2023年 4月中旬

「何か、■■山ってやけにUFOの目撃報告が多いんですよね」

「確かに、結構ネットにも記事が残ってたな」


 四月中旬の報告会の最中にUFOの件が話題に上がった。

 前々から、私も疑問には思っていた。■■山の文献を調べると、やけにUFOの目撃例に関連する記事が多いのだ。ただ、これは数十年以上前の八〇、九〇年代の話であり、近頃は出現しなくなってしまったようだ。


「どう思います? これ、関係あると思います?」

「……難しいな」


 UFOと青い女。この二つの要素を結び付けるのは――少々、無理があるかもしれない。

 そもそもの話、パワースポットや心霊スポットでUFOが目撃されるのはそこまで珍しいことではない。何らかの曰く付きの場所というのは不思議と心霊関係だけではなく、なぜか未確認飛行物体もセットで付いてくることが多々ある。この件に関しては考察のやり甲斐があるだろう。一応、現代人の認識ではUFOはSFの分類、つまり超常的な科学の延長線として見られているが、もしかしたら……霊的存在と同一のモノなのかもしれない。巨大なオーブや火の玉、それらが宙に浮いているのではないだろうか。

 更に付け加えるなら、山という場所は特にUFOが目撃される傾向がある。依然として因果関係は不明だが、なぜか未確認飛行物体というのは山を背景にふらふらと飛んでいる場合が多いのだ。これらの情報を前提にすると、確かに何らかの関係性を模索できないこともないが――といったところである。


「でも、UFOって最近は全然聞かなくなりましたよね。この新聞の記事が出てるのも、何十年も前の話ですし」


 佐々木は図書館でコピーした新聞の切り抜きを指差す。言われてみると、最近めっきりUFOに関係する話題は聞かなくなってしまった。

 一般的に日本でUFOブームが巻き起こったのはオカルトブームと同時期、七〇年代後半だ。それから半世紀近くが経過した現在、ネットニュースではUFOに関連する記事はめったに並ばなくなり、テレビのUFO特番なんてものは非常にレアな放送になってしまった。

 私が幼少期を過ごしていた〇〇年代でも、まだ僅かに当時のオカルトブームの名残があったと感じる。その時代と比較すると……現代の日本では心霊写真と同じく、UFOもまた絶滅危惧種と言えるかもしれない。


「でも、UFOって幽霊と違ってちゃんとアメリカ政府がそれっぽいものがあるって認めてるんだよな」

「え? それマジですか?」

「あぁ、NASAもUFOの会見とかしてるぞ」


 同じ未確認存在であるUFOと幽霊の最大の差異を挙げるならば――政府によって存在が確認されているかどうかという点だろう。

 宇宙人を肯定しているというわけではないが、米政府は未確認飛行物体が確かに存在すると公言しており、実際に写真を公開している。そこには不可思議な形をしている空に浮かぶ物体が写されており、このようなオカルティックなものを公的機関が認めるというのは非常に稀だ。

 最も、未確認飛行物体の存在を公開することにより、全ての工作活動を宇宙人の責任に負わせることが目的なのではないかという考察も可能だが……ここまで行くと陰謀論の領域になってしまうので、やめておこう。


「でも、UFOって不思議ですよね。俺の両親も幽霊は見たことがないんですけど、なぜかUFOは見たことあるっていうんですよね。友達にも何人かそういう体験している人いますし」

「……言われてみると、そうだな」


 佐々木の言葉で、はっとさせられた。

 確かに――幽霊と比べると、UFOというのは人々にとって普遍的な概念なのではないだろうか。自分はどちらも目撃したことはないが、UFOだけは目撃したことがあるという人間は経験上、それなりに多く感じる。

 死者と宇宙人。どちらが多いかと問われたら、間違いなく死者の方が多いはず。だが、現実ではUFOの方が多数の目撃情報がある……不思議な関係だ。

 ■■山に出没する青い女、そして過去に彼女と同様に目撃例が報告されたUFO。果たして、この二つの要素は……交じり合うことはあるのだろうか。

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