第4話 これが男の娘というやつか

「何かあった? レン君。いつもに増して雰囲気が暗いけど」

「……自己嫌悪けんお中」


 机に突っしていると高い声が前から聞こえてくる。

 顔を上げ彼を見上げると、そこにはいつもと同じ女がおの男友達の顔が。

 彼は佐々木友和ともかず

 俺の数少ない友人だ。


 変声へんせい期をむかえていないような声の美形な眼鏡。

 知らない人が彼をみると女の子に見えるのだが彼はれっきとした男子。

 ある意味危険なその顔をコテリと横に傾げて疑問符を浮かべる。


「レン君がそこまで思い悩むなんて珍しいね」

「その言い方だと俺に悩みがないような楽観的な人物と言っているように聞こえるのだが」

「楽観的ではないけれど、悩むよりも行動する人物だとおもうけど」

「……行動した後に悩むこともあるだろ? 」

「確かに」


 友和トモは俺の言葉にうなずくと少し椅子を寄せて顔を近づけてくる。

 少し声を潜めささやくように俺に言う。


「その様子だと昨日のアニメは見ていないようだね」

「……見てない」

「今期は豊作ほうさくなのに。リアルタイムで見ないなんてもったいない」


 そう言われても、と思いながらも彼が重度のオタクであることを考えると、本気で勿体もったいないと感じているのだろう。

 トモほどではないが俺もアニメはみる。

 良い出会いがあればそのまま原作を買うが、何しろ俺は一人暮らし中。

 毎月送られる資金にも限界があるわけで、――本を読み本気で気に入ったものは買うが、時々こいつから借りていたりする。


「今期のアニメ、そんなに面白いのか? 」

「それはもちろん! 」

「ちょっ、声を落とせ」


 近付ける顔を手で押さえて、自制じせいうながす。

 サブカルが一般に浸透しんとうしているからといっても、ここは県内有数の進学校。

 そこまで偏見へんけんが激しいわけでは無いが、一定数サブカルに嫌悪感を抱く奴らもいる訳で。


 しかしそういった人達が嫌悪感を抱くのも無理はない。

 この高校は成績さえ残せば割と自由な校風こうふうだ。

 息抜きの仕方を知らない人からすれば、「そんなもの見るくらいなら勉強をしろ」と思うのも不思議ではない。

 自分達が必死に勉強している間に遊んでいることがわかると、自然と怒りのようなものがき上がるというもの。

 なまじ必死にやっている人達よりも成績が優れていたらより一層。


「今期は転生ものに隠れて面白いアニメがあるんだよ」

「なら今度見て見ようか」

「それが良いよ。というよりも見ないと損」

「トモがそこまで言うのは珍しいな」

「そうだね。平成に放送されていたアニメのリメイクがあったのも感動したよ」

「へぇ」


 ことアニメに関しては厳しい意見が多い彼にしては珍しい。

 よってトモから幾つかおすすめを聞き出しスマホにメモる。

 そうしているうちに教室の中が騒がしくなる。


「運動部の人達が朝練から戻って来たみたいだね」

「もうそんな時間か」

「時間を忘れるなんてらしくないね。そのスマホは何のためにあるのかな? 」


 そう言われて言葉に詰まる。意地悪そうに言い、軽くにやけている。

 「俺で遊びやがって」と思うも、こんなやりとりは今に始まったことではなく、中学の頃から往々おうおうにしてあったため、不快には感じない。


 薄い反応に興味を失ったのかトモは教室の入り口を見た。

 スマホを鞄に仕舞い、トモにつられるように顔を向けると女子が一人入って来る。

 小さな体躯たいくに、短く切られた黒い髪に黒い瞳を持つ女性。


 ――重原えはらさんだ。


 彼女はこん色のブレザーを着て赤いネクタイをめ、ひざ上まで伸びるスカートに黒いパンストをいている。

 彼女の出現にドキリとし顔をらすと隣からトモの声がした。


「重原さん、今日は来ていたんだね」


 昨日の事があり気まずく見るが、昨日のような暗い雰囲気は全くなかった。

 むしろ明るく周りの女子に手を振っている。

 だがトモの言葉に引っかかりを覚えた。


「今日は? 」

「あれ知らない? 入院してたり体調不良で休んでいたりしたたんだよ」

「初耳」

「レン君はクラスメイトに興味なさすぎ」


 トモの言葉に「うっせぇ」とだけ返して机に顔をうずめた。


———

 後書き


 こここまで読んでいただきありがとうございます!!!


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