第17話 その勇者、また増える


「やはり、見れば見るほど美しい槍だな。」


 今日のトーナメント2回戦が終了した後、俺の対戦相手だった八千草やちぐさ サクラ先輩が俺の宿舎を訪ねてきた。


「表の天下三名槍てんかさんめいそうと対になる『裏』の日本号です。」


 サクラ先輩は、もう既に巫女装束から制服に着替えており、なんか少し残念な気が・・・


「あら?巫女服姿の方がよろしかったかしら?」


 サクラ先輩ってこんな小悪魔的な顔するんだ。破壊力、パねーっす!

 いや、それよりどして俺の思ってることがわかったの?


「ふふふ、お顔にかいてありますよ。」


「あざとい」

「敵襲!敵襲ー!なのです。『新妻ニュー ワイフ正装エ○スーツ』の出番なのです!」

「え〜、今裸エプロン新妻の正装になるのは、ちょっと恥ずかしいかも」

「わ、私はユキト先輩が見たいって言うなら・・・」

「えっ、クルミんがやるなら、私も・・・モゴモゴ」


「あら、にぎやかで楽しそうね。ユキト様のお宅は。」


「いや、話しが進まないんで、この際外野はスルーでヨロ・・・」



「ご存知かもしれませんが、表の日本号は、槍でありながら時のみかどより『正三位おおきみつのくらい』の位をたまわった、正しく天下の名槍です。

 後に織田信長や豊臣秀吉の手にわたり、最終的には福岡黒田藩の手にわたって現在に至ってます。黒田藩家臣、黒田節で有名な母里友信もりとものぶ逸話いつわは有名ですね。」


 美しい姿勢で正座するサクラ先輩の凛とした姿に惹き付けられる。これこそ本当のお嬢様なのだろう。

 それに引き換え・・・


「黒田節って何それ、美味しいの?です。」

「鰹節の一種」

「えっと、鹿児島の名物かなぁ〜」


 突っ込んじゃダメだ、突っ込んじゃダメだ、突っ込んじゃダメだ・・・


「ですが、この日本号は皇室に長く秘蔵されておりました、『裏』の日本号でございます。」


 サクラ先輩は前の畳に置いた日本号にそっと触れてから続けた。


「ユキト様。天皇家の大事なお役目はご存知でしょうか?」


 ええと、確か中学で習ったような・・・


「日本の象徴?」


 サクラ先輩はどこか悲しげに薄く微笑みながら答えた。


「そうですね。日本国憲法ではそのようなまつりごとに関しての条項がございますが、古来みかどのお役目は、皇祖神こうそしんである天照大御神あまてらすおおみかみいつきまつることと、民の安寧を祈ることでした。」


 うわっ、小難しい話になってきたぞ!

 スズネなんか死んだ魚の目をしちょる。でも、さすが宮司の家に連なっているクルミちゃんは分かった顔してるから、後で解説してもらおっと。


「ふふ、もう少し話にお付き合いくださいね、ユキト様。」


「だ、大丈夫ンゴ」


 しまった!ついブラザースの口調が!

 冷たい目で見るなって!フタバ!


「こほん!では、日ノ本の八百万やおよろずの神々は、決して慈愛に満ち満ちた和霊にぎみたまばかりで無いことはご存知でごさいますね?」


 コクリと頷いておく。


「そして荒ぶる荒魂あらみたまも、人に害なすばかりではなく、人を加護することもございます。

 一神教の神とは違って、日ノ本の神々には本当に気難しい御方おんかたばかり・・・」


 ほんそれ・・・・・・


「何を他人事ひとごとみたいに涼しい顔してる、です。そこにはお兄ちゃんも含まれてる、なのです!」

「あ〜、言われてみればそうかも、ユキトくん。」

「ユキトはエロ神様」


「くっ!どうか、話を続けてください。」

「逃げた」「「逃げました」」


「そこで、作者は不明ですが人に害なす神を鎮めるために、皇家こうけ献上けんじょうされたのがこの『裏』日本号でごさいます。

 ただ一説ではごさいますが、内裏だいりに仕えていた女官が、大君おおきみのおなげきになるお姿をうれいて、この霊槍れいそう化身けいんしたと、我が家の古い口伝くでんでは伝わっております。」


「もしかして、その女官とは・・・」


「はい、我が家の氏神である多紀理毘売命たぎりひめのみこと、つまり霧姫きりひめ様であると伝わっております。」


「どおりで、この槍は美しいだけでなく、神秘的な力を感じるわけだ。」


「はい、わたくしの霊力では、相手の動きを封じるくらいで精一杯でごさいます。」


「そっか。それじゃ、お礼に良いものをサクラ先輩に見せてあげますよ。」


黒丸くろまる

『光の聖剣』


 俺は愛刀と聖剣を召喚し、前に並べて置いてサクラ先輩に見せた。


 なんか聖剣が3割増くらい輝いてないかい?

