝る・・・」

「寝るからね、しばらく起こさないでよ」


「そのまま、ずっ〜〜〜〜と未来永劫起きてこないでくれる?」


「そこまで嫌わなくても・・・俺が君になにかした?」


「自分の胸に手を当てて、よ〜く聞いてみなさいよ」


「んん〜〜〜清廉潔白、品行方正・・・善意のカタマリって言ってるけど・・・」


「バカ・・・ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う」

「だから嫌われるのよ」

「初ちゃんがいるときは猫かぶって・・・いい子ぶって・・・」

「情けないって思わない?」


「思わない・・・ってかさ、ほんとにもう寝るから・・・」


そう言ってマカロンは寝てしまった。


「インコに戻っちゃえばいいのに・・・・」


こういう日が、これからもずっと続くんだと思うとプリンちゃんは憂鬱しか

なくなるのだった。

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