隣人であるかのような。


 この作品を読んでみて、まず感じるであろうことは「距離感の近さ」である。
 あらすじ欄にある「似たような症状を抱える方は多いのだろうなと思う」という一文は正確なものだった。


 タイトルにある通り、この作品は「適応障害」と診断された経緯やこれからの様子を描いたものである。
 社会人の方であれば、勤務状況にしろ、起こった症状にしろ、上司様をはじめとした周りの反応にしろ、実にありふれたものだと感じられるのではないだろうか。

 こう言ってはなんだが、
 人(他人だけでなく自分自身も含め)の体調より、仕事の進捗を考える人もいるだろうし、現在でも昔の「精神論」がまかり通っている職場もある。
 ただでさえ激務の中で、要となる人物が抜けてしまった状況に混乱する気持ちも、分からないでもない。

「お気の毒に……」と思うほどの被害者も、「この野郎……」と思うほどの加害者もいない。
 そういった点も含め、このエッセイに当てはまる方々は非常に多いものと思われる。

 そんな中でも、優しさは確かにあって、そのおかげで前向きな気持ちで読み終えることが出来た。(あくまでレビュー時点の話ではあるが)
 心療内科に訪れた際の先生の言葉など、読んでいるこちらの心まで染みわたる場面もあり、読みごたえがある。

「隣人の書いたエッセイ」と言っても良いのではないだろうか。

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