第2話 不思議な世界

 あの頃、皆と仲が壊れていなかった景色が蘇る。

 僕は、友達が多い方だった。

 高校の入学直後には初対面のクラスメイトと仲良くなり、一緒に遊んだり、時には相談に乗ったりするなどごくごく普通なありふれた生活を送っていた。


特に親友の山田やまだ れんと幼馴染の大島おおしま 花梨かりんとは一緒に居る事が多かった。


 夏は海に花火にBBQ、冬はスキーにアイススケートなど大人数で遊ぶ時にも必ずこの二人が欠ける事が無く多いに満喫した。

 


 蓮とお別れする前に3人で指切りをして、

 「僕(俺(私達は何があってもずっと一緒だ!離れていても心で繋がっている))」


 僕達の絆の証だった。

 


 例え物理的な距離が離れていたとしても、、、ずっと当たり前のように心の距離では常に隣で一緒にいるものだと思っていた。

 不幸な出来事の始まりである、あれが起こるまでは......。


 辺りは静かである。

 

 何故僕は今考える事が出来ているのだろう?

 あの時僕は屋上から飛び降りて.......


どういう事なのだ?


 何も見えていない真っ暗な空間の中ただ呆然と昔の記憶を振り返っていた。

 

 多分走馬灯ってやつなのか?

 


 あの世と現実ではかけ離れた世界だと思っていたのだが、思いの外あまり変わった実感がない。


 'きっと死後の世界に旅立つ為に待合室みたいなのがあるのかもしれない'


  'でも、何だろう?'




 小さな音が聞こえる。

 ドクドクと、定期的なリズムが近くで聞こえる。

 

 もしかして生きている???




 俺は一体、、、、、、、、。

 


 







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 目がパチリと開く。

 見覚えのある天井だった。

 カーテンの隙間から光が差し込んでいる。




現在は全く使われていない校舎の隣に建てられている技術棟であった。


 


 俺は仰向けで横たわった状態のまま首を傾げる。

 何が起こっているのかまるで理解が出来ない。


 何が起きているのかが、知りたいのだが体は床で寝ていたのが原因なのか凄く気怠い。

 今すぐにでも起きて状況を確認したいのだが、、、体が重く思うように動かなかった。

 

'一体何時間ここで眠っていたのだろうか。'

 

 仰向けのまま手をもぞもぞと動かしてみると、ズボンのポケット辺りに違和感があった。

 ゆっくりと取り出してみるとそこにはスマホがあった。

 液晶画面には7月3日の19時となっていた。

 俺があの日に自殺を図ってから少なくとも1週間は経っている。

 

 ゆっくりとスマホを操作していると屋上から飛び降りる決めてとなった文章が見つかった。


 '私はずっと修也しゅうやの事をずっと信じていました。

だけどこの写真を見てから悲しくなりました。

裏切られたとし知って涙が止まらないです。

ずっと、今まで騙していて楽しかったですか?

あなたとの縁を切ります。さようなら。'


 母さんからだった。

 父は俺が生まれてから1ヶ月も経たない内に亡くなっている。


下には駅のホームで俺似ている人物が女性に痴漢したと思われる写真が載っていた。

 後ろ姿で正確には判別が出来ないが背丈や髪型、着ている服など、完璧に俺の特徴に合わせてきている。

母は俺の事で精神的に

追い込まれてしまってるが故、簡単に信じてしまったのだろう。


 俺を最後まで信じてくれた母さんは何があっても味方ではないといけないと思っていたのだが、それは人として正しい行いをしていてが倫理が外れた行動を取っていない事が前提である。

 

 俺が

「絶対にやっていない信じてくれ」


という言葉を信じて住民から白い目を向けられながらも細くて頑丈な糸で繋がっている俺と母さんは助け合いながら生活をしていた。


 なのだが、限界が来てしまったのだろう。



 今なら、母さんの心情がわかる。

 俺もあの時は精神的に病んでいて、あの文面が送られた時、この世界に俺の味方がいないと勝手に悟って気付いた時には屋上から飛び降りていた。




 しかし、メールにはその続きがあった。

 ゆっくりとスクロールをしてみると、


 '今まで信じてあげれなくてごめんなさい。修也は何も悪い事してなかった。亡くなった後に気くなんて、、、、、、本当にごめんなさい。'



 目から涙が溢れてくる。

 自分の無力さ、不思議に湧き出てくる怒りなどの感情が混じり情け無い声が出てくる。


 「うう...う...........うっうぁぁあああああああああ!」


 


泣き始めて数分後、


 背後から足音が聞こえる。


 「ったく、様子をみにきたらこんな汚いところで寝っ転がって何やってんだお前」


 先程までに人がいる気配が無かった為に驚いて声のする方へと向く。


 その視線の先には、服がはだけたままでズボンのチャックも全開、正にだらしない格好をした男がいた。

  


 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お待たせしました。

ようやく、物語が始まる流れです。

ストックは因みにないです(笑)


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