第3話 復讐の依頼
今日の女はマグロだった。最悪だ。世の中にはどれだけ気持ちよくさせても一切反応しない奴がいる。
こういう女に当たって自分って下手なんじゃないかって悩む男がいるが、それは勘違いだ。
下手なのは女の方だ。中には不感症で本当に感じていない人もいるが、大抵は自分の表現の仕方を知らないからマグロになる。
マグロ女の9割は過去に自分に関するトラウマがある。だから、何度も抱いて心を少しずつ開いてやればマグロは治る。
ただ無理にこじ開けようとしたらぶっ壊れるし、所詮ワンナイトの関係でしかない女にそこまで労力を割いてやる理由はない。
だからマグロに当たったらオナホだと思って使うのが一番だ。魚だけに締め付けは良いこと多いからちょうどいいし。
女がシャワー浴びるのを待ちながら、若干イライラしてアイコスを吸っているとスマホの着信音が鳴った。
「チッ。誰だこんな時に気分の悪い」
そう思いつつも確認するとアキだった。正直出たくないが昨日あんなこともあったし仕方なしに出る。
「よぉアキ。重要な話じゃないなら時間変えて欲しいんだが」
「重要な話だよ」
アキとは思えない冷えた声に何かあったことを察知する。
「分かった。ちょっと待っててくれ」
そう言ってシャワー室まで移動しマグロ女に声をかける。
「悪い急用ができたから先に出る。ホテル代は置いておくから支払い頼んだ」
オナホ代わりにした詫びも込めて万札一枚置いて部屋を出る。
「もういいぜ。昨日のことか?」
「そう。今日二人で話した」
あれから何があったのかアキは事細かく話した。
俺の中のイメージでは信じられないような話が大半だったが、嘘が嫌いなアキが言うのだし事実なんだろう。
「それは大変だったな。あの女のことはどうでもいいが、お前は大丈夫なのか?今からでも飲むか?」
「ありがとう。僕は大丈夫だよ。でも一つお願いしたいことがあるんだ」
「俺に叶えられることなら構わないが」
「むしろ秀にしか頼めないことだよ…」
ごくりと唾を飲み込む音が聞こえる。
「秋とあの男を壊してほしいんだ」
アキから放たれたとは思えない冷徹な声に危うくスマホを落としそうになった。
「どうやって?」
「あの男から秋を身も心も寝取って、何もかもを奪い取ってから捨ててほしいんだ」
俺は電話相手が本当に俺の知っている清水アキかつい確認してしまった。
人を傷つけることを何より嫌い、俺が女遊びをすることにも反対だったあのアキが、俺にあんなに好きだった彼女を壊せと?
一体何があれば人はここまで壊れるのか。
「もう一度考え直してから頼みにこい。突発的な怒りのためにそんな面倒臭いことしてあげるほど俺は優しい心の持ち主じゃない。それはお前が一番知ってるだろ、アキ」
「分かったよ。明日また電話する」
「それがいい。またな」
アキは明日また同じ頼み事をする。ずっと横で見てきた俺にはわかる。
それでも心優しき親友が、俺みたいなクズにまで堕ちないことを願うくらいは許してほしい。
人を恨むようになったら人間は終わりなのだから…
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