 サクラ先輩の『裏』日本号も、白金しろがねの輝きが増している・・・


「なんて神々しい宝剣・・・これ程のものは生まれて初めて見ました・・・。それにこちらの黒刀も・・・尋常じんじょうではありません・・・」


「どうかそのまま見てください。どちらも俺以外の人間が触れると害になります。」


 すると、白金色の輝きを放っていた日本号から、強烈だがとても清らかな気配を感じた。


『・・・巫女よ・・・、巫女よ・・・・・・』


「これは?」


「・・・ええ、ではこの方で相違ないと・・・」


『・・・』


 サクラ先輩は日本号と何か心で通じたのか、俺に三指を付いて話し始めた。


天霧あまぎり ユキト様に申し上げます。

 只今、我が八千草やちぐさ家の氏神うじかみであらせます多紀理毘売命たぎりひめのみこと様よりご神託かございました。

 『天紀理ノ男命あまのきりのおのみことと我が一族の姫巫女がちぎりて、豊葦原中津国とよあしはらのなかつくにに迫るけがれをはらえ』と。」


「ええと、それはつまり・・・」

「おめでと。ハーレムパーティー増強」

「うきぃー!どうしてお兄ちゃんはこうもひょこひょこ女を落としやがる、ですぅ!」


 頬を名前の如く桜色に染めたサクラ先輩が、深々と三指を付いて宣言した。


「旦那様。どうか、幾久いくひさしう。」



「代表戦選抜 3回戦を行う。2-A 最上もがみ トキカネ。1-A 九重ここのえ フタバ。両者前へ!」


 昨日、わが天霧家では、サクラ先輩の突然の『幾久しう』宣言で仮初かりそめの平和は破られた。


 『私が正妻よ』といち早く覇を唱えたフタバとスズネ(妹のお前が何故!)に対して、『側に居れるだけで良い』と健気に男の庇護欲をくすぐる第2勢力のクルミちゃんとミオちゃん。『名よりも実を取るわ』と、ある意味魏の武帝 曹孟徳そうもうとくの如き政治力を見せたサラサとサクラ先輩の第3勢力。


 天下は正に三国鼎立さんごくていりつの様相を・・・ぶっ!


「ほらっ!変なこと考えてないで、フタバの応援しなさいよ〜!天霧組で勝ち残ってるのは、ユキトくんとフタバしか居ないんだからぁ!」


 知略のサラサ(笑)に叩かれた・・・


九重ここのえ。3回戦まで進んだ実力、褒めてやる。

 だが、僕は御三家である久世くぜ家の次席家老家 最上もがみ家の次男だ。

 九重ここのえ家の分家の分家でしかない君とは生まれが違うんだ。」


「だから?味噌っかす??」


「ふざけるなー!もう許さない!怪我しても後悔するなよ!」


「両者下がって!初めっ!」


 結局、主審の話なんて誰も聞かないのね・・・要るのか?それ・・・


「あー、ダメじゃね?あの先輩。印を切るのが遅すぎるし、式の構成がなっちゃいない!」


「あっ、フタバ相当怒ってるわ、あれ。」


「うわあ、先日拙者達と工夫した圧縮術式を使ってるでござる!宝具をユキト殿並に展開しているでござる!」


「『ゲート オブ バビ〇ン 』ンゴー!」


 フタバの頭上に召喚された、数百の剣や金剛杵こんごうしょ等の様々な宝具が展開され、相手に向かって発射された!


ドガンドガガガドンドン!


 宝具の雨が綺麗に相手の周りだけ避けて石畳に突き刺さった。


「降参する?」


 フタバは第2波の宝具を展開させた上で、降伏勧告した。第2波の数の方がえげつない!


「こ、降伏します・・・」

「ん」


「勝者、1-A 九重!」



*************


